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第5話 なんか違う
ヘイデンが帰っていった扉のフックをもう一度確認して、それから、チェストを開けた。
張り型は、太さ別に五本。
それから二種類の香油。
何が違うのかわからなくて、少し手のひらに出してみる。
――さらさらしたのと、ぬるぬるしたの。
「何が違うん……」
少し、扉の方を見て、もう一度香油の瓶を見て。
リオネルはそのまま乾いた紙で手を拭った。
結局その日は何もできなかった。
香油などは、万一ヘイデンの目に触れたら気まずすぎるので、自分の部屋に持ち出しておいた。
それで翌日、リオネルは処置室で泌尿器の専門書を読んでいた。
「痔……、の時には外用薬、確かに……。
でも入れるためじゃないしな……。」
ページをめくると、痔の分類とその処置について詳細が書かれていた。
「――あ、こないだの患者さん、やっぱこっちか。
基剤変えてよかった。――これもいいんだ。」
カルテを取り出して、書き付けを記す。
もう一度専門書を眺めて、そのほかの処方も目に留め、配合材の提案も書きつけた。
「……違う!」
眉間を揉んでため息をつくと、入り口からノックの音がした。
「リオネル?どうかしたのか?」
「せ、先生。なんでもないです。」
少しだけ仕事と違うことをしてしまっていた後ろめたさに慌てると、サミュエル先生が処置室へ入ってきた。
「ああ、この間の。何か気になることがあったのか?」
「えと、いえ。痔の分類って結構たくさんあるんだなって。
――それでその、次の!次の処方を考えていました。」
サミュエル先生はにっこりと微笑むと、
軟膏の基剤に関する専門書を棚の上から取り出してくれた。
「じゃあ、これも役に立つかもね。」
――基剤!これ!
「はい!ありがとうございます!」
「うん。僕はもう帰るから、終わったら施錠よろしくね。」
立ち去るサミュエルに御礼を言って見送り、リオネルは嬉しくなって専門書を手に取った。
「これなら……ありそう!」
なんだか違う。
リオネルは釈然としないものを抱えたまま自室に戻っていた。
軟膏基剤の専門書には、確かにいろいろな基材の紹介があった。
――だからなんだ。
それで、さらさらしてたら何が良くて、ぬるぬるしてたら何がいいんだ。
リオネルは頭の中で、今日おさらいした知識を振り返っていた。
荷物を下ろして、外套を脱いで、それから少し考えて着替えを用意した。
……使ってみよう。
まずは、さらさらのボトルを手に取り、着替えを持って扉を開ける。
中に入ってみると、室内はしんと静まり返っていた。
近くのチェストに荷物を置いて、自室へ灯りを取りに戻る。
それから、部屋の出入り口の明かりに火を灯した。
振り返って見たものに、喉がきゅっとなるほど驚いた。
「――え。」
ソファで、ヘイデンが仰向けになって、眠っていた。
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