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カズヤ(攻)♡ 岡本(受)

 二階の部屋に入り、ドアがカチャリと音を立てて閉まった直後だった。  カズヤは背後から岡本の体を強く抱きすくめた。 「店が終わった後……ヨウコウをいつも部屋に招き入れて、一体何をしてたのかな」  岡本の耳元で、カズヤが低く囁く。 「ゲームしてたの? いい大人の二人で?」  岡本は身動きを封じられたまま、余裕ぶった声で笑って息を吐いた。 「そうだよ。あいつがせがむからさ。格闘ゲームで負けるのが悔しいらしくて、『もう一回、もう一回だけ』ってムキになって。コンボが決まるたびに大騒ぎして、夜中まで盛り上がってたよ」  よどみなく、すらすらと嘘がこぼれ落ちる。 「……よくそんな嘘つけるね」 「え?」 「ヨウコウ、全部ゲロしたよ。ここで何をされてたか」  カズヤの言葉に、岡本は小さく肩をすくめた。 「そうなんだ。……おしゃべりなやつ。口軽いなー、あいつ」  カズヤが腕の力を強め、岡本の首筋に顔を埋める。 「それで気に入んないんだけど。あいつにはしてたのに、俺にはしてくれてないことがあったけど」 「え、何のこと? そんなことあるかな」 「とぼけるなよ」 「……してほしいの? それ。そう言ってるわけ?」  岡本が振り返り、カズヤの頬に手を伸ばそうとする。 「いいよ、してあげるよ」  しかし、カズヤはその手を空中で乱暴に掴み、そのまま岡本をベッドへと力任せに押し倒した。 「そうじゃねえよ。俺がすんだよ」  カズヤは岡本の上に馬乗りになり、逃げ道を塞ぐ。岡本の顔から、初めて大人の余裕が剥がれ落ちた。 ◇  荒い息遣いだけが、薄暗い部屋に充満していた。  熱に浮かされ、完全に主導権を奪われた岡本を見下ろし、カズヤは無言でサイドテーブルから岡本のスマホを手に取った。 「ヨウコウのところに電話しろよ、今すぐ」 「は……? なに、言って……っ」  カズヤは岡本の耳元に唇を寄せ、ひどく冷たい声で囁いた。 「ヨウコウを、ここに呼べ。……呼ばないと、続けてあげないけど。いいのかな」  余裕を剥ぎ取られた岡本の瞳が揺れる。抗えない熱に浮かされたまま、岡本は震える指で画面をタップし、スピーカーにしたままスマホを口元に寄せた。  数回のコールの後、一階にいるヨウコウが弾かれたように電話に出る。 『……もしもし! 岡本さん!?』 「……ちょっと、手が空いたら、上来てくれないかな」  わずかに掠れた岡本の声。ヨウコウが何かを返すより早く、カズヤが指で通話を切断した。 「早くしないと、ヨウコウ来ちゃうよ」  スマホがベッドに沈む音を聞きながら、カズヤが意地悪く笑う。 「いいの? こんな姿見られてもいいのかな。……それとも、見て欲しいの? どっち?」 「……っ、お前……はぁっ、」  岡本の浅い息遣いが跳ね上がり、甘い声が部屋に響き渡った。 「さあ、急がなくてもいいのかな?」 「もっと‥早く……」 ◇  ヨウコウは薄暗い階段を二段飛ばしで駆け上がっていた。  あの掠れた声。二人が上で何をしているのか、痛いほど想像がつく。嫉妬と焦燥で頭が真っ白になりながら、ヨウコウは二階のドアノブを乱暴に掴み、勢いよく開け放った。 「カズヤ……ッ!」  しかし。  ヨウコウの目に飛び込んできたのは、部屋の明かりが点いた室内で、ソファに並んで座る二人の姿だった。  二人の手にはコントローラーが握られ、大型モニターの中では、格闘ゲームの派手なエフェクトが目まぐるしく光を放っている。 「あ、来た」  カズヤが画面から視線を外し、振り返って事もなげに言った。  岡本は画面を見つめたまま、まだ微かに震えの残る声で口を開く。 「遅いよ、ヨウコウ君。カズヤ君、強すぎてさ。俺じゃ全然相手にならないんだ」 「……」  大人の二人が、ただ夜更けにゲームで盛り上がっていただけ——という、あまりにも白々しい悪趣味な芝居。  カズヤがヨウコウに向けた一瞬の視線には、底知れない冷酷な優越感がべったりと張り付いていた。わざと電話で呼び出し、事後の見せつけるための最悪のフェイク。自分だけが勝手に振り回され、蚊帳の外で狂わされている。  その圧倒的な力の差を見せつけられ、ヨウコウはその場に立ち尽くすことしかできなかった。 つづく

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