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第44話 さみしさの意味
「はじめてもいい?」
寝台に二人で腰掛けて、手を繋いでいた。
この日のリオネルは、ヘイデンを監禁するためのただの泊まり込みだったので、リオネルも休む準備をしていた。
もちろん、ヘイデンとは別の部屋で。
「うん」
診察台も兼ねた寝台は少し床から遠くて、そこに腰掛けると、リオネルの踵は少し浮いてしまう。
その踵の周りを、銀色の鎖が取り巻いていた。
今日は、二人そばにいるから、共鳴具は必要はなかった。
繋いだ手から、ヘイデンの熱を感じる。
ツキン
胸の内を、突き刺す痛み。
でも、ヘイデンはここにいる。
手を繋いでいるのに少し心許なくて、顔を見上げると、ヘイデンが繋いでいない方の腕を広げてくれた。
体を寄せて、寄せられて――、くっついて、肩に頭を乗せる。
いつもと違って、心臓が慌てはじめて、ぎゅうっと締めつけられる胸は痛いけれど、ぽかぽかと暖かかった。
耳元で、ヘイデンがささやく。
「……リオネル、俺、何したらいい?」
ヘイデンの肩に乗せた頭を、少しこすりつけて、また重みを乗せた。
「このまま……、いっぱい触ってて」
それから、ヘイデンのにおいを胸いっぱい吸い込んで、小さく息をもらして、耳元に感じるヘイデンの息づかいに安心した。
「さ、触るって、……リオネル」
ヘイデンの声に、耳の奥がぞくぞくする。
もっと聞いていたくて、もっと声を聞きたくて、リオネルはヘイデンに話しかけた。
「頭、なでて、……顔も、触って。」
たくさん触れて欲しくて、触れたくて、喉の奥がきゅうっと詰まって、少し視界が涙でゆれてきた。
繋いでいない方の手を、ヘイデンの肩に添える。
その手を滑らせて、胸の上に乗せたら、ヘイデンの心臓も同じように飛び跳ねていた。
――一緒。
そう思うと嬉しくて、胸の痛さが身体中に広がる。
指先まで震えて、ヘイデンの心臓と一緒に跳ねた。
「ヘイデン……」
名前を呼ぶと、それだけで胸が詰まって、また、息を吸い込んで、そっとはく。
「好きって、……言って」
耳元で、ヘイデンが喉を鳴らした。
その声をちゃんと聞きたくて、少し顔を上げる。
ふわふわの髪の毛が、リオネルの鼻先をくすぐった。
「……言ってよ」
顔を上げてヘイデンを見上げたら、見たこともないくらい頬を赤くした、情けない顔のヘイデンがいた。
「だめ?」
触ってもらえなくて、もどかしくて尋ねると、ヘイデンが大きく息を吸って、震えながら、その息をはいた。
「――だ、だめじゃない」
「ん」
今日は、ヘイデンがいる。
嬉しくて、ちょっとだけ目の端から嬉しさがあふれ出した。
ゆっくりとまばたきすると、ヘイデンの手のひらに頬をあたためられた。
目を閉じて、手のひらに顔を預ける。
たくさん、触れあっていたかった。
「リオネル……」
その声に耳の中をくすぐられて、唇から吐息がこぼれる。
「――ん……、もっと、呼んで」
ヘイデンが、息を飲み込む音が聞こえた。
その音にも背中が震える。
「リオネル」
ヘイデンの声が近づいて、額が合わさる。
「ふふ……、うん」
目の下をくすぐられて目を開けると、ヘイデンが、一度ぎゅっと目を閉じた。
また開いて、リオネルと目線が絡み合う。
「リオネル、……大好きだよ」
温かい声。
頬がゆるむ。
「うん……、俺も。」
ため息のように、言葉がこぼれていく。
「俺も、ヘイデンが、好き」
ヘイデンの言葉が、リオネルの胸の痛みを溶かして、一つにまざって、それから身体中を駆け巡っていく。
繋いだ手が、ぎゅっと握りしめられて、そこからヘイデンにも伝わっていくみたいに。
「ヘイデン、……大好き」
さみしさは、ヘイデンと混ざり合って、痛いほどの大好きになった。
◇ ◇ ◇
妃殿下への報告
整理番号:八四三の一
件名:ヘイデン(ヘイデン・ロビンソン)/リオネル・カーウェル組み合わせ
当該組み合わせについて、以下の通り報告いたします。
一.交渉経過
四月二十日 相互顔合わせ
七月二十日 交渉実施、成立確認
二.譲渡状況
非視認下・擬遠隔譲渡にて観察
譲渡量十分
受容耐性問題なし
即日より遠隔操作可能と判断
三.健康状態
疼痛・苦痛等の訴えなし
生命・精神活動に異常所見なし
以上をもって、当該組み合わせは制度上の手続きを完了し、安定運用可能と判断する。
魔力資源管理課
歴八四三年 七月二十日
セロ・ワーグナー
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