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『金森家のお家事情?』
俺は部屋の中をぐるりと見渡した。
角にベッド。ベッド側の壁の一部がオシャレな出窓になっている。本棚。スチールの机。ローチェスト。
大きな掃き出し窓があって、どうやらベランダに繋がっているみたいだ。
床はフローリングで中央にラグが敷いてあり、その上にローテーブルが置いてある。ローテーブルの周りにはクッションが三つぽんぽんと置いてあった。
壁とフローリングはナチュラルな木目調。家具の色調は黒、白、茶で全体的には落ち着いた感のある部屋だ。
家具はそれほど多くなく整頓されているせいか、がらんと広い感じがした。
(意外とキレイにしてるんだな)
しかし、気になる点がいくつか。大きなお世話かもしれないが。
「どうぞ、ここ座って」
金森はテーブルの上にトレイを載せてオレンジジュースとアイスコーヒーのグラスをそれぞれ置いた。俺も持っていたペットボトルをテーブルの上に置き、オレンジジュースの前に座る。向かいに金森が腰を下ろした。
謎の豪邸に侵入するのに実はけっこう緊張していて、「どうぞ」と言われ半分くらい一気に飲んでしまった。
金森が向かいでくすくす笑っている。
「あーずいぶん端っこに部屋あるんすね」
照れ隠しにだいぶどうでもいいことを訊いてしまったけど、それはけっこう地雷だったかもしれないということをこのあと後悔することになる。
「うん。前は階段の近くにあったんだけど、中一の途中から弟の部屋になった」
「え……あ……そうなんすか……」
(中学といえば、そのあたりから金森は悪いヤツらとつるみ始めたんだよな……それって)
金森は小学生の頃すごく優秀だった。彼は長男でいずれKANMORIフーズを継ぐことになる。
(はず、だったのか? もしかして、金森は親に見放されて、代わりに弟が……ってことか?)
部屋替えさせられて、こんな奥まったところに、まるで隔離するみたいに。
(実際は全然隔離じゃないけど。イメージとしてはそんな感じか……)
俺は余計なことを言ってしまったと黙りこくった。
「あ、別になんとも思ってないよぉ。この部屋気に入ってるしね。なぜかこの部屋、バルコニーから外に出られる階段がついてるんだよね」
「へぇ。それは便利ですね」
なんにも気にしてませんふうを装って合いの手を入れるが。
「誰にも会わずに外に出られるって便利だよ」
またドツボに嵌る。
(そういえばさっき、家族に会ったら気まずいって言ってたよな。相手も気まずいってことか? だからこの部屋? だったら酷いよな……)
真実は分からないが、俺は金森に同情する。
これ以上この話をするのはやめよう。
「そういえば、金森先輩、バイク乗るんすか?」
あまりに唐突過ぎる話の転換。
(俺、ヘタクソかー)
しかし、これも気になったことの一つには違いない。
「うん。乗ってるよ〜」
部屋の隅にあるパイプのハンガーラックには制服と、ライダースーツがかけられている。そして、ローチェストの上にはメットと手袋。それから、いくつかの写真立て。バイクと一緒に写っている金森と『誰か』の写真が飾られている。
「ある人がバイクに乗っている姿がカッコよくてね〜。それに憧れてさー」
めちゃめちゃ嬉しそうな顔をしている。
(憧れ……あの写真……)
俺はもう一度ローチェストの上の写真立てを見る。なんとなくもやっとして、頭をぶるんっと振る。
そんな俺を怪訝そうに見ている。
「なんでもないっす! まさか登校する時に乗ってきてるんじゃないっすよね〜?」
もちろん校則違反である。
「まさか〜。今度乗せてあげようか〜っつっても、来年にならないとムリだけど」
「来年?」
「免許取って一年経たないと二人乗りできないんだよ〜」
「そうなんすか? ていうか、別に乗りたくないし!」
「あら、残念」
残念そうにはまったく聞こえない。
「だいくんを一番に乗せてあげてもいいかなって思ったんだけど」
(城河とか七星じゃなくて、俺? いやいや社交辞令だし! 別に嬉しくないし!)
ちょっと嬉しくなってしまった自分を制す。
「けっこうです!」
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