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カズヤ(攻)♡ヨウコウ(受)

 枕元の時計が、午前六時を回った。カズヤは横たわったまま、隣で眠る岡本の顔を一度だけ見た。カズヤは音を立てないようシーツをめくり、床に散らばった自分の服を拾い上げた。昨夜、岡本に教え込まれた熱が、まだ肌の裏側にじっとりと張り付いている。混乱と高揚が混ざり合い、頭がうまく働かない。    シャワールームには寄らず、タバコの匂いが染み付いた昨夜の服をそのまま身に纏い、カズヤは逃げるようにマンションを後にした。  早朝の空気はひんやりとしていて、喉の奥にはまだ岡本の吸っていたタバコの苦みが残っている。自宅のドアを開けると、リビングは静まり返っていた。寝室に入ると、ヨウコウがシングルベッドの端で、シーツを丸めるようにして眠っている。 「……あ、カズヤ。おかえり」  ヨウコウが顔を出し、眠そうに目を細めた。 「おはよう。……まだ寝てていいよ」 「昨日、どこ行ってたの?」  ヨウコウの問いに、カズヤは動悸を抑えながら、背中を向けたまま答えた。 「ちょっと、仕事の関係でトラブルがあって。遅くなっちゃったんだ」  カズヤは服を脱ぎ捨て、洗濯機に押し込んだ。代わりに適当なスウェットを被るが、自分の体からはまだ、あの男の匂いが消えていない気がした。  ベッドの端をめくり、ヨウコウの隣へと潜り込む。  狭いシーツの中で、二人の体が触れ合う。いつもならここで背中を向けて眠るはずだった。しかし今のカズヤは、今まで知らなかった「男同士の熱」を突きつけられ、飢えた獣のような焦燥感の中にいた。ヨウコウを自分だけのものだと証明したい衝動、そして昨夜教え込まれたばかりの快楽を誰かで試したいという歪んだ欲求が、カズヤを突き動かした。 「ヨウコウ」 カズヤは自分から、ヨウコウの細い腰を強く引き寄せた。 「え……カズヤ?」  驚くヨウコウの首筋に顔を埋めると、そこからも微かに岡本のタバコの匂いがした。それがさらにカズヤを煽る。  ヨウコウの体が、反応するのがわかった。 「ごめんな。今まで、お前の欲しいものに……気ずいてやれなくて」  耳元で囁きながら、カズヤは岡本にされた通りにヨウコウを試す。ヨウコウは、カズヤがやっと自分を「男」として求めてくれたのだと信じ、歓喜に涙を浮かべてその熱を受け入れた。しかしカズヤが感じていたのはヨウコウではなく、自分の内に芽生えた、あの男譲りの毒々しい渇望だった。 ♢  午後の日差しが、バーのドアを照らしていた。ヨウコウは、昨夜の余韻を噛み締めながら、晴れやかな足取りで店に入った。カウンターの奥では、岡本がいつものようにグラスを磨いている。 「岡本さん、お話があります。……俺、店辞めます。今日で最後にしてください」  ヨウコウは真っ直ぐに宣言した。 「カズヤとうまくいってるんです。あいつ、やっと俺のこと、ちゃんと見てくれるようになったから」  岡本の手が止まり、彼は低く笑った。 「随分、勝手だな」  カウンター越しにヨウコウを冷たく見据え、岡本は自嘲気味にタバコに火をつけた。「君が好きなのはカズヤ君なんだろうし、別に責めはしないよ。俺も、君のことはちょっとからかっただけだ。ゲームの相手としては、なかなか楽しかったよ」 「からかった……?」 「そうだよ。遊びなんだから、去り際くらい綺麗にしよう」  岡本は吐き出した煙の向こうで、残酷な色を瞳に宿した。「でもね、一つだけ教えてあげるよ。君がそれほどまでに信じているカズヤが、昨日の夜、どこにいたか」 「……仕事のトラブルだって」 「嘘だな」  岡本の声は、冷ややかに響いた。「あいつ、ずっと俺のところにいたけど。上の 部屋でね」  ヨウコウの顔から、一気に血の気が引いた。 「カズヤが積極的だったのは、俺が教えた通りにしただけだよ。あいつに俺のやり方をたっぷり叩き込んでから、君の元へ帰してあげたんだよ。君が今朝見たのは、カズヤの形をした『俺』なんだ」 「嘘だ……絶対に嘘だ!」 「嘘だと思うなら、証拠を見せてあげるよ。今夜も、あいつは来るからね」 岡本はタバコを灰皿に押し付けると、店の奥にある階段を指差した。「これからあいつを呼ぶから。君は、そこで大人しく見ていなよ」 つづく

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