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第34話 目覚め

 ヘイデンの上官殿は、それから少しだけヘイデンの具合を確認して、それから帰っていった。 「リオネル、なんだって?」  サミュエル先生が、処置室を覗き込見ながらリオネルに聞いた。 「様子を見にこられただけみたいです。あと、疲れてたんじゃないかって仰っていました。」  あー、と言いながら先生が頭を掻く。 「そうか、騎士になったんだね。色々重なっていたのかもしれないねえ。  ――ゆっくり寝かせてあげようか」 「――――はい」  夜間の付き添いを引き受けたリオネルにもう一度、無理はするなと伝えてから、サミュエル先生は施療院へとでかけて行った。 「――あれ……」  器材を洗浄していると、背後から小さな声が聞こえて来た。  思わず瓶を取り落としそうになり、心臓が飛び跳ねた。  大きく息を吸って、吐いて。  瓶を乾燥台に置いた。 「――ヘイデン、気がついた?」  振り向いた先には、呆然とこちらを見るヘイデンの顔があった。  まだ意識がはっきりしないのかもしれない。  寝台の近くに寄って、ヘイデンの目を覗き込む。  ちゃんと、ヘイデンの目線はリオネルについてきていた。 「ここ、医務課だよ。――ヘイデン、大怪我して運ばれてきたんだよ」  一瞬、ヘイデンの目線が周囲をさまよい、それからまたリオネルに戻って来た。 「――名前、……言える?」 「――リオネル」 「ん?」  呼ばれて、何があったかと聞き返すと、ヘイデンがまたうっすらと口を開いた。 「ロビン……?」  その名を呼ばれて、心臓が飛び跳ねた。 「――え?」  なんと返したらいいのかわからなくて、一拍遅れで反応すると、ヘイデンの目線はまたうろうろとさまよって、そのまま、目を閉じた。 「――ヘイデン、ヘイデン?」  頬を軽くたたいて名前を呼んでみるが、その目は閉じられたまま。  今のはほんの一瞬意識を取り戻しただけのようだった。  念のため呼吸を確認して脈をとり、首すじに手を当てて体温を測る。  目の下を引っ張ってみて、血色が戻って来ているのを確認して、ようやく息をついた。  寝台の横、椅子に腰を下ろして、  ――ロビン、って、言った……。  呼ばれた時に飛び跳ねた心臓は、まだ慌てたようにリオネルの胸を叩いていた。  今ここにいるのは、リオネルだ。  ロビンじゃない。    なのに――。      思わずベッドに突っ伏した。  こんなの、冷静でいられそうにない。  しばらくそのままでいて、それから体を起こす。  ため息をついて、もう一度ヘイデンの様子を観察した。  呼吸は先ほどまでより深くなり、寝返りとまではいかないけれど、時折足先も動いたりする。  その様子から、今はもう眠りの状態にあると感じられた。    ひとまず、安心していい。  心臓はまだ音を立てていたけれど、さっきまでよりはずっと落ち着いていて、リオネルは椅子の背にもたれて、ゆっくりと息を吐いた。  ――とにかく、よかった……。 「――んん」  気の抜けるようなヘイデンの寝言に、思わず口元が緩んだ。  もう、――ばか。  気が抜けて、――少しだけ、そのまま、目を閉じた。    その時、小さく声が聞こえて来た。 「――そんなとこで寝たら風邪引くよ」  目を開く。  ヘイデンが、少し口元を緩めて、リオネルのことを見ていた。   「おはよ」

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