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『七星、樹……そして、金森の関係性』①

 七星は優しい。  俺は金森を追い返す気満々だったのに、「せっかく来てくれたんだから」と招き入れた。    初めての七星の私服。  初めての七星の家。部屋。  二人だけで誕生日のお祝い。  どきどきのシチュエーション。   なんて思っていた俺がバカだった。    知ってるよ。俺だって。  金森が気遣いのできる優しい男だって。  だからあまり七星に近寄らせたくなかった。  七星の父親の仏壇に「お線香あげさせてもらってもいい?」と金森は言った。そういうところ、俺にはできない。  やつの株がぐんぐん上がっていくのがほんのひと時でも分かる。 (猫にまで懐かれてるし)  七星の家にはティラミスという猫がいる。以前七星から聞いていて知っていた。ティラは俺には近づかず、金森にすり寄った。 (ちっ)  俺は心の中で舌打ちをした。 「金森先輩、とりあえず座ってくださいよ。乾杯、乾杯」  窓から城河の家を覗いていた金森をローテブルに呼び寄せる。三人分のグラスに飲み物を注いだ。 (金森の分までちゃんと注いで あげる俺、マジでえらい!) 「七星、十六歳の誕生日おめでとう! それから、俺と七星の出会いにも! 乾杯!!」  一応金森のグラスにも飲み物を入れてやり、俺たちは――俺と七星はグラスを合わせた。 「えーなんでーボクも混ぜてよ〜」 (そのしゃべり方ウザすぎる) 「誰がっ」  冷たく言い放つ。 「ほんと、つめたっ」  そう言いながらもまったく(こた)えてないようだ。  皆喉が渇いていたのかぐっと半分くらいグラスの中身が減る。 「あれ〜ボクのケーキは?」  コンビニで買ったケーキは二個入りで当然金森の分はない。 「あんたのなんかあるかっ。想定外だ。菓子でも食ってろ」  え〜っと不満げな声を上げるが、実はたいして気にしていないようだった。にこにこと七星のほうを向き、 「ボクも誕生日プレゼント。急だったから、ちゃんと選べなかったけど。来年はちゃんと選ぶから、ね」  そう言って七星の手に渡したのは、ヒーローものの掌に乗るサイズのフィギュアだった。 「げっなんだ、それ」 (そんなの七星が喜ぶかっ)  でも何故か七星はひどく懐かしそうに見ている。それがちょっと気になりながら。 「さっきコンビニで買ってたのそれかー。っていうか! 来年もなんて、図々しすぎじゃないすかー」  憎まれ口を叩く。 「だいくん、いちいちうるさいよー」 「だいくんってゆーなー」  この下りもう何度目か。 「あ、そういえば、樹も明日、誕生日だったっけ。呼んで一緒に祝っちゃう〜?」  いいこと考えちゃいました! みたいな顔をしている。 (なんだって! 冗談じゃないよっ。これ以上増えてたまるかっ)  俺が言う前に七星が叫び始める。 「えっ。だめだめっっ、いっくん絶対に来ないから〜むりむりむりむりむり〜〜っ」  あまり聞いたことのないような音量だ。しかし、それよりも、だ。 「いっくん?!」   意気投合したくもないのに、金森と同時に声を上げてしまう。 「やっぱ、ただのご近所さんじゃなかったんじゃないっ」   畳みかけるように言ったのは金森。  俺は頭をガーンっと何かで殴られたような感覚に陥った。 『いっくん』 (七星が城河の名を言う時に、『いっ』といつも頭についていたのは、これかー)  あんな強面の男をこんなふうに呼ぶからには、『昔からの親しい間柄』に違いない。 「ま、いいけど」  と金森は言うが全然よくはない。 「きっと何かあるんだよね――それ、樹へのプレゼントでしょ?」  金森が顎をしゃくって示したのは、勉強机の上に乗った包装されリボンのかけられた箱たち。 (ほんとにこの男、目聡すぎる)  これがこの男と俺との違いだ。気に入らないことが多すぎるけど、敵わないと思うことも少なくはない。 「小学校上がる前に僕の家がここに越してきて、それからずっと友だちだった。十二歳の誕生日まで一緒にお祝いしてて。でも、その後渡せなくなっちゃって。それなのに毎年プレゼントを用意しちゃうんだ」  ひどく悲しげに語る。  楽しい時間が一瞬にして、しんみりとしたものになる。 「何かあったんだ?」  そんなに仲が良かった二人が、お互いを避けようとする理由だ。  きっと重大な何かがあったに違いない。

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