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『あんた、男としたことあるのか?』
「まあ、多少は鍛えてるよ。スタイルは維持したいしね〜」
などと軽口叩いているが。
(え〜ちょっとでこんなになるか?)
俺はさらに腹や腕もぺたぺた触る。
百八十を超える長身で細マッチョ。けっこうイケメン。この髪色とへらっとした掴みどころのない感じがちょっと残念だけど。いや、金森の周りにいるような女子はそういうのも好みなのかもしれない。一見優しげに見えるし。
(優しげなヤンキー……ギャップ萌えとか?)
「けっこう攻めてくるな〜だいくん」
この状況でまったく別なことを考えているとは思わないだろう。
「え? 攻め?」
手を止め声のした方向を見上げると、めっちゃ近くに金森の顔がある。それを確認するかしないかくらいで唇を塞がれた。さっきみたいに様子見の戯れはまったくなく、すぐに激しくなって舌が口内に入り込んでくる。
俺のほうはもう彼の身体を触るような余裕はなくなってただ片手だけが金森の腰の辺りを軽く触れている状態だが、金森の手は意思を持って俺の身体に触れてくる。
つつーっと指先だけが動く感触がする。俺は目をぎゅっと瞑っているので実際には見えていない。それなのにあの綺麗な指先が触れていくのが脳裏にまざまざと浮かんでくる。
首筋、顎、喉仏。左右の鎖骨に触れ、胸の真ん中に下りてくる。
全身に鳥肌が立ち始めるような感覚がしてくる。もちろん寒いわけじゃない。身体は熱くなる一方だし、身体の中心の熱は芯を持ち始めている。
「ん……っ」
唇は塞がれていて声が出せず、喉の奥が鳴る。
「……っ!」
一瞬背筋を電流が走ったような気がした。
さっきはすんでのところで逸らされた乳首に今度こそ触れてきた。指先で頂点をつつき、ぐりっと捻り、ピンっと弾く。
さっきも同じことを考えたが、乳首なんか感じないと思っていたんだ。それなのに初めて触られて、ぞくぞくしてしまう。
(やっぱり……これは相手が金森だからだろうか……)
なんだかひどく悔しいような気がしてくる。
(それに、めっちゃ慣れてるよな……たぶん、経験あるよな、セックス)
俺はもちろんないけど。
そしてこんな状況で、はっと我に返る。
俺の唇を貪っている金森の胸を強く押すと、彼はそれに気づいて唇を離した。もちろん乳首を弄っていた手も。
「ま、待って。ちょっと待って」
「どうしたの?」
途中で止められても特に嫌な顔はせず、不思議そうに言う。俺はとりあえず何回か呼吸をしてから、さっき浮かんだ疑問をぶつけた。
「あんた、男としたことあるのか?」
「ん〜」と考える素振りをするがそれは単なるポーズだろう。さっきこいつは言ったじゃないか『ゲイじゃない』って。
「うん、女のコとしかないよ」
(だよな!)
心の中で突っ込む。
(女のコとかしたことがない……ってか、やっぱり経験あるんだ)
なんとなく分かってはいたけど、でも本人の口から改めて聞くと、ズキッと胸が痛んだ。
「じゃあ男とのやり方知らないだろ?」
「うん、知らない。じゃあ、だいくん教えてくれる?」
妖艶な笑み。甘い声。
自然にこんな言葉が出てくるなんて、相当慣れているに違いない。それを俺が教えるとか無茶ぶりもいいところだ。
「俺、まったく経験ないから!」
確かにネットで調べたことはある。しかし経験豊かな人間に対して通用するとは思えない。
「そっか。オレが初めてなんだ、なんか嬉しいな」
からかったり、バカにしているような言い方ではなかった。
(嬉しい? どういうこと?)
「じゃあ。オレに任せてくれる? ちゃんと気持ちよくさせてあげられると思うから」
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