23 / 28
第23話 星
痛さを怖がらなくなると不思議なもので、一週間も経つ頃には、五本目も押し込められるようにはなった。
とりあえず、押し込んで、そのまましばらく待つ。
何かを考えると、そことは別のところが痛くなる気がして、
待っている間、リオネルはとにかく無心で寝台に転がっていた。
痛くて涙が出るのは、諦めることにした。
「今年の夏の遠征は長いようだね」
サミュエル先生が手元の書類を眺めながら言った。
「――そうなんですか?」
できるだけ、なんでもないように返事をする。
「……うん。医療用備品の申請がこの時期になっても届くってことは、多分まだ現地逗留するって言う判断なんじゃないかな。」
備品の申請、と聞いて、思わず手を差し伸べていた。
「先生、僕が準備してきます。」
「助かるよ、ありがとう」
先生から受け取った申請書は、あくまでただの申請書で、作成者の署名も何もなかった。
でも、少しだけ読みづらい、あの字だった。
「遠征が長いって、どう言うことなんですか?」
申請書にある項目を、指でなぞりながら尋ねる。
「――そうだねえ。夏の遠征は基本的には警戒だから、本格的な駆除や討伐になることは少ないと思うんだ。だから」
先生は少しだけいい淀んだあとに、首を傾げてからこう言った。
「この機会に若手を育成したいとかいう時には、少し無理をさせるかもしれないね」
ちらりと、ふわふわの髪の毛が目の前をかすめる。
「そう言うこともあるんですねぇ」
リオネルは、その日のうちに備品を全て揃えて、遠征地へ戻る騎士へと全てを託した。
遠征から、そろそろ一か月が経とうとしていた。
その晩。
いつも通りに準備を済ませて、顔を洗って、手入れをして。
くたびれた体を、もうこの部屋で休めていいかもしれないな、そう思いながら窓の外を見た。
その日は、窓の外がいつもよりずっと暗かった。
この部 屋 は、魔法的な力でリオネルの部屋とつながっているだけで、本当は騎士団とは離れた場所にあるところだ、と言うのはわかっていた。けれど、それまでなぜだか、リオネルは窓から外を覗こうと思ったことはなかった。
ただ、月のない夜、――星が見えるかな。
そう思っただけだ。
「――南の、」
窓の外、まっすぐ正面から少しだけ右。
ヘイデンと、星図の上で指差しあった星。
見上げた時の顔と、ペナルティ。
ヘイデンの左胸に刺した、指先の感覚。
またねの、ハグ。
「――っ」
泣いたりしたくなかった。
星の光が、にじんで、こぼれた。
――あれは、
全部ぜんぶ、
自分のものじゃ、ない。
ともだちにシェアしよう!

