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『コンビニで遭遇』

(なんだ? なにされてるんだ?)  背中に密着している熱。腹に回っている両腕。    目の前のガラスをよくよく見ると、俺の後ろに誰かが立っていて。 「うわっ」  俺はやつの腕の中で飛び上がりながら半回転するという器用なまねをしてみせた。  「かなも……ってっ!」  退いた拍子に後ろのガラスにぶつかる。 「っててっ」 「やだ、だいくん大丈夫?」  差し出された手をバシッと叩く。 「あんた、なんなんすかっ。なんでいるんすかー」  金森は俺と小中一緒だし、このコンビニを利用しててもおかしくはない。  だけど、それは今じゃない!   俺がいる時に来ることはないだろ! (しかも、今日は七星の誕生日。ぜったい知られちゃいけない)  俺は金森を睨みつけた。 「なにってちょっとお昼をねー。だいくんはなにしてるの? あ、ひょっとしてこの辺りに住んでるのかな〜」  俺は重ねて言う。  小中一緒だし!  二階テラスですったもんだした時は『中学が一緒』という情報しか明かさなかったけど。  俺たちは中学よりも小学校の時のほうが接点があるのだ。それを金森が覚えていない。 (俺なんてほとんど当時と変化ないように思うんだけど!)  俺は思わず舌打ちをしてしまった。 「俺なんか構ってないで、お昼探すなら探してくださいよ」  つんつんした気持ちをまったく隠さない。  そして、俺はこの後つい余計なことまで言ってしまうのだ。 「俺も急いでるんで。今日は七星のたんじょ……」  全部言う前に止めたけど。 (うぁ〜俺、何言っちゃってんの。さっきぜったい知られちゃいけないって思ったばかりなのに。金森に聞こえたか? ワンチャン聞こえてない可能性も……)  恐る恐る金森の顔を見ると、満面の笑みだった。これは完全に聞こえていた……。 「ちがっ」  「や、違くないよねぇ〜。そういえばななちゃん樹のご近所さんだって言ってたっけ。だったらここから遠くないし」  俺はやつのことは無視することに決めた。背を向けて飲み物を物色するフリをする。そのうち人の気配が消えた。 (行ったか……)  ほっとして今度こそ飲み物を取り出した。それから、菓子とケーキを選ぶ。金森の様子を窺いながら。金森がレジに並び外に出ると、俺もやっと安心してレジに並んだ。 (やっと行ったか。ついて来られたら困る。あいつ、七星のこと狙ってるみたいだからな)  しかし。外に出ると。 「あ、待ってたよ〜だいくん」 「なんでまだいるんすかーっ」  俺は叫んだ。 「え? だってななちゃんのお誕生日でしょー。一緒にお祝いしよー」  冗談じゃない! 俺はきっぱりと言う。 「いやっすよ!」  全身で嫌! を表現して足早に歩き始めたがやつは俺の態度を気にもせずついてくる。  引き離そうとして。 (くっ! この荷物じゃ思うように走れねー)  足に自信のある俺でも金森を引き離すことはできなかった。 「ついてくんなーっ」  何度か繰り返し言ったがまったく聞き入れないので、途中で疲れて無言になった。  俺はスマホを確認しながら七星の家を探す。  ここから先は急坂だ。 「荷物、一つ持ってあげようか?」 「けっこうです!」 「強情だなー、だいくんは」 「だいくんって呼ぶな!」 (坂を曲がって角の家――だっけ?)  七星が教えてくれたことを思い返しながら見上げる。高い場所に白いフェンスと向日葵の花が見えた。  俺たちが歩いている道とフェンスの高低差が次第になくなり、同じ目線に桜の木が見えてくる。 (ここか?!)  玄関前まで行って表札を確認。 「あ、ここかな」 「え〜〜ここが、ななちゃんちなの?」  なんか妙に驚いている口調が気になる。 「たぶん。『天野』って書いてあるし――って、なんか驚いてます?」  そういうと今通り過ぎてきた、道路を挟んだ向かいの家を指差す。 「え、だって、あそこ、樹の家」 「えっ。城河のっ?!」 (近所って……こんな近くかよーーーっっ)  俺は絶句した。  

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