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第38話 つつぬけ
「ホントその通りだよね……」
ネロさんがそう言って、パンの最後の一口を口の中に押し込んだ。
「でもさ」
言ってから少しお茶を飲んで、また口を開く。
「ヘイデンも心配だけど、俺としてはリオくんも心配してたんだぜ」
「僕ですか。――あ」
たくさん話を聞いてもらった上に、リオネルは泣いてしまったあの日。
ネロさんの言葉でどれだけ救われたかわからない。
「この間は、本当ありがとうございました。あのあと、なんだか吹っ切れた気がします」
笑ってネロさんにお礼を言うと、ネロさんはニカっと笑ってお茶を飲み干した。
「うんうん。まあ、ヘイデンはいい奴だし見る目あるから、きっとそのうち振り向いてもらえるよ」
「――え?」
言われた内容を理解できなくて、ネロさんの顔を見返すと、ネロさんも同じような顔でこちらを見返していた。
「――え?ヘイデンだよね、リオくんの好きな奴」
「な、なん、……なんで」
言われた言葉を、どう否定したら良いのかわからないでいると、ネロさんは困ったように笑って言った。
「あ――、ごめん。隠す気ないのかと思っちゃった。だってバレバレだよ。
リオくんヘイデンのことだけは、医務課のリオネルくんじゃなくて、ただのリオネルくんとして考えてるし」
ぴ、と顔を指さされる。
「――好きでもないやつのことで、そんな真剣に怒ったりしないって」
「怒る……」
腹の底に感じた熱を思い返した。
「そ、怒ってたでしょ。普段のリオくんらしくないもんね」
そう言われてしまって、額に手を当てる。
「――これって、バレバレなんですか」
ネロさんだけじゃないってことだろうか。
「うーん、わかんないけど、普段のリオくん知ってる人なら多分、結構?」
――普段の俺って、どんなんだっけ……。
もう片方の手のひらも顔に当てて、テーブルに肘をつく。
処置室での自分を思い出し、ふと、鼻先をかすめたふわふわの髪の感覚がよみがえった。
「……え、それって」
顔を上げてネロさんを見ると、ネロさんは、少し肩をすくめてリオネルに返した。
「まあ、……前から知ってるんだよね?」
喉の奥がヒュッと鳴った。
「……俺だって、まだやっと分かったところなのに」
指先が震えて、思わず手を握りしめた。
「なんで……、わかっちゃうんですか……」
無理に普段通りに。なんて意識しない方がいい。
もう、そのままでいい。
ネロさんはそう言って、帰っていった。
そうは言われても――。
急足で自室まで辿りついても落ち着かなくて、リオネルは部屋に引っ込んだ。
何があっても、リオネル達が安心できる場所。
そう管理官は言っていたけれど、
――ここでも、落ち着けそうになかった。
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