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余韻01 さみしさの先

 その日のさみしさは、ヘイデンの吐息と、少し苦しいくらいのハグの後に、ゆっくりと後を引くように消えていった。 「――リオネル」  ヘイデンが、荒い息の合間に、そっと耳元で名前を呼んでくれて、……そのかすれた声がやけに気になった。  さみしさは消えたのに、耳の奥はまだぞくぞくして、体が浮いてしまいそうに、目の前がくらくらした。 「――っん」  浮きそうな体を引き留めたくて、ヘイデンの体にしがみつくと、リオネルの喉から声が漏れて、ヘイデンの腕の力がふわっとゆるくなった。 「……リオネル、」  震えて聞こえるヘイデンの声に応えたくて、喉を鳴らす。  少し、大好きの余韻のまま、甘えている自覚はあった。 「……っはぁ。ありがとう……、ヘイデン。」  大きく上下するヘイデンの背中に、手のひらを押し当てて、肩口に頬を乗せて目を閉じる。 「すごく、嬉しかった」  ヘイデンの大きな手が、頭の上に乗って、その指が髪の中に差し込まれる。そのまま髪をすかれて、またその手が頭に乗った。 「リオネル……、さみしくなかった?」  ヘイデンの手の重みと、指先の感覚に、思わずため息がこぼれる。  小さく喉もなった。 「……うん。」  少し、手のひらで背中の筋肉をなでて、ヘイデンが痛がらないのに安心して、その首元に顔を押し付ける。 「――ヘイデンがいたら、ちっとも、さみしくなんてなかった」 「っ――、うん」  また、ヘイデンの指がリオネルの髪の中を滑っていく。  その感触に首筋から背中がぞくぞくして、背中にしがみつく腕に力が入った。 「リオネル……、このこと、教えてくれてありがと」 「このこと?」  顔を上げてヘイデンを見上げると、次はヘイデンがリオネルの肩口に顔をうずめた。 「譲渡が、……さみしかったってこと」  ヘイデンがそこで話をすると、ふわふわの髪の毛が、リオネルの首すじをなでた。  そのくすぐったさに、少し体が震える。 「リオネルが教えてくれなかったら、俺、……全然知らなかった。」  その言葉に、小さく笑う。 「俺も……、はじめはわかんなかった」  背中に回した手のひらを引き寄せるようにすると、ヘイデンがリオネルの肩から顔を上げた。  ヘイデンの目のふちが赤くて、また胸がきゅんと鳴った。 「はじめは、ずーっとさみしかったから。……譲渡がはじまっても、何にもわかんなかった」  じっとヘイデンの目を見て、また口を開く。 「少し経ってから、――ネロさんにね」 「ネロさん?」 「うん」  訝しげな顔をしたヘイデンに、少し笑いかける。 「なんか、もう、泣きつかれてくたくただった時に、――好きなら、……好きでいいんだよって言ってもらって、気持ちが楽になって……」  ヘイデンの頬に触れる。赤くなった目の下を指でなぞって、――唇で触れたくなった。 「ね、ヘイデン」 「……ん?」  唇から吐息がもれる。  身体中を、大好きが走り回る。  もう一度目の下をなぞってから、ヘイデンに尋ねる。 「ここ、……キスしてもいい?」  大好きが喉の奥に集まって、首筋をのぼって、口から飛び出してきて――。  ヘイデンが、顔を伏せた。 「だ、……め。」  しぼり出すように言うヘイデンを、覗き込むように顔を傾けると、それまでより少し乱暴に抱き寄せられた。 「ごめん、リオネル。俺、これ以上は無理」 「……なんで――」  思いもかけなかった言葉に息を止めると、  ヘイデンの大きな手のひらが、リオネルの背中をさすった。 「これ以上は許して。リオネルがかわいすぎて、止まれない」 「かわ……」 「大事にさせてぇ……」  ぎゅうっと抱きしめられた力の強さに、とくとくと胸が弾んだ。 「ふはっ……。うん……、ありがとう」 「……ん」  ヘイデンの返事がかわいくて、ちっとも、さみしくなんてなかった。

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