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第16話 大切なこと
「――ヘイデン。……真面目な話をしよう」
そのかっこうのまま。リオネルは、腹を括ることにした。
「……うん。なあに?」
さっきのやり取りが成立していたのかはわからないけれども、
ヘイデンは、リオネルの手を取って、むにむにともみながら答えた。
「俺さ」
それで、リオネルは、ぎゅっと下唇を噛んだ。
このことを、ヘイデンに伝えるのは、ものすごく勇気がいるし、恥ずかしい。
それでも――、
それでも、ヘイデンというロビンの恋人の誠実さに応えるには、このことは伝えておくべきだと思った。
「ヘイデンとするまでに、ここでやらないといけないことがある」
リオネルの言葉に、ヘイデンが息をひそめた。
それに少し、ほっとする。
この話が、なんでもないことのように扱われることは、ない気がしたので。
「――はじめに聞いたよね。男の子とした時、痛がってなかったかって」
「――うん」
リオネルの問いに、ヘイデンが静かに返す。
「男の体は。俺らの体は、受け入れるようにはできてないから、――色々準備がいる。特に」
ヘイデンの手を、ぎゅっと握り返して、目を合わせた。
「俺みたいな、ウルラには」
ヘイデンの手にも、ゆっくりと力がこもった。
その手の感覚――大きくて、あったかくて。
こんなのが残るのなら、怖くはないのだけど。
軽く、ヘイデンの手を握り返してみる。
「――うん。」
番いになる瞬間、もし痛みがあれば、それは譲渡の度繰り返される。
――はじめにそう聞いていた。
それで、お互いの握り合った手を見つめて、リオネルは少しの間沈黙した。
「ロビン」
「――ん?」
目線を上げると、ヘイデンが、静かな目をしてこちらをみていた。
「こめん。――俺、ロビンの大事な時間を奪っていたね。ここ、」
顔を巡らせて、ヘイデンが部屋を見回す。
「この部屋。――ロビンの、その準備のための部屋なんだ。」
なんと言おうか少し迷って、……頷いた。
「ごめん。――大切にしてるつもりで、俺、ロビンにひどいことしてたね」
「違うよ」
手のひらに力がこもった。
「俺は、鍵をかければよかったから。そうしなかったのは、俺だから。」
ヘイデンの手を、握ったまま下に引っ張る。
その目が、少し、見開かれた。
「ヘイデンは悪くない。会いにきてくれて嬉しかったし、まだ俺も会いたい」
ただ――。
「――ただ、ヘイデンが、俺のことをそうやって大切にしてくれるなら。
……俺も、ちゃんと自分のことを大切にしないといけないと思うから、」
握りしめたまま、手の力を抜くことはできなかった。
「ちゃんと、これから、――ちゃんと準備するから。」
深く、息をする。
「鍵、――かけてること、あると思う。
――ヘイデンに会いたくないわけじゃないから、……わかっておいてほしい」
ぎゅうと、握りしめたままの手の下で、もじもじとヘイデンの指が動いた。
あっ、と気づいて手を緩めると、ヘイデンが、手のひらを返して、リオネルの手のひらを包み返した。
「――一応聞くけど。」
少し前屈みになったヘイデンが、覗き込むような格好でリオネルの顔を覗き込んだ。
「それは、俺は、――お手伝いできるやつ?」
「――っ、ぶっは」
大きな男の、自信なさげな上目遣いが、こんなにもかわいくて面白いものだと、今日まで知らなかった。
「へ、ヘイデン。それさ、同じ男として聞くけど」
少し笑いを抑えきれなくて、そのままヘイデンに聞く。
「それ、お手伝いで止まれるの?」
くっくっと横隔膜が揺れるままにヘイデンを眺めていると、
ウロウロと視線を彷徨わせたヘイデンが、おもむろに膝を立てて「むりかも」と呟いたので、
――リオネルも、少し居住まいを正して、ヘイデンに言った。
「ごめん。――今のは俺が迂闊だった。」
お互い、顔が赤くなるのは、止められなかった。
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