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『はい。同中ですよ。それが何か?』

「メイさん」  七星がその名を呼んだ。彼の目にはオレンジ色の髪の男が映っているに違いない。  俺は「げっ」と変な声を漏らしながら、七星の上から飛び退いて振り返った。  ヤンキー座りをした金森がにやにや笑っている。 『神の助け』とか前言撤回だ! (やっぱ。存在がムカつく)   金森が七星の隣に来る前に俺は急いで二人の間に入った。少しずつ七星の肩を押して、間を広げる。 (誰が七星に近づかせるかっ)  それをおもしろそうに眺めているのだから、よけいに腹立たしい。 「なになに。ひょっとして、お邪魔だったかな〜。キミたちそういうかんけーなの?」 (やめろっそんな下世話な言い方するな!)  もちろん俺はそういうかんけーにはなりたい! だけど、今はまだダメだ。そんなふうにからかわれて、さらに俺の気持ちがバレたりしたら、ぜったい距離置かれる。ヘタしたら気持ち悪がられる。  しかし、そんな心配は無用のようだ。  七星は金森の言っている意味をまるで理解していないようだ。 (七星。なんて純粋なんだ)  ちょっと感動。でもそれは顔には出さず、金森の言葉を否定する。 「そんなんじゃねぇですっ」  中学の先輩だと思うと、どうしてもタメ口がきけない。K中では知らない先輩たちにもすれ違ったら挨拶しなきゃいけないという暗黙の了解があった。悪いヤツに当たればしなかったというだけで追いかけられたヤツもいたらしい。 「冗談だよぉ。そんなおっかない顔しないで。でも、いっつも一緒にいるよね。仲良しさんだー」  その口調もへらへらした笑いもムッとする。 (あんた、昔そんなんじゃなかったろー)  「そういう金森先輩も城河といつも一緒じゃないっすかー。今日はいないんですか?」 「あ、樹は。今ね。二年の女子にもってかれたー」 「あ、告白タイムか。城河もてもてだな」  入学してまだ三か月だというのにかなりの噂を聞く。しかも、学校にいないことも多いのに――いや、最近はけっこういるか?  高身長であの顔面ならもてないわけないか。別にうらやましくはないけど。俺、女には興味ないし。 「城河今彼女いないのかなー。中学の時は取っ替え引っ替えだったじゃないすか」  俺と七星のことをからかわれたくないばかりに城河の話をしてしまったが、気づくと七星がちょっと悲しそうな顔で考え込んでいた。 (わ、やば。城河の話しちゃった。家が近所なだけって言っていたけど。どうもグレーゾーンなんだよな)  はっきりさせたいような。でもさせたら後悔しそうな気もする。 「あれ? キミ同じ中学?」  今さら何を言っているんだ。ピシッっと顔がひくつく。もし漫画だったらこめかみに怒りマークが浮く感じだろう。 「そうですよ。残念ながら」  俺はとげとげしく答えた。 (小学校も一緒でしたけどね! どうせ覚えてないんだろうけどっ) 「どういう意味かな〜。そういや、最初から『先輩』とか言ってたもんね」  一瞬だけ俺たちの間の空気が凍ったような気がしたが、すぐに金森が解凍させた。というか、俺にもう興味を失った感じだった。  ヤツの興味は七星に移る。 「あ、ななちゃんも気になる? 樹のこと」  七星は慌てたように首を振った。 (でも全然バレバレだよー)  特に金森は鋭いところあるから。 「ななちゃんて、やっぱ、樹と知り合いなの?」 「え……あ……家が近所で……小学校が一緒だっただけ」  答え方がぎこちないし、目が泳いでる。 (ぜったい何か隠してる感あるよなー)  俺は思わず七星の顔を凝視してしまう。まるでその表情の中から彼の本心を読み取ろうとするように。  しかし金森のほうはもうどうでもいいことのように「そう?」と流し、さっきの城河の話の続きをする。 「や〜あれはさー。そういうんでもないんだよ〜。告白されたからつき合う。でも、いつも好きにはならないから大事にしない、そんで結局告白して来たほうからフラれてんの。もったいないよね〜」 (だから! なんだってんだ! そんなの言い訳にもならないっ)  当時城河のそういう面に少し嫌悪感を持っていた。金森の話を聞いてもそれは払拭できない。 「へぇー、よく知ってますね? そういえば、学年違うのに何故かツルんでましたよね、金森先輩」  「やだなー、メイとかカナって呼んでいいんだよ? それに同級生なんだから、敬語とかなしでいーよ」  とげとげ全開で言ったのにまったく動じない。 (軽い! 軽いんだよ!)  その軽さがどうしてか俺を苛立たせる。 「誰が呼ぶかっ」  ご要望通り敬語なしで言ってやった。 「キミさ、『だいくん』だっけ? ボクにやけにつっかかってくるよね? なんかあるの?」  あるよ! 大ありだー! と心の中で叫んで、口では別な言葉を放つ。 「べつに! それから! あんたに『だいくん』なんて呼ばれたくないからっ」 「つめたっ。ボク傷ついちゃうよ〜」  そう言いながら泣きマネをするけど、すぐに、はははと笑い出した。 (あんたのそういう軽すぎるとこがきらいだ!)    

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