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12.やってきたのは、例の
部屋にやってきた社員2名は、既に知った顔だった。
「あぶれてたの、北河くんたちだったんだ」
亜紀が声を弾ませて言う。
「はい、覚えていただいて恐縮です。ほんとすみません」
「いえいえ。謝ることじゃないし。で、君はあのとき北河くんの隣の席にいた……」
「はい! 青木尚文です! 亜紀さんすげえカッコよかったです!」
青木くんは「そしていまはすごく可愛いです」と付け加えた。付け加えなくてもよかったが、事実なのだからそれはしょうがないと春彦も納得した。
「俺、亜紀さんの隣のベッドでいいですか?」
部屋を見回しながら青木くんが言う。部屋のベッドは、双方の壁にヘッドボードを付けるようにして2台ずつ並んでいる。
亜紀さん。春彦の顔が歪む。
亜紀は呼び方などどうでもいいようで、「ベッド? そんなのはどれでも好きなのを選んでください……全部おんなじだよ」と言った。
亜紀にとっては、それらはすべて些細なことだ。簡単に承諾する。
その様子を見て春彦は1日分の疲れが倍増する気がしたが、PCをかかえてうずうずしている北河くんを放置して眠るわけにはいかない。
「話したいことがありそうだね、北河くん」
「あります! すみません、お疲れのところ」
「いいよ。研修って感じがして悪くない。君の講義中の指摘はすごくよかった。俺も聞かせてもらっていたんだ。もう少し詳しく話そう」
結局、春彦と北河くん、亜紀と青木くんの組み合わせで、研修の延長が始まった。気づいたときには午前1時すぎ。初日なのだからしっかり眠っておこうということで、やっとお開きになった。
──焦る必要はない。なのになぜこんなにも焦るんだろう?
ベッドに潜り込んでから思う。
実に不思議だ。亜紀と一緒にいて平然としていた数年がまったく理解できない。
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