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第39話 安静

 ヘイデンは、再び数日の安静を指示されたらしい。  それから、栄養管理のためこまめに医務課に通うようにも。 「じゃあ、ヘイデンくんのことはリオネルに任せるね」 「――――はい。」  食事の指導と、睡眠の状況確認など。  大怪我で血を失ったことも大きいけれど、先日の怪我のことや、上官殿の心配もあり、ヘイデンは配属早々、数日の休みと当面の日勤勤務のみを言い渡されたそうだ。  それは、良かったけれど。 「リオネルー、例の子のカルテここに置いとくよ。なんか、えらくかわいい名前になったのねえ。ロビンソンくんだって」 「そうですね……」  処置室にカルテを置いていくマルセルさんに返事をして、カルテを手に取る。  ヘイデン・ロビンソン  カルテに書かれた名前に、胸の奥がぎゅっとなって、口の内側を噛んだ。  ロビン、と、上官殿は言っていた。  この名前は、きっとロビンからもらったんだ。  大切にされているロビンのことが、羨ましいような、  ヘイデンが、ロビンをどれだけ大事にしていたか思い知らされたような。  どんな顔をして、ヘイデンに会えばいいのか。 「――リオネル?入っていい?」  両腕に、思わず力が入った。  少し、息を吐いてから、応えた。 「どうぞ」 「うん。お邪魔します」  すぐには、ヘイデンの方を見られなかった。  目の前の椅子に座ったヘイデンの、足を見る。  それから、手、肩のところをがたがたに繕った上衣、少しだけ覗く革紐と、――緊張感のない顔。  舌で唇を少し湿らせてから、リオネルは口を開いた。   「体調、どう?疲れやすいって感じることはない?」 「うん、へーきです」  思わず目を見る。  確かに、顔色は悪くないけれど。 「昨日今日はおやすみでしょう?――何をして過ごしたの?」 「うん、馬をね。室長が俺に馬を用意してくれたから、一緒に散歩したりしてた」   「……馬?ヘイデン……、安静の意味わかってる?」 「え?うん」  ――わかってない!  リオネルはすっくと立ち上がって、「ここにいて」とヘイデンに告げて、それから診察室へ向かった。 「サミュエル先生」 「うん、――どうした?」 「あの患者さん、ヘイデンさんですが、今日ここに泊まらせてください」  目を丸くする先生に、ヘイデンの言葉を伝えると、先生は少し笑って、ヘイデンの医務課での監禁を許してくれた。 「室長殿には伝えておくから、リオネルは患者さんの方対応しておいて」 「はい。」  処置室に戻ると、ヘイデンがおかえり、と迎えてくれた。  ――そんな笑顔で騙されてやらない。 「ヘイデンさん。今日あなたには、これから医務課に滞在してもらいます。」  おかえり、の笑みのままリオネルの言葉の続きを待つヘイデンに、もう少し詳しく言ってやる。 「ご自身で安静にできないようなので、今日明日は医務課に滞在していただきます。  すぐに部屋を用意しますから、受付のソファで座って待っててください」 「え……」  言いたいことを全部言うと、ヘイデンの顔がそこで初めて驚きに変わった。  少し間をあけてから口を開くので、言い訳を聞こうとおもって待ってやると、  ヘイデンの口からは緊張感のない言葉がこぼれ出て来た。 「ここにいちゃだめ?」  思わず息を吸い込んだ。   「――っ、そう言うことじゃないでしょ!」  ……いられたら、困るし――。  

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