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『あいつ?!、それから、あいつ?!!』

   運命の出会い! から二週間が過ぎた。  俺のほうから積極的にアピールして、七星もやっと俺に慣れてきてくれたようだ。  七星はやっぱりちょっとコミュ障入っていて、今のところ俺以外のクラスメートには自分から話しかけることはないようだ。 (いいぞ! いいぞ〜! 俺なしではいられなくなればいいのに)  なんて、つい本音が出てしまったが、それじゃあいけない。  自分でいうのもなんだが、俺はコミュニケーション能力がかなり高い。誰とでもすぐ気軽に話せるようになる。俺と一緒にいることで七星に気軽に話しかけるクラスメートが増えることを喜ばなきゃいけない。  七星との仲は、今は順調に友だち関係を進行中。いずれは恋人関係に発展させたいものだが、目下の目標としては『大地』と呼ばれることだ。俺はもうすでに『七星』と呼んでいる。七星にも何度となく、 「大地って呼べよ〜」  と可愛くお願いしているのだが、なかなか呼んで貰えるまでに至らない。  名前で呼び合う関係に慣れていないのかもしれないな。 * * (おっ七星じゃーん)  階段を三階まで上がると、一年の教室がある廊下。  二組の真ん中辺りに七星の後ろ姿があった。朝のどれだけ賑わっている廊下でも七星の後ろ姿はすぐに見つけられる。  彼はやや俯き加減で立ち止まっている。  俺たち三組の教室は七星が立ち止まっている場所よりも少し先だ。 (何を見て……?)  よくよく見たら、というより、俺だけが七星を先に発見しただけで、実はもっともっと目立つ集団がそこにいた。  俺以外は全員その集団に注目し、尚且つ避ける、道を空けるという行動を取っている。 (うひょ〜なんだ、アレ? 一年?)  金とかオレンジとか、とにかく真っ黒以外の頭が五、六人。髪形もめっちゃ長髪だったり、ツンツン立っていたりと顔が見えなくても、良い子たちじゃないなというのが分かる。 (この学校にもやっぱり、ああいう連中いるんだな)  T高は市内、近隣の市の中でもそれなりに偏差値の高い進学校だ。あんな悪そうな集団がいるとは思わなかった。 (七星じゃあんな連中見るのも怖いだろうな)  俺は早く七星の傍に行かなきゃと足早に廊下を歩く。 「な……」  声を掛けようとした瞬間、その集団の中の一人が振り返った。  ――俺はそいつの顔を知っていた。 (うぉーあいつっ! この学校に来てたのかーっ)  俺は驚きで声を上げそうになった。 (いや、確か、入学式にはいなかったよな。あんな奴いたら目立ってすぐ分かるって。飛び抜けて背が高いし、顔怖いし) 「あれ」  そいつはすぐに前を向いたのだが。  怖がって見ないようにしているかと思った七星が、その集団を、いや、振り返った男をじっと見ているように感じた。 (知り合い? そういえばあいつМ小だったな。たぶん、七星もМ小……)  「んー」  首を傾げている間にその集団の姿は遠くへ、教室に入ったのか七星の姿はすでになかった。  そして、俺にはもう一つ気になることがあった。  あの集団の中にいたオレンジの髪の男。 (まさか……まさかだろ。あいつまでT高に?! そうだ、あの時――あの時見たのは俺の見間違いじゃなかったのか!?)  数日前、俺はあのオレンジの髪の男が部室棟のほうへ向かって行くのを見たような気がしたんだ。  あの男によく似た後ろ姿。  追いかけて確認したくもない。  だから見間違いだということにしておいた。  部室棟へ向かっていくからって部活に入っているというわけでは断じてない。あの男が部活なんてやるはずないと断言できる。  部室棟は二棟ある。手前の棟は使われているがもう一つのほうはあまり使われていない。その裏はほとんど人が行くことがなく、サボるにはうってつけの場所だと、陸上部の先輩が言っていた。 「あ」  俺はまたまた閃いた。 (ちょっと待てよ。ここ一年の教室じゃないか。一コ上のあいつがこんなところにいるはずないかっ)  左手の掌にぐーの右手をぽんっと乗せた。  もし今の俺を見ている人間がいたら、一人でなに百面相してるんだと思うに違いない。 (とりあえず、オレンジの髪の男はあいつではないということにしておこう!)  それで俺の心の平穏は保たれるというものだ。

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