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『我に返って青褪める』

 気がついたら朝だった。  見知らぬ部屋の見知らぬベッドから、のそのそ上半身だけを起き上がらせる。  隣には見知った男が綺麗な顔で寝ていた。 (寝ている姿も美形かよ)  ぽりぽりと頭を掻く。  そこまでぼんやりしていたが急に覚醒! (そうだ! 昨日、こいつに!)  見知らぬ部屋の見知らぬベッドなどではなかった。 (いろいろとされたんだ! ここで!)  金森は散々俺の胸と屹立をなぶり、すんでのところで止めた。 「どうしようかな。挿入れたくなっちゃったけど、無茶はダメだよね……」  俺の意識は朦朧としていて遠くからそんな声が聞こえてきた。俺に言っているのではなくどうやら独り言のようだ。 (む、むり)  興味がないわけじゃない。でもいきなりなんの準備もなく事に及ぶのは事故る予感しかない。 (ていうか、どこ使うかはやっぱ知ってんだな)  そんなことを考えている間に俺の両太腿が持ち上げられた。 (え〜ちょ、ちょっと待ってっ。やる? やる気かっ)  心の中では叫んでいるのに声はまったく出てこない。口をパクパクさせても出てくるのは、ぜいぜいとした苦しげな息遣いだけ。俺は何もない空に弱々しく手をひらひらさせた。  俺が戸惑っていることに気づいたのか、 「大丈夫。今日はまだしないから」  優しく声をかけてくる。 『今日』はというところに不穏なものを感じたがとりあえずは痛くされないらしいことにほっとした。  その途端、俺の太腿の間に熱い何かが差し込まれた。  何って? それはあいつのでかいナニだ!  敢えてそこから目を逸らしていたけど、ぜったい俺のよりもでかいに決まっている。 (なになになになにっっ)  俺は混乱した。その間にも金森は器用に腰を動かし、俺のものに自分のものを擦りつけてくる。 (これが俗にいう素股というヤツか!)  頭の中でキンコンカンと鐘が鳴る。  擦られるたびに掠れた喘ぎが漏れる。もうすでに限界近かった俺は全身粟立ち、すぐ射精しそうな感覚がした。 「んっ」  予感通り一回力み「あぁぁぁっ」と奇声を発っして果てたが、金森のほうは終わっておらず、太腿と萎えた俺のそれに行き来させている。 (くそっ、この外道めっ)  力が入らなくて抵抗できない。やがて金森も軽く呻いて達した。  しかし、それだけでは終わらなかった。  金森はなかなか動けない俺の後始末までやってくれた。それからしばらく何か考えている素振りをして、 「やっぱちょっとだけ」  こいつがいったい何をしたのか。  自分の指にコンドームを嵌めて、本人ですら見たこともないそこにローションを垂らし、指先をめり込ませる。 「んっ」  異物感に小さく呻き声を上げる。まだ力が抜けたままで、浅いところをくりくり弄るだけだったのが良かったのか、痛みはそれほど伴わなかった。 「なんで、こんなことになったんだー! 昨日は七星と二人きりで誕生日を祝うはずだったのに! 気づいたらとんでもないことにっ」  俺は青褪めて頭を抱えた。  それ以外にも思うところはある。  あの時朦朧としていてあまりよく分かっていなかったが、素股の前におそらくベッドを汚さないためにだろう、金森は俺と自分のにコンドームを装着したのだ。 (それって、金森はめちゃめちゃ余裕があったってことだろっ)  それともう一つ。  コンドームとローションは俺の頭上、つまりヘッドボードの引き出しから出てきた。 (それって、このベッドで女としてるってことだろーっ!)  悔しいような悲しいような、いろいろな感情が押し寄せてきて、自分でも知らずに涙が滲んでくる。 「おはよー。だいくん」  タイミング悪く金森が起き上がる。  タイミング悪くも何も、さっき俺が叫び声を上げたのだから起きるのも無理はない。 「…………」  俺は挨拶を返さなかった。  何故この男はこんなにも平然としていられるのか。 「どうしたの? なんで泣いてるの? どこか痛い?」 「別に……痛くないし、泣いてなんかいない」  結局痛いことは何もされなかったし、気持ちいいだけだった。 「そう?」  ぽんぽんと優しく頭を撫でられる。 「金森、あんた……」  俺は腕組みをし、正面を向く。昨日夕飯を食べたローテーブルや制服やライダースーツのかかったハンガーラックが見える。  言おうか言うまいか。何度も口を開け、閉じる。金森は俺が話し出すのをじっと待っているようだった。 「俺のこと好きなのか?」 「ん? えっと、どうかな?」  即座にそんな言葉が聞こえてきて、やっぱり言うんじゃなかったと後悔する。 「でも気に入ってはいる。もしかしたら、好きになるかも」  落として上げてきた。  俺はむずっと口元を緩ませて、また引き締める。 「あんた、ゲイじゃないじゃん」 「ゲイじゃないからって、男の子好きになっちゃいけないの?」 「!」  俺はやっと顔を横に向けた。  ニコッと金森が笑う。  こいつは本当にいろいろと突き抜けた男なのだと再確認した。    

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