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ここまでくれば、ミカエルの鈍感さは、天下一品かも知れない。 真剣な表情をしている男の顔を見れば唖然とさせられている。居た堪れない様子だが、流石に、濡れっぱなしは、風邪を引いてしまう。 何処で、助け船を出してやるべきか、ちらりと、城のバルコニーへと、視線を向けた。 見ているんだろう? ウリエル。 熱い仲は程遠そうな二人に、揉まれてみるのは御免だが、やはり、同朋が風邪を引くのは引ける。 でなければ、傘を渡したりして、迎えを頼んだりはしないだろう。 「其処の二人!雨にも滴る男を見せているつもり?」 「サリエル…」 「大体、タイミング良すぎないか?」 「そうかなぁ。僕は、風邪を引くんじゃないかと思って、迎えに来たんだけど、邪魔だったかな?」 つかさず、傘を出す彼は、ニッコリ微笑んだ。 少々、不満そうなルシファーは、相手を見つめながら受け取る。 だって、渡すタイミングズレたんだよ。 迎えに来たのは、本当だけど。 顰め面しながらサリエルの科白を聞いた彼は、傘を開いた。 「別に、邪魔ではない。確かに、このままだと風邪を引いてしまうな」 「それにしても、ミカエル」 「はい…」 こいゆう時、どんな言葉を掛けて良いものか解らない。 だが、サリエルなりの優しさなのだろう。 嘘偽りなく、本当に喪を付くしている者の一人として、喪主に。 「…お母様が、亡くなった事、お悔やみ申すよ」 たった一言、呟いた。 こんな幼き太陽に、運命は悪戯をなさる。 肉親を失う悲しさは、誰もが背負って上げられる訳じゃない。 少し、悲しそうな表情をした彼は、もう一つの傘を渡した。 雨に濡れた髪が、若干、オレンジぽっく見えるのは、情緒に関係してなのか、曇空なのに、煌めいている。 「有難う。明日になったら、ちゃんと、仕事に戻るよ…」 「君の仕事は、先ず、英気を養う事だと思うけど。じゃなきゃ、ウリエルに言われるよ」 強ち、間違っていないので訂正しない彼は、来た道を戻って行った。

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