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【R18】7-③.「合意ってことで(OK)」とご許可はいたただいても、その加減がわからない

「いまちょっと勃ってたよね、おまえ」 と亜紀は言った。 「いや、これは生理的な反応で」 「漫画みたいな言い訳をするなよ。生理的だろうとなんだろうと勃たない相手には勃たない」 「おっしゃる通り」 「すっげ……本当に俺で」 「その言い方はなんとなくやめてほしい」 「どうすればいい? あの、わりと好きなようにしてもらっていいけど。合意ってことで」 「──はあ?」 わりと好きなように、の加減をはかり知れない。だが、亜紀は春彦ほど混乱していないようで、乙彦の「いいこと思いついた」のときと同じ顔で喋り続けている。もともと回転が速い男なので、方向を決めて走り出したら早いのだ。なんでも。 「だってつまり……アレだよな? まったく詳しくないけど。おまえさえやりかたを知ってるならなんとか……俺は可愛いマグロと化し……」 「普通ここでマグロとか言い出すかね……?」 春彦は、自分もぼすんと枕に頭を落とした。困惑はしているが、なんだか嬉しい困惑だ。 すぐ隣には好きなひとがいて、自分を信頼しきっていて、無防備で。 「この状況、なんて言うかわかるか」 その無防備な男に尋ねてみた。 「わかんない」 「……据え膳」 「あっ。喰わねばなんとやらの」 「喰わねばなんとやらのそれだ。だけどおまえは病み上がりで、無理をさせられない」 「じゃあ、これ、どうすんの? 自分で抜く?」 亜紀が股間を膝で突いてくる。 「亜紀!」 「だって、気になりすぎる。俺が育てたようなもので」 「いやいやいやいや」 春彦はなんだかおかしくなって、くすくす笑った。なんて平和なんだろう。数分前の絶望が、亜紀のおかげでふわりと溶けて別のものになったみたいだ。甘いデザート的な、なにか。 「……興味は、あるのか」 「……ある……かも……でもアレだよ、すべてが人生初の経験なので……ってだけだからな。あんまり深読みしないで」 「好奇心があるだけでも俺は嬉しい。ただ、おまえのいまのテンションがちょっとおかしいってのもあるから」 「そうなのかな? まあ、そうなんだろうけど。おまえが困ってるの、珍しくて面白い」 「ひどいね」 ちっとも本心じゃない台詞を吐きながら、亜紀の腰を引き寄せた。太腿に手を滑らせる。 「お? なんかしますか?」 「……ん……なにかは。おまえがどんな顔をするのかだけ、見せて」 「どんな……? ――ん」 パジャマの上から、股間のふくらみを手のひらで包み込む。 「嫌じゃない?」 「……だからさ、かよわい存在みたいな扱いやめてくれる? 嫌だったら蹴り飛ばしてる」 「……そっか」 「二度と……訊く、な……」 包み込んだままの手をゆっくりと上下させると、そんな言葉でも甘く響く。膨らみは徐々に大きくなって、はっきりした硬さを持つようになった。 「気持ちいい?」 「……いい……なんか……悔しい」 直接触れて嫌じゃないかと訊こうとして、やめた。したいことをしていいと言ってくれているのに、逆戻りさせるようなことをするのは相手に失礼だ(と、都合よく考える)。 ズボンと下着を引き下げ、勃起した陰茎の輪郭をなぞる。亜紀が少しばかり驚いてこちらを見上げたが、ちゅ、と額にキスをして慰めた。 手のなかにすっぽり収めて、動かす。可愛いな、と言おうとしてやめた。絶対に別のものを可愛いと言ったと誤解される。たぶん平均くらいか、それよりは大きめのはず。たぶん。 「――ふ、う……っ」 伏せられた睫毛が揺れる。ちょうどカーテンの隙間から月明かりが照らしてくれているから、声を漏らすまいと耐えている顔もはっきり見えた。可愛い。すごく可愛い。 もうだめだ。完全にだめだ。ちゃんと「可愛い」んだ。 俺はこの男に堕ちていて、性別がどうとかいう辺りは遠い昔に消えている。 春彦はそう確信した。むしろ同性でよかったんじゃないか、くらいにも思えた。この人生を歩んできた彼がいいから。 「気持ちよさそうだ。俺の手、いい?」 「うるせ……」 「溜まってるだろ? 出してもいいよ」 「汚れ……る」 「……そんなこと、うまくやるから心配するな」 それ以上話せないというように、亜紀が口を結んだ。上がってきている睾丸をくにくにと優しく揉む。それからまた、手で筒をつくって、カリを押し下げるみたいにして擦ってみた。 亜紀の脚が、やりどころなく動く。 「んっ……」 「嫌じゃないんだね、ほんとうに」 それは、悦んでいると言ってもいい反応だったから。 「亜紀……もう少し……」 奥まで触れさせてほしい。 マイナス、の距離がいい。 中指を自分の唾液で濡らす。たっぷりと塗り付けて、亜紀の腰に手を回す。 「――!」 「少しだけ。力を抜いてくれ」 「はるひ、こ……」 「少しだけ」 狭くて硬い肉のなかに、指先をめりこませる。唾液の潤いが消えない程度だ。浅いところに潜ませた指先で、アナルの縁を優しく撫でる。もう片方の手で同時に触れている陰茎が、違う刺激のせいでぴくり、ぴくりと跳ねている。唾液でさらに指を濡らす。今度はもっとたっぷりと。さっきより奥まで濡らせるように。狭いそこを、傷つけないように。 「はる、ヤバい、って」 「……うん。かわいい」 「てめ……あ! ――ん、……んぅ……」 不用意に舌を覗かせた口を、唇で塞ぐ。小さな口のなかで、くちゅくちゅと唾液が混ざる音。それはまるで、指を潜ませた場所から聞こえてくるようにも聞こえる。 どくんと亜紀の陰茎が脈を打つ。先を包み込むようにして手のひらをずらすと、そのなかに熱い精液が幾度か放たれた。 けれど、キスはやめない。亜紀の身体の端々に広がる震えがきちんと治まるまで、舌を絡ませ続ける。もし彼が、経験のない波に怯えているのなら、多少の慰めになるかもしれない。 亜紀にしがみつかれるのが嬉しくて、春彦はもう一度しっかりと抱き返した。 やがて、すっかりと亜紀の身体の力が抜けた。 唇が離れ、熱い息が春彦の首にぶつかった。精液が手から零れ落ちてしまわないように気をつけながら、亜紀の額にも、髪にも、まぶたにも、たくさんのキスを落とす。 春彦が「ありがとう」というと、礼を言うのはおかしくねえかと、くすくす笑った。 「春彦、とりあえず手を洗ってこい」 「……洗ったほうがいいか?」 「どういう質問だ? ぜひそうしてくれ」 「少しだけ舐めてみても」 「洗ってきてください」 「はい」 ことを済ませて(※)ベッドに戻ると、亜紀は小さな寝息を立てて眠っていた。 春彦は全身のこわばりが消えるほどほっとした。彼の、まっすぐな物言いと、安心しきった寝顔に救われる。無理をさせているかもしれないという罪悪感の沼に、陥らずに済む。 亜紀はまた春彦に背を向けて寝ていた。右側を下にして眠るのが癖らしい。亜紀の枕と肩のあいだにできる空間に腕を突っ込み、両腕で背中から抱きしめる。髪のなかに鼻を突っ込んで、匂いをかぐ。キュートな泣きぼくろのことを想う。 時刻は午前2時。明日は特別な業務もないので、コアタイムに間に合うように出社すればいい。起きるのは9時くらいで十分だ。たっぷり6時間眠っても余裕で間に合う。 立川と新宿の違いはここにある。職場が近いと通勤時間を短縮できるだけでなく、気持ちの面でも大きな余裕を生む。今後、スケジュールがきついときはここに泊まるように言っておこう。あの立川のアパートは通勤にはちょっと不便だ。でも、それを除けば100点満点、ということで話をつける。 目が覚めた亜紀は、「腹が減った」と言い出しそうだ。それならもうちょっと余裕を持って起きて、カフェに寄ろう。ふたりで朝食を食べたい。 亜紀のことだ。気まずい朝には、絶対にならない。 そんなことを考えながら彼の頭の頂点あたりの香りをかいでいたら、春彦もいつの間にか眠っていた。久しぶりの、深い、深い眠りだった。     † このようにして亜紀の発熱の3日間は終わり、春彦の看病生活も終わった。 だが、物語はもう少しだけ続く。 ___ ※は、同人誌162ページ参照のこと、ですが 簡単に言うと、春彦はバスルームでちゃんと抜いてきています 細かなご様子を除きたい場合にはぜひ、同人誌をご確認ください。 DL版もあります(宣伝) ……と書きましたが、以下追記 後日ふじょっしさんにも載せますねー!

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