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雪虫6 76
アンラッキースケベになりたくなくて、藪秋を視界に入れないように椅子を端に動かして座る。
藪秋とは会話が弾むというわけでもないし、ぶつぶつと何か言いながら携帯電話を見ているから、オレも同じように携帯電話を取り出してメッセージをチェックする。
オレの代わりに雪虫の傍についていてくれるうたやセキが、細かく状況を報告してくれて……ちゃんと食事を食べたとかお風呂に入ったとか、あとは体重が減ってないかどうか とか。
「……なんで、セキからの連絡ばっかなんだ?」
雪虫を怖がらせてしまったあの日以降、オレは雪虫の世話をうたにメインで頼んでいた。
疑問に思ううたにオレはかいつまんで話をして……うたはオレの疑いを笑い飛ばして、「そんなことありえない」と、逆にオレをしかりつけた。
雪虫のこともそうだけれど、研究所にいるセキがどれだけ行動をチェックされているかを説明して、ありえないことだ とオレに説いたのだけれど……
だけど、オレはオレの鼻を信じている。でもそうすれば雪虫やセキが他のαと関わっているって認めることになる。
そんなのは絶対に受け入れられなくて……
雪虫ときちんと話し合うべきなのはわかっているけれど、以前のように興奮して雪虫を傷つけてしまったらと思うと、電話越しに声を聞く勇気すら出ない。
「 ——おう、たまこ。いい子にしてるんだぞ? パパはすぐに帰るからな!」
携帯電話がぎしりと音を立てた時、背後から聞こえてきた藪秋のものとは思えない、軽快な口調と言葉に思わず飛び上がった。
何か空耳を聞いたのか、それとも聞いてはならないものを聞いたのか……
そろりと振り返ると、険しい表情の藪秋がこちらを睨んでいた。
「ぁ……と……お子さん、ですか? たまこさん? 女の子です?」
睨まれるプレッシャーから逃げたくて、とりあえず当たり障りのない話を振ってみる。
「たまきだ。野郎だ」
「お、男のお子さん、いらっしゃるんですね」
「ああ、生まれたばっかだ」
そう返事を返してくる藪秋は、ケンカ腰だった時とは違い、ちょっと子煩悩な父親の顔をしていた。
これならば、つっけんどんな態度をとられることもないだろうと、ほっと胸を撫でおろす。
当たりのきつい人だけれど、それでも子供の話をしている時の表情は穏やかだ。
「じゃあ、早く帰りたいですよね」
「あー……まーな。帰りたいのは俺だけじゃないだろう? 社長だって、そろそろ囲ってるオメガんとこに行きたい時期だろ」
囲っている……
そんな風に見えなかったから見ないようにしていたけれど、大神とセキの関係性はやはりそうなるのか。
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