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雪虫6 77
二人に肉体関係があるのは十二分にわかっているだけに、じゃあ二人の関係はなんなのかと尋ねられると……オレも似たような答えになってしまうかもしれない。
セキの発情期のことだったり、保護という名目があったりするだろうけれど、オレと雪虫のように番になるわけでもなく、結局はあいまいなままの関係だ。
「おっさ ……社長はどうして、セキの首を噛まないんでしょうか」
純粋な疑問だった。
あれだけ互いに執着していて、時には見ていられないほどいちゃいちゃしているクセに、項を嚙まないというのもわけがわからない。
「社長がベータだから」
ちらりと投げられた鋭い視線に、オレは返す言葉を失った。
「ベータがオメガの首を噛んだところでどうなるってんだ?」
「……でも」
大神は、αだ。
これはオレのプライドにかけてはっきりと言える。
直江を知っているから余計にその差は明らかだ。
αのように見えるβとβと言い張るαの違いは大きくて、フェロモンの質がまったく違う。大神のフェロモンは明らかにαのそれで、間違えようがなかった。
「でももなんもねぇ。おい、クソガキ、俺はすがるのように懇切丁寧に話してやる気はないからな」
こちらに突き付けられた指先は鋭く、オレを刺したがっているように見える。
「でも、知らないと他で不用意なことを言うかもしれないです」
「は?」
「何せクソガキなんで。何も知らないんです」
しれっとした顔で言ってやると、藪秋は苛立ちを隠さない乱暴さで煙草を灰皿へと押し付けた。
「……そういうところだけは、妙に頭が回るな。あの躾じゃたりなかったか? あ?」
「社長にもっとしっかり躾けられたんで」
初っ端から殺されかけたことを考えれば、煙草を押し付けるだけで済ませた藪秋は優しい方だ。
「俺の躾は甘いって? ずいぶん打たれ強いな」
「褒められると照れます」
「褒めてねぇ」
藪秋は深々と息を吐くと、灰皿の縁を指先で二度叩いた。
「社長はベータだ。本当は誰も信じちゃいねぇ。だが、誰も確かめようともしねぇ」
そこで一度言葉を切る。
「皆、命が惜しいからだ」
藪秋は、何かを測るような目でこちらを見た。
「社長の父親はベータで、母親はオメガだ」
「……はい」
「ここまで言ったら話は早ぇだろ」
子供は両親のバース性のどちらかを引き継ぐ。それを前提で話すなら、大神は父親と呼ぶ人の子供ではないことになる。
「社長の父親は一代で名を成したやのつく界隈じゃ有名な人だ。その強さにいまだに信奉者も多いと聞く」
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