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『あけおめ』
『あけおめ~』
『初詣いかない?』
年が明けて二日。
金森からおめでとうのスタンプと共にメッセージが送られてきた。
クリスマスイヴ以降はラインでちょいちょい連絡をよこしてきたが、遊びの誘いはまったくなかった。
しょっちゅう家の前に立っていた夏休みとは、ちょっと対応が違うのでは? と思わずにはいられなかった。
(まぁ、冬休みは短いしな。年末年始は忙しいんだろ)
不安な気持ちをそうやって跳ねのけていた。
だから、この誘いはめちゃめちゃ嬉しかった。
『いいけど』
『いつ行く?』
そのめちゃ嬉しい気持ちを隠すように、つんけんした返信をしてしまう。
『明日どう?』
『大丈夫?』
『平気』
『ななちゃんも誘おうか』
『だいくんお願いしていい?』
(え……)
二人じゃなかったことに一瞬がっかりした自分がいて、ぶんぶん頭を振る。
(ごめん、七星。嫌ってわけじゃないから)
本人に気持ちを伝えてもいないのに心の中で謝る。こんなふうに思ってしまう自分が情けない。
金森のことで七星に対してこんな気持ちになる日がくるとは思わなかった。
(七星〜七星のことも大好きだからな〜)
『わかった』
『どこいくんだ?』
『H神社』
『ななちゃんには隣の公園に八時って伝えて』
『八時って夜?』
がははと笑うスタンプが送られてきて、同じようにがははと笑う金森の顔と声が浮かぶ。
『夜でもいいけど』
『朝ね』
『朝八時って早くないか?』
『だって〜まだ三日だよ』
『ぜったい混むじゃん』
『お参りしたらどこかで遊ぼ♡』
文字を読んでるだけで金森の声が聞こえてくるようで、俺も大概だなと自分にツッコミたくなる。
『あ、迎えにいくから家で待ってて』
『七時半頃ね』
(七時半?)
確かにバスに乗れば三十分程で着くだろう。しかし、バス停までは少し歩くし、そんなにちょうど良いバスがあるのだろうか?
『七時半で間に合うのか?』
『まあまあ、ボクに任せて』
なんとなく納得できないところはあるが、了解のスタンプを送ってスマホを閉じた。
翌日、すべてが明らかになる。
* *
まだ静かな正月の朝。
今日はまだ家族は誰も起きていない。昨日は夜更かししていたから、寝正月を決め込むつもりだろう。
今日出かけることはもう昨日言ってある。
玄関で靴を履いている俺の耳に爆音が聞こえた。爆音といっても普通にバイクが走る音だが、なにしろ周りが静かすぎるので余計に大きく聞こえてしまう。
その音はだんだん近づいて家の前で止まった。
(あーきたきた)
玄関を開けると門の向こうにバイクを停めてヘルメットを脱ぐ金森が見えた。
いつももっと端に寄せてるのにという疑問もあったが、それより何より。
「あーー!」
俺は奇声を発しながら金森に向かって走った。
「どうしたの? だいくん」
「あんた、髪、髪、髪ーっ!」
なんと金森の髪の色がオレンジから黒に近い色に変わっていたのだ。陽に当たれば少し茶色く見える程度の。
憧れていた頃の金森に近く、俺は大興奮してしまった。
「あー」
金森はハーフアップにした髪を軽く払って苦笑いする。
「昨日、親戚一同の集まりがあってさー。父親に髪どうにかしろって言われちゃってー」
「そうなんだ?」
俺は正直黒髪のほうが好きだったりする。
こうして見ると黒髪のほうが肌の白さも際立つし、落ち着いた感じでイケメン度増し増しだ。今日は黒のレザーの上下を着ていて、バイク仕様とはいえけっこう上品にも見える。もちろんそこまでは本人には言わないけど。
(それに本人の意思じゃないとこがなー)
今はそれなりに『今の金森』を尊重している。家庭の都合で変えなきゃならないのは俺もあまり好ましくないと思っている。
「だいくん、黒髪のボクのほうが好きそうだもんね〜」
「う……ん、まぁ……」
なんとなく答えてお茶を濁す。
「じゃ、行こうか」
金森は特に気にしたふうもなく、俺はほっとした。
「ああ」
そう答えると、「はい」とヘルメットを手渡された。
「へっ?」
俺はかなり間抜けな顔をしていそうだ。
「二人乗りできるようになったら一番に乗せてあげるって約束したでしょ」
「…………」
(約束しましたっけ?)
確かに金森はそんなことを言っていた。でも俺は「けっこうです!」と答えたはずだ。でも金森の中では約束したことになっているらしい。
(でも、ちょっと嬉しいかも)
城河でも七星でもなく、俺が一番最初。
少しだけ金森の『特別』になれたような気持ちになった。
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