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17.ご提案:「口でしようか」

言葉にして伝えられたわけではないが、そう思う。わかる。 照れくさい言い方をしてしまえば、「ちゃんと、愛してくれている」からだ。いつの間にか、そんなことまでわかってしまっていた。春彦に好きでいてもらえることは不思議だが、好きでいてくれていること自体は否定できない。 自分は、この男の言葉の奥にあるものまで信じているのだ。 「……春彦、あのね、」 諦めなくていい、と言えたらいいけれど。言ってしまいたいけれど。 そう伝える権利は、少なくともいまの自分にはない。 「──心寧さんは『おともだち』。そのひとことでしか説明できないよ」 「……そう……か」 「ほっとした?」 「ほっとした」 もし心寧さんが復縁したいと言ったらどうする? そう訊きたい気持ちもあった。しかし、もう答えは想像できる。 ふんわりとやわらかく、あたたかな気持ちに包まれた。 そのまま、じんわりと体温を共有していると、春彦が勃起しているのがわかった。 そういえば昨日、バスルームで抜いたんだろうか? そのまま鎮まったのだろうか? 興味本位で手を伸ばしてみた。ほんのちょっと動かせば触れる位置にあったので。 「……でっ……か……っ」 勝手に想像していた脳内の「おおよそこのくらいでしょう」を凌駕している。 「いや、そこだけ特別大きいわけじゃない。身体の大きさに比例しているだけだ」 「それにしてもですよ」 「あのな、許可なく触るんじゃない。それはダメ。俺に言われる筋合いはないと思うだろうし、まさしくその通りだが、状況が状況だけに極力やめていただきたく」 そうは言うが、離れようとするわけでもなく、手を抑えようとするわけでもない。 握ったままでいると、春彦の呼吸が荒くなっていくのがわかる。当然だ。 熱っぽい眼。その眼はこちらを見つめたまま。 「すご……なんかめちゃくちゃいろっぽいね、春彦くん」 「あのな、誰のせいだ?」 「俺だけど、これ……どうする」 あの晩の、デジャヴのようなシーン。違うのは、自分に主導権がある気がすること。春彦の股間は、亜紀が手を動かしているわけではないのにどんどん硬くなってくる。 「ほっとけば治まる」と春彦。「昼もそうだった。気持ちさえ落ち着けば。もう、今後はこういうものだと気にしないでいただければ幸いです」 「ええ? あはは」 いつもの楽しい気持ちに戻れる。もう少しじゃれあって、キスして、今夜は気持ちよく終わりにできる。そういうチャンスだったのに。 ふと、思いついてしまった。 言うか、言わないか。 結局またこの男を振り回してしまうことになるのもわかる。 ──でも。 「……あのさ、ご提案なんだけども……」 股間からは手を離さないまま言う。 「提案? どうぞ……なあ、手、そのままか」 「そう。やめたほうがいい?」 「いや、やめたほうがいいかと言われたらやめないでほしいので困ってる」(早口) 「非常に春彦らしい正直さだね」 手のなかで、どくどくと息づくそれ。亜紀は一度唾を飲み込んだ。喉が渇く。空気の乾燥のせいではなくて。 いいのかな。よくはないよな。でもな。 自問自答は繰り返されている。迷っている。この線を超えたらさすがに引き戻れない。 自分は、「友人に戻る」という選択肢を、この関係に残しておきたかったはずなのだ。恋愛抜きでやっていく可能性をゼロにしないよう、気をつけてきたつもりだった。すごくすごく大事なカードだったから。 だけど。なにかがほんのちょっと、変化している? 「口で……しようか? 俺が」 「くち?」 「そう。しゃぶろうか、って」 「──はっ……」

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