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第42話 おかえり

 ヘイデンのわがままは、いつもちょっとかわいい。  譲渡の時に、何にもないのがさみしいと言ってみたり、リオネルもロビンも大事にしたいと言ってみたり。  そんなの、わがままでもなんでもない。 「――俺も、っわがまま……、言っていい?」  しゃくりあげてしまうのを止められないまま、なんとか言葉をつなぐ。 「うん。もちろん」  少し体を離して、三本、指を立てる。  それを、ヘイデンの目の前に突き出した。 「ひとつめ。……自分、っを、大切にして。」  もう涙は引っ込んだけれど、喉の震えは止まらない。  でも、そんなのどうでもよかった。 「自分のこと、大事にできない人の、番いでは、っいられない」  ヘイデンが、じっとリオネルの目を見つめていた。  薬指を折りたたんで、指を二本にする。 「魔力は、ちゃんと、俺に預けてるのから、使って。」  少し落ち着いて来て、はあ、と小さく息を吐いた。  鼻の奥が、じんじんと熱い。 「この間みたいな怪我、もうしてほしくない。」  目の下も、最近泣きすぎだからなのか、少しヒリヒリする。  それから、中指をたたんで、指を一本にした。  それを、ヘイデンの胸元、みぞおちの上あたり、革紐の下に添える。  大きく息を吸って、ちょっとためて、それから口を開いた。 「これ、震わす時は、っい、……一緒に、いて欲しい。」  ヘイデンの目が、少し見開かれた。 「ま、毎日じゃなくていい。できる時だけで。  それで、いいから――――そばにいて」  じっと、ヘイデンの返事を待つ。  ヘイデンは大きく深呼吸をすると、リオネルの背中にまわしていた腕をほどいた。  それから、リオネルの手を取り、指を三本立てさせた。 「――俺は、自分を大切にするの、下手なんだと思う。  だから、違うだろってことがあったら、リオネルに教えて欲しい。  ちゃんと、俺も考えるから」  その通りだな。  そう思って、少しだけ、口元がゆるんだ。  ヘイデンの目を見て、頷いて、指を一本たたむ。 「魔力のことは、心配させて本当にごめん。  ――俺も、あんなことになると思ってなかったけど、ちゃんと理解したし、もう二度としない」  また頷いて、指をたたむ。 「それから――、これ」  ヘイデンが、首元から革紐を取り出した。その先に揺れるピアス。 「一緒にいるのは、もちろんだけど。――なんでかって、俺が聞いてもいいやつ?」  なんと言おうか少し迷って、それで、ヘイデンの胸元にくっついてみた。 「リオネル?」 「ハグして」  ヘイデンの肩に、頭をのせる。  大きく息を吸い込むと、温かいお日様に照らされた、土のにおいがした。  ヘイデンの腕が背中に回されて、あったかかった。 「魔力をもらうと、ここが」  ヘイデンのみぞおちのところに、手を添える。 「――ちょっと痛くなる。……胸の中にぽっかり穴が空いたみたいな気持ちになって、息がしづらくなって、――すごく、さみしくなる」  少し、ヘイデンの腕の力が強くなった。 「あの日の、ヘイデンとはこれでお別れって泣いてたロビンが、いつもここに帰ってくるから」  肩口に顔を押し付けると、ヘイデンの大きな手が、頭の上に乗った。 「寂しくないように、そばにいて」 「――うん。」  ヘイデンの声が、こころのぽっかり空いていたところに、そうっとおりてきた。 「一人にさせて、――さみしい思いをさせて、ごめん。リオネル」    それで、そこでずっと立ち尽くしていたロビンを、抱きしめてくれた。  あったかかった。  

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