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第21話 引き出し
当たり前だけど、今の「またね」はハグをするところではなかった。
なのに、走り去るヘイデンのふわふわの頭に、なにか足りないものを感じてしまった。
ロビンが、――はみ出してきている。
ペナルティも、またねの挨拶も、ロビンとヘイデンのものであって、
――リオネルのものではないのに。
そう気がついたのは、自室から部屋に至る扉の下に届いた管理課からの通達内に、ヘイデンからの手紙を見つけた時だった。
「ロビンへ
ひと月ほど、遠征に出ることになりました。
しばらく会えなくなるけれど、君のことを思っています。
ヘイデン」
ほんの少しの、ヘイデンからロビンへの言葉。
いつもみる、団の中でよく使われる書きつけ用の紙。
――時間がなくて、手紙用の紙だなんて用意できなかったのかもしれない。
それでも、きちんと封をして、管理課から届けてくれた。
――ロビン、に。
ヘイデンの恋人の、ロビンに。
そう、気づいたとき、リオネルは思わず自分の口を自分の手でふさいだ。
モヤモヤと胸の奥に溜まっていたこれがなんなのか、ずっとわからずにいたけれど。
まさか、自分 で、自分 に、やきもちを妬く日が来ることになるとは、
――思ってもみなかった。
思ってもみなかった。
でも、――当たり前だったのかもしれない。
ヘイデンは、ロビンを大切にしてくれているし、ロビンとの時間を楽しんでいる。
それで多分、自制心をあてにする程度には、好意も欲も抱いてくれている。
リオネルが、ロビンとしてそんなヘイデンと過ごして、
――少しくらい、気持ちが芽生えないわけがない。
頭へのキスくらいなら、自分もしてもいいかもしれないと、思う程度には。
ヘイデンからの手紙を、少しの間迷ってから、香油などを置いている引き出しの中に収めた。
それから、ヘイデンと一緒に見た、星図も。
引き出しの取っ手を押し込みながら、思う。
ロビンの心も、ここに一緒にしまってしまえたら良かった。
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