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修羅場の後の岡本(攻)♡ カズヤ(受)

 ヨウコウが部屋を飛び出してから、丸一日が経った。一人きりの1DKで、カズヤは冷え切った空気の中に座り込んでいた。時計の針が深夜を回る頃、カズヤは重い腰を上げ、夜の街へ踏み出した。  向かったのは、あのバーの裏口だった。重い鉄扉を叩くと、ほどなくして鍵が開く音がした。  ドアの向こうには、余裕を湛えた岡本が立っていた。虚ろな瞳のカズヤを見下ろし、彼は静かに道を開ける。 「……この前のゲームの続き、やろうぜ」カズヤは掠れた声で言った。  その言葉に、岡本は満足げに目を細めた。「いいぜ。今度こそ、決着つけるか」  岡本にとって、カズヤの意図などお見通しだった。ここでゲームをしながら、ヨウコウの仕事が終わるのを待ち伏せるつもりなのだ。岡本はカズヤを二階の部屋へ通すと、冷ややかな声で笑った。 「まわりくどいじゃん、こんなの」岡本は楽しそうに、さらに残酷な提案を重ねる。「もっとはっきりさせようよ。……もうすぐヨウコウが、仕事明けでここに来る。もしお前が、俺の目の前でヨウコウを奪い返せるって言うなら、やってみなよ」 「……どういう意味だ」 「今度は俺が押し入れに入って、お前達の様子を見ててやるから。コウヨウが俺を捨ててお前を選ぶなら、俺は綺麗に手を引いてやるよ。……面白そうだろ?」  岡本の自信に満ちた笑み。ヨウコウはすでに自分の支配下にあるという、絶対的な確信がそこにはあった。カズヤはその挑戦を、静かに受け入れた。  岡本が押し入れの闇に消えて間もなく、ドアが開いた。  仕事明けのヨウコウが、疲弊した足取りで部屋に入ってくる。しかし、待っているはずの岡本の代わりにそこにいたのはカズヤだった。 「……カズヤ? なんで、お前がここに……」 「ヨウコウ、目を覚ませよ」  カズヤは必死に、震える声で語りかける。「あの男は誰でもいいんだ。俺たちのことなんて、手玉に取って遊んでるだけだ。お願いだ、あんな男に騙されないでくれ」  しかし、ヨウコウから返ってきたのは、氷のように冷たい視線だった。 「……カズヤこそ、誰でもいいんだろ?」  ヨウコウの言葉が、カズヤの胸を鋭く突き刺す。 「ここに入り込んだのは、カズヤ自身の意志だろ。俺を説得する資格なんて、お前にあるのかよ?」  カズヤの掲げた身勝手な正義が、ヨウコウの拒絶によって粉々に砕け散った。その時、背後で笑い声が響いた。襖がゆっくりと開き、中から岡本が姿を現す。 「ご苦労様。……特等席で全部見させてもらったよ」  ヨウコウは絶句し、岡本とカズヤを交互に見た。岡本は残酷な種明かしを続ける。 「これな、カズヤと俺の『賭け』だったんだよ。ヨウコウ、お前がどっちを選ぶか、どちらに絶望するか。……いいリアクションだったよ、ヨウコウ」  この二人に「賭けの対象」にされていた。その事実を知ったヨウコウの顔から、すべての感情が抜け落ちていく。 「……最低だよ。二人とも、ひどいよ!」  ヨウコウは泣き叫びながら、部屋を飛び出した。階段を駆け下りる足音が遠ざかり、やがて夜の街に消えていく。部屋には、ひんやりとした静寂だけが残された。  だが、岡本もカズヤも、その後を追おうとはしなかった。  岡本はソファに深く腰掛け、テーブルの上のタバコに火をつけた。「なあ、この場合、どっちが賭けに勝ったことになるのかな?」 「……さあな」カズヤは力なく答え、岡本の隣に腰を下ろした。 「追わないのか?」  岡本の問いに、カズヤは視線を落としたまま答えた。 「あんたが追わないなら、俺も追わない」  ヨウコウという存在を完全に失った部屋で、二人の共犯者は、自分たちが同じ泥沼の住人であることを、ただ静かに噛み締めていた。 「こっちこいよ」岡本がゲームのコントローラーを差し出す。 「いいぜ、朝まで勝負な」 つづく

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