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第23話 星

 痛さを怖がらなくなると不思議なもので、一週間も経つ頃には、五本目も押し込められるようにはなった。  とりあえず、押し込んで、そのまましばらく待つ。  何かを考えると、そことは別のところが痛くなる気がして、  待っている間、リオネルはとにかく無心で寝台に転がっていた。  痛くて涙が出るのは、諦めることにした。 「今年の夏の遠征は長いようだね」  サミュエル先生が手元の書類を眺めながら言った。 「――そうなんですか?」  できるだけ、なんでもないように返事をする。 「……うん。医療用備品の申請がこの時期になっても届くってことは、多分まだ現地逗留するって言う判断なんじゃないかな。」  備品の申請、と聞いて、思わず手を差し伸べていた。 「先生、僕が準備してきます。」 「助かるよ、ありがとう」  先生から受け取った申請書は、あくまでただの申請書で、作成者の署名も何もなかった。  でも、少しだけ読みづらい、あの字だった。 「遠征が長いって、どう言うことなんですか?」  申請書にある項目を、指でなぞりながら尋ねる。 「――そうだねえ。夏の遠征は基本的には警戒だから、本格的な駆除や討伐になることは少ないと思うんだ。だから」  先生は少しだけいい淀んだあとに、首を傾げてからこう言った。 「この機会に若手を育成したいとかいう時には、少し無理をさせるかもしれないね」  ちらりと、ふわふわの髪の毛が目の前をかすめる。 「そう言うこともあるんですねぇ」  リオネルは、その日のうちに備品を全て揃えて、遠征地へ戻る騎士へと全てを託した。  遠征から、そろそろ一か月が経とうとしていた。    その晩。  いつも通りに準備を済ませて、顔を洗って、手入れをして。  くたびれた体を、もうこの部屋で休めていいかもしれないな、そう思いながら窓の外を見た。    その日は、窓の外がいつもよりずっと暗かった。  この()()は、魔法的な力でリオネルの部屋とつながっているだけで、本当は騎士団とは離れた場所にあるところだ、と言うのはわかっていた。けれど、それまでなぜだか、リオネルは窓から外を覗こうと思ったことはなかった。  ただ、月のない夜、――星が見えるかな。  そう思っただけだ。 「――南の、」  窓の外、まっすぐ正面から少しだけ右。  ヘイデンと、星図の上で指差しあった星。  見上げた時の顔と、ペナルティ。  ヘイデンの左胸に刺した、指先の感覚。  またねの、ハグ。   「――っ」  泣いたりしたくなかった。  星の光が、にじんで、こぼれた。  ――あれは、  全部ぜんぶ、    自分のものじゃ、ない。

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