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『金森はゲイじゃなかったらしい』

「確かに樹と一緒の学年になったらおもしれーだろうなーって思ったけど」 「やっぱり」  俺は拗ねている子どもみたいに口をへの字に曲げた。 「なに可愛い顔しちゃってんの」  ぷっと金森が吹き出したので、俺はぎっと睨んだ。 (バカにしやがってっ) 「おおーっと。……だから違うよ? 人間として、つるむ仲間として好きってことだよ? 樹とキスとかセックスとか想像できないよ。どっちが突っ込むにしてもさー……って」 「キス……セックス……突っ込む……」  俺は金森の言葉をオウム返しに口にして、咀嚼して、ぼっと赤くなった。 「だってだいくんの言う『好き』ってそういうことでしょ? ねぇ、顔真っ赤だけど大丈夫?」 「大丈夫だって!」  顔に伸びてくる手を俺はパシッと払い除けた。 「ーーそうだよな。そういうことになるよな」  最終的にはそういうところにいきつくわけだが。あからさまに言葉にされると羞恥心が沸き上がる。顔はまだ熱いままだし、心臓は変にバクバクしている。 「じゃあ、七星のことは?! 七星のことはどう思ってるんだ?!」 「ななちゃん? なんでななちゃんがでてくるの?」 「だって、あんた七星のこと気に入ってるだろ!」 「そりゃあね」   めちゃにこにこ顔になる。 「可愛いし、ボクのまわりにはいないタイプだし、守ってあげたくなっちゃうな〜って思うけど。でも恋愛の好きとは違うし、そもそもボク、ゲイでもないしね」  嘘を言っているようには見えなかった。 (ゲイでもなかった……)  なんとなく金森もそっちのような気がしていたのだが、そうではなかったのだ。 「だいくんこそどうなの? ななちゃんのこと好きみたいだけど、友だちとしてじゃなくて、そっちの好き?」 「そうだよ、俺のはそういう好き」  俺ははっきり言い切った。  金森がゲイではないと聞いて、この話題を出したことは失敗だと思った。でももう言ってしまったようなものだ。どうせ最初から気づいていたのに違いない。  だったら、もうはっきり言ってしまえばいい。  金森が気持ち悪がろうが、遠ざかろうが俺には関係ない。 「俺は中学の時に気がついたんだ、自分は女を好きにならない人種だって。でもそんなことは誰にも言えないし、誰かに告白されたこともなかった。ただなんなくそういう目で見られているのを感じることはあったけど。たいていその相手は俺より大きくて男っぽいやつだ。つまり俺は受ける側として見られているんだと思った」  ちらっと金森の顔を見る。特に奇異の眼差しもなく、ただ黙って聞いている。 「けど、俺は愛されるよりも愛したいほうだ。その相手は俺よりも小さいか、せめて同じくらいじゃないと、相手のほうがそう見てくれないと思った。高校生になったら可愛い彼氏を作ろうという夢を(いだ)いていた。そこで出会ったのが七星だ!」  金森は声には出さず、口だけを「おおー」と開け、指先で音も立てずにパチパチする。 「でも……いくら理想だからって、そう簡単にいくはずもない。俺はとりあえず友だちになることにした。どうやらコミュ障ぎみらしい七星にちょっと空気読めないくらいにゴーインに突き進んで、まずは友だちになった。それで学校の中で俺だけを頼りにしてくれればいいと思った。なのにだ!」  ビシッと金森を指差す。 「あんたは現れるし、城河は現れるし。今日話を聞いていたら、二人は強い絆で結ばれているんだって分かった。俺の思い違いじゃなきゃ、二人にはお互いを好きだという気持ちがあるはずだ。今はまだそれに気づいていなくても。もし二人がそれに気づいて、お互いの気持ちが繋がったら……」  今まで我慢してきたけど、もう限界だった。ぼろっと涙が零れる。 「俺が適うはずなんか、ない」 「だいくん……」  金森の前で泣きたくなんかなかった。でも涙はぼろぼろ零れてくる。 「いいよ、泣いちゃいな」  金森が俺の背を優しく撫でる。その温もりによけいに涙が流れる。  自然な流れで前からも手が回り、金森は緩く俺を抱きしめた。 (え……なんで……)  そしてーーこめかみに唇を押し当てる感触がした。    

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