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余韻02 ふたりの場所
翌朝、ヘイデンは「安静」の定義をもう一度サミュエル先生に教わって、二度と無理をしないことを誓ってから、医務課から帰っていった。
リオネルは、すっきりよく眠れた体で二人分の部屋を片付けて、その日一日元気に働いた。
「リオネル、恋人がお迎えよ」
「え?恋人?」
言われた言葉の意味がわからなくて、マルセルさんの顔を見上げると、マルセルさんにも「え?」と言われてしまった。
「あれ?昨日の、ロビンソンくん。リオネルの恋人くんじゃないの?」
「こっ、……えっ?!」
お迎えって何?とか、恋人って何?とか、なんでそんな言葉がマルセルさんの口から出てくるのか、とか。
色々頭の中を駆けまわって、結局何もろくな言葉にならなかった。
「ありゃ、勘違い?!ごめん。今頃ロビンソンくんみんなに質問攻めだわ」
「――――へ、ヘイデン……!」
手にしていたものをとりあえずそこに置いて、あわてて処置室を出ると、ふわふわの髪が、事務の皆さんの背中越しに見えた。
「あ、リオネル。よかった」
顔を上げたヘイデンが、へらっと笑って、それから「たすけてー」などと言うので、
みんなして笑ってしまった。
マルセルさんの「ごめん勘違い!」という謝罪で解放されたヘイデンは、おとなしくリオネルの片付けが終わるのを待って、それから二人医務課を出た。
「――びっくりした」
中庭を歩きながらそうこぼすと、少し間をあけて、ヘイデンが答えた。
「ごめん。……今日の譲渡、どこでやればいいか聞きたくてきただけなんだけど。」
その言葉に、ヘイデンの――お日様と土の匂いがよみがえって、
どっと心臓が音を立てた。
昨日、譲渡の間中ずっと、くっついて、触って、触ってもらって、あんなに幸せだったのに。
その後、自分のために用意した部屋へ戻ったら、急に恥ずかしくなって、慌ててブランケットで自分を隠したくなった。
そのまま朝まで眠ってしまったようで、かなり早い時間に様子を見にきた先生に笑われてしまうほど、ひどい寝癖がついてしまっていた。
でも。
「まあ、それも聞きたかったんだけど、……リオネルに会いたくて」
リオネルだって、会えて嬉しかった。
どんなに恥ずかしくても、ヘイデンが一緒にいてくれる譲渡のあたたかさは事実だし、できれば毎日ああして欲しい。
「うん。俺も」
顔を見上げて、ヘイデンのふわふわの髪が夕焼けをバックにキラキラしているのを、眩しく見つめた。
ヘイデンといると、いつだって胸の中を心臓がスキップしている。
でも、それが、悪くなかった。
少し、深く息を吸って、それから、言葉を慎重に舌に乗せる。
「ね、……ヘイデン。俺、鍵……、かけてないよ」
「……え」
前を向き直って、少し足元を見る。
ヘイデンの髪を、見ていられなくなった。
「だから、……いつでも、きて欲しい」
言い切って、少し息をはいたところで、ヘイデンの足音がないのに気づく。
振り返ってみると、少し離れたところで、頭上に拳をつけて、しゃがみ込んだヘイデンがいた。
「え、どうしたの」
慌てて駆け寄ると、ヘイデンが頭にくっつけた拳が震えていた。
「…………俺のこと、とめてる」
「えぇ?」
ヘイデンの隣にしゃがみ込んで、その声を聞き取ろうと耳を寄せる。
「外なのに、抱き締めてむちゃくちゃキスしたくなった」
「……ばか」
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