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第29話 からっぽ
リオネルは、それから丸二日、休暇をとった。
管理官から休暇を指示された時には、そんなのいらないだろうと思っていたけれど。
それは、ロビンとリオネルにとって、絶対に必要な二日間だった。
あのハグの後、二人は静かにお別れをした。
リオネルは先に立ち上がり、ヘイデンは「じゃ、俺、いくね」そう言った。
最後に、親指で頬をなでられたときには、そこに全てを預けてしまいたいとすら思った。
それから二日経って、
ヘイデンが帰っていった扉を、リオネルはソファに座って眺めていた。
あれから二回、共鳴具は震えた。
その度にリオネルは、混ぜ合わせて消えてなくなった心の行方を思って、
どうしようもない胸の苦しさと、
体が半分くらいなくなったような感覚を思い出して、涙が出てきた。
もう泣いてもどうしようもないんだからと、気持ちを切り替えようとしてみても、なかなか気持ちを持ち直すことは難しくて。
しまいには、自分がどうしてそんなに辛いのか、訳もわからないまま、とにかく寂しくて泣いて。
一言で言うと、
すっかりくたびれていた。
――明日、仕事なんてできる気がしない。
この日もリオネルはひとしきり泣いた後で、ソファでぐったりと座っていた
こんな気持ち、もうたくさんだ。
これが、もし恋だというなら、もう十分だ。
きっと、ロビンが、ヘイデンに一生分の恋をしてくれていた。
「もういいよぉ……」
いつかの時のように、ソファに横になる。
このまま寝たら、起こしに来てくれたらいいのに。
そんなことを考える自分が、自分じゃないようで、嫌だった。
「リオネル、休暇はどこかに行っていたのかい?」
サミュエル先生の声に顔を上げると、処置室の入り口から、先生が顔を覗かせていた。
「――え?いえ、ゆっくりおやすみさせていただいていました」
不思議に思いながら返事をすると、サミュエル先生は、そうなの?と言いながら、執務室へ入ってきた。
「ずいぶん疲れた顔をしているから、――それにこのところ、ずっと心ここにあらずだったろう」
そうだったかな。
振り返ってみて、ヘイデンがいなかった時のことだと気づいて、少しおかしくなった。
あんなの、なんでもなかった。
「ちょっとだけ、疲れているかもしれません。そのうち慣れるので、ご心配なさらないでください」
笑って、そう先生に言うと、リオネルは立ち上がった。
二日間お休みをいただいて、やるべきことはたくさんあった。
「リオネル。――何に慣れるの?」
そう先生に聞かれて、自分でもなんだろうと思った。
「あは、なんでしょうね。――やっぱり疲れてるかもしれません」
調剤室行ってきます。
そう言って、処置室を抜け出した。
医務課から少し離れた場所にある調剤室に向かうため、リオネルは中庭を歩いていた。
昼過ぎの時間帯には珍しく、この日の中庭にはひと気があった。
「――しろよぉ!」
「――――」
「ちょっとくらい――――?!」
賑やかな騎士たちの集団の中、ふと目をやった先に、ふわふわの髪の毛が見えた気がした。
――気のせいだ。
足早に中庭を通り抜けると、リオネルの後から、歓声のような、雄叫びのような、はしゃいだ声が追いかけてきた。
何か、いいことがあったみたいだ。
元気だな、と思う。
医務課の人間として、騎士たちが元気なのは、嬉しいことだ。
そのはずだけど、今のリオネルに、その喜びを分かち合う元気はなかった。
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