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『初恋だったんだ!』

(なにしてんだ……こいつ……)  頭の隅ではそんなふうに考えているのに、思考全体はぼんやりとしていて、突き放すとか「やめろ」と言うまでに至らない。  それになんだか気持ちが良かった。  キスはこめかみには留まらなかった。  流れる涙を吸うように頬を下から上へと移動し、目元、鼻の頭、顔中にキスの雨を降らす。  そしてーー唇。体温を感じるくらいに間近まできて、そこで止まり、離れる。 (終わり……?)  ぼんやり考える。 「ねぇ……」  と耳元で声がした。  そこではっと我に返る。自分が少し残念に思っていたことに気づいて、ぶるんと頭を振った。 「オレのことは、どう思っているの?」  誘惑するような妖しげな甘さを含んだ声だ。 (なんでこんなこと聞くんだ。ゲイじゃないんだろ。俺がどう思ってたって関係ないじゃないか) 「教えてよ。だいくん、オレのことめちゃ詳しいし、ずっとオレのこと好きすぎじゃない? って思ってたんだよね」 (さっき俺、七星のこと好きだって言ったよな! なんでそんなふうに思えるっ?)  じんわりとまた怒りが湧いてくる。 「あんたのこと、好きだったんだ!」  俺は自棄っぱちになって叫んだ。 「え? だった?」  思った答えではなかったかのようにきょとんとしている。 「俺が好きだったのは昔のあんたで、今のあんたじゃない! 昔のあんたが俺の初恋だったんだーーーー!!」  完全な告白タイムになってしまった。  そうだ。  今こそ認めよう。  中学で自分の性癖に気づいた時、小学生の頃に憧れていた金森が俺の初恋だったんだと自覚した。  だから許せなかったんだ。  そんな金森を自ら壊した、この男が。俺は多大なダメージ受け、好みのタイプを『格好いい男』から『可愛い男』へと、自分でも知らずに変えていったのに違いない。  関わりたくなかった、近づきたくなかった。  またこいつを好きだった自分を思い出すような気がして。 「あははは」  金森はなぜか大笑いしているし、俺は声をあげて大泣きしている。 (なんか、もうっ、どうでもいいっ) 「なんか、ごめんね。夢壊しちゃったみたいで」  ちゅっ。  今度こそ本当に唇にキスをした。  それでも俺は気づかなったようにまだ泣いている。  実際は気づいているんだけど、心も身体も麻痺しちゃったみたいに動かない。  金森は俺が無反応なのをいいことに、何度も何度も唇に触れてくる。 「ん……」  それがちょっと気持ちいいと感じ始めた頃、長く激しい口づけに変わる。舌先で唇の割れ目をなぞられて、中に入ってきたいのだと分かった。この頃にはすっかり脱力していて抱きしめられている腕に身体も預けていて、どこもかしこも緩んじゃう感じで、ついでに唇も緩んで簡単に金森を迎え入れてしまった。  彼の舌がゆっくりと入り込んでくる。もちろんこんなキスはーーキス自体初めてだけど、抵抗を感じるかと思えばそうでもなかった。  俺は目を閉じ、背中や頭を撫でられながらゆっくり口内を侵食してくるのを感じていた。歯茎と歯列をなぞり、両頬の内側の肉にゆるゆると触れる。それを何度か繰り返し、とうとう舌に絡んできた。  抵抗がなかっただけで最初は何も感じなかったが、だんだんと気持ちよくなってきて、少しだけ身体の中心にも熱が溜まる。 (どうしよう……気持ちいい……ヤバいかも……)  頭の中では霧がかかっているような緩慢な思考しかできないでいる。ヤバいと思っても金森を押し留める行動が取れない。  くちゅくちゅと音を立てて舌を絡め合い、息苦しくなってきた頃唇は離れていった。もうすでに混ざり合った唾液は口元を伝っていて、金森は俺の顔を覗き込むと、それを指先で払った。 「気持ちよかった?」  そう言いながら、熱くなり始めた場所をジーンズの上から軽く触れる。金森は俺の身体の変化に気づいていたのだ。  俺は羞恥で顔が熱くしながらも、素直に頷く。 「じゃあ、もうもっと気持ちいいことする?」  

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