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第40話 誇り
珍しいリオネルの大声に、マルセルさんまでとんできて、ヘイデンの部屋の支度は速やかに整えられた。
寝台に寝かせておく必要まではなかったけれども、紐付けておかないとまた何をするかわからない。
それで、横になるように言いつけて、リオネルは部屋の外で湯の準備をしていた。
さっさと寝させるつもりだった。
「おーい、ロビン。ヘイデン・ロビンソンくん」
急に名前を呼ばれて手を止めると、ヘイデンの部屋に上官殿がやって来たところだった。
――心臓に悪い……。
「室長。――どうしたんですか」
「どうしたもこうしたもないよ君。休んで安静にしてろっつったよね僕」
「あ、――すみません」
どさっと椅子に腰を下ろす音がした。
リオネルは、用意した湯の桶を手に持ち、部屋の入り口に近づいた。
上官殿の言葉が続く。
「まあ、休むとか考えそうにないタイプだろうし、馬も喜んでくれて嬉しいけどさあ……。君ね、ウルラが泣くよ?」
少し、水面が揺らいだ。
「馬はさ……確かに騎士の相棒だよ。僕らの機動力だし、ともに戦うし、時には疲れを慰め合うこともある。憧れなのもわかる。
だけど、君にはそれだけじゃなくて、ウルラっていうかけがえのない相棒がいるんだ。
ただの、魔力を預ける便利な相手じゃないことはわかってるだろ。
彼らの献身と信頼を受けてはじめて、ディッカーはディッカーであることができる。」
リオネルは、この先を自分が聴いていてもいいのかどうか、わからなかった。
寝台に腰掛けたヘイデンと、目があった。
妙に、静かで落ち着いた目だった。
「彼らは、君らの隣にはいないけれど、彼らの誇りは君らそのものなんだ。」
ヘイデンが立ち上がり、リオネルの方へと、足を踏み出した。
「彼らの誇りに、恥じないように――っておーい、ロビン。」
ヘイデンは、自分を呼ぶ上官殿の横を通り過ぎて、リオネルの目の前に立った。
それから、頬を両手で挟まれて、
ヘイデンから、目を離せなくて、そのまま――
胸に抱き込まれた。
少しだけ、足元に、お湯がこぼれた。
「――君ら、何してんの」
「室長すみません。――俺のウルラが、泣きそうだったんで」
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