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R18※ 6.「しゃぶっていいか」

亜紀の頬に手をあてる。ほんの少し、肌が動いたのがわかる。喉は大きく揺れた。 粘膜だけを合わせる。舌先だけで舐めて、唾液と一緒に小さく唇をこすり合わせた。ここまでだ。このくらいまでなら。頭のなかではそう考えているのに、唇を唇から離すことができない。彼の唇は自分の唇を拒んでいない。薄く空いた隙間がそう物語っている。下唇を柔らかに噛み、もっと開かせる。ほら、これで彼の口内に入ることができる。 舌が、濡れた舌を見つける。またゆるゆると触れ合わせて、それから絡ませる。その細かな感覚を秒単位で確認する。 ふ、と温かな息が漏れる。 なんとなく手をずらし、亜紀の首筋に触れる。動く喉に触れる。ごくん、と溜まった唾液を飲み下す音が一度。亜紀があごを上げると、鎖骨のくぼみが深くなる。 「……は、……」   口と口を合わせたそこから、掠れた声が漏れた。 「……亜紀……気持ちいい?」 「……いい……だっておまえ……キス巧いんだもん」 「じゃあ、続けてもいい?」 「……ダメっつったら……やめるのか」 「ああ。おまえに嫌われたくないから」 「それ、ズルいよね」 亜紀は目だけでどこか真横を見て、「でもあと少しなら」と、とても小さな声で言った。 再び口付けをする。上あごを舐めると、亜紀の胸が揺れる。呼吸が下手になる。 春彦は緩んでいた亜紀のネクタイをさらに緩めてから、そっと外した。それから、ボタンをひとつ、ふたつ、もうひとつ。ワイシャツの下に下着があるが、乳首の膨らみはわかる。そこに手のひらをふんわりとのせて、上下させた。 びくりと胸全体が跳ねた。強い刺激は与えていない。キスを続けながら、それこそ猫の毛の先だけを撫でているようなやりかたをしているだけだ。しかも、片方の胸だけ。 それでも、小さな、小さな塊が、くっきりとした硬さを持ってくるのがわかる。 唾液が混ざって跳ねる音。ときどき、シーツが擦れる音。早まっていく亜紀の呼吸音。自身にしか聞こえない、春彦の心臓の音。興奮で、なにをどう考えたらいいのかわからなくなってくる。 口を離して亜紀の顔を見れば、あの晩にも見られなかった、とろりと蕩けた顔。 「……亜紀……どうしよう……、」 これは、亜紀に対する質問ではない。ひどい困惑がただただ言葉になってしまっただけだ。 「──おまえ、すごく……可愛い……」 「……どうしようじゃないよ……この……バカ野郎……」 潤み、うつろな瞳。掠れた声。腕は指先まで力が抜けている。 唯一違うのは、スラックスの布を押し上げている股間くらい。 「……勃起してる」 「いやそりゃ……するでしょ……どこまでバカなの? 誰のせいだよ」 そんなセリフも、全部甘く聞こえてしまう。 「ん……これ、濡れたらマズいよな」 断りもなくベルトを外して、スラックスを脱がしにかかる。ぴっちりと臍のだいぶ下からしか守れないローライズのボクサーパンツは、盛り上がったその頭の部分を濡らしていた。 たったいま思いついてしまったことに、生唾を飲む。 「口で……していいか」 そう訊いてみた。本気でこれまで一度も考えなかったことかと言われれば違うが、現物を目の前にして「本当にしたいと思うものなんだな」と他人事みたいに思いながら。 「え、は? なに言ってんの」 亜紀の声色が変わる。 「しゃぶっていいかって訊いた」 「ダメでしょ、それはダメ……おい、待っ……さっきと話が違……っ……!」 下着をズラすと、一応は見たことのあるそれがぷるりと飛び出した。風呂から出て倒れそうになった全裸の亜紀をかかえたとき。そのあと下着を履かせたとき。マナーとして直視しないようにしていたので、記憶には残っていない。 ただ、そのときといまとでは心境も状況も違いすぎる。 「や……やめようね、春彦。いい子だから」 「さきっぽだけ」 「それはこういうときの台詞じゃないでしょうよ」 「…………」 「ダメ」 「…………」 「動くな」 「………………」 「……おい、ミリ刻みで顔近づけるのやめろ、……あ、」 とりあえず手で掴む。掴んでしまったからには、そのまま上下させてみる。   亜紀が反射的に目を閉じ、上げかけていた頭をまたベッドに落とした。それこそ数回擦っただけで、陰茎が強い芯を持ったのがわかる。 「……無理だ」と春彦は陰茎を凝視しながら呟いた。亜紀に伝えたかったわけではない。 「そりゃ無理、だろ? こんなこと。だっ、だから──」 「違う。しないのが無理。やめるのが無理」 「──はァ? マジかよ、嘘、でしょ……、」 亜紀が口を閉ざす。春彦が制止を無視して咥え込んだからだ。 したことはなかったが、されたことならある。なにより、自分も男なのだからわかる。どう咥えて、どう舐めて、どう吸えば気持ちいいのかなんて。 亜紀は声を殺しているが、薄い喘ぎは漏れ出ている。亜紀の手に髪を引っ張られたが、全然痛くなかった。その手を掴み、指を絡ませる。大きく頭を動かし、舌先を強く押し付けた。 口のなかでびくびく反応するのが、可愛くてしかたがない。

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