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第31話 残すもの

「……良かったじゃん」  その言葉に目線を上げると、ネロさんがほんのり笑っていた。 「リオくん今、好きでした、じゃなくて、好きですって言ってたよ。  確かに失恋してない。真っ只中」 「――でも」 「たとえばもう会えないとかさ、フラれたりしてもさ、別に恋しとくのはいいんだよねー。俺は下心あるからすぐ次行くけど」  言われた言葉にびっくりして、それでまたおかしくなった。 「――あっはは」 「リオくんのは、いいじゃん、まだそんなに好きなら持っときなよ。無理に捨てなくていいんだよ」 「はは、――はい。ふふっ、」 「笑いすぎだよーー」  情けないような声で言われてまたおかしくて、ネロさんもつられて笑いだして、それでしばらく二人で笑っていた。    なんだか、不思議と気分が軽くなった。  ネロさんと別れて、いつもより少し遅くに自室へ戻ってきて、リオネルは引き出しをあけた。  もういらなくなった色々と、……星図と、ヘイデンの手紙。  これも、まだ捨てなくていい。  ちょっと笑って、また閉める。 「よし。」  それで、少しのんびりするために、リオネルは部屋に続く扉を開けた。  星空を切り取った窓が、部屋の奥でリオネルを待っていた。  窓を開けて、空を眺める。  この日も、まっすぐ正面から、すこし右。  同じ星がまたたいていた。  間近で見上げた顔と、ペナルティ。  リオネルは指を一本立てて、自分の胸に突き刺した。 「ふふっ」  ……なあんだ。    ちゃんとヘイデンはここにいるし、ずっとペナルティも積み上がってる。  でも、笑えるじゃないか。  急に肩こりの痛みが気になってきて、ぐいっと腕を上げて伸びをしたら、共鳴具が震えだした。  魔力譲渡を開始する報せだ。 「もうそんな時間かぁ。」  そう呟いて、浴室へ向かう。久しぶりにのんびりとお湯に浸かりたかった。  その時、ツキン――と、胸に痛みが走った。 「――え?」  少し足を止めると、その小さな痛みはあっという間に胸の内に広がって、それから――  ぽたん  頬に触れると、そこは湿っていて、それで、リオネルは自分が泣いていたことに初めて気づいた。  みぞおちに手のひらを当てる。  その中が、ぽっかり空いたような心地がする。  その手を、少し上に持ち上げる。  喉の奥、ぎゅっと詰まって、息がしにくい。  リオネルはその場にしゃがみ込んだ。  これは、違う。  この感覚は、()()()()()()()()()()()()()、だ――。

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