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『なんで冬に海なんだー!』

 参拝を終えると境内をぐるりと回った。  お守りを買い、おみくじを引く。 「小吉」  可もなく不可もないような結果になんの感慨もなく呟く。 (恋愛運……今は待つが賢明……ちっおみくじまで『待て』かよ)  心の中で舌打ちをする。 「七星は」 「中吉」  俺より少しいい。 「かな……」  と言いかけてやめる。 『聞いて聞いて!』と書いてありそうな顔に聞く気が失せる。 「大吉〜〜」 (ま、聞かなくても言うヤツだよな)   細長いおみくじの紙をぴらぴらさせているのを見ながら思う。 (金森ってめちゃめちゃ強運の持ち主って感じするよなー) 「わぁ、メイさんすごいですね〜」  白い目で見ている俺に対して、七星は優しい対応をする。 「でしょでしょ」 「いいよ、七星。そんなに優しくしなくて。ほっとこ」 「だいくんっ冷たっ」  それから三が日だけ参拝者に振る舞っているという甘酒を飲み、徒歩十分ほどのところにあるショッピングモールで遊ぶ。  ふらふらと軽くウィンドウショッピング。ゲーセンで遊んで、ボウリングをやって、フードコートで昼食。プリクラを撮りたいという金森の案は却下。 (男三人でプリクラってどうなんだよ)  文章なら最後に(笑)とつけたいところ。  一通り遊び終えて午後二時過ぎ。  またゆっくり歩いてバイクが置いてある神社の駐輪場に戻る。  その間七星が「楽しかった」「友だちとこんなふうに過ごしたことない」と嬉しそうに言うので、やっぱり七星を誘ってよかったと思った。金森が提案した時にちょっとだけ残念がっていた自分を殴ってやりたい気分になった。  駐輪場に置いてあるバイクを見て、七星が少し驚いた顔をした。  バイクを置いてきたから神社に戻ると金森が言った時、おそらく原付を想像したのだろう。しかも、金森に対して今もまだどこかつんけんしている俺が後ろに乗ってきたとあっては、驚きも倍に違いない。 「駅まで行ける? 送って行こうか」  一人になってしまう七星に心配そうに声を掛ける金森。駅までここから七〜八分程度。高校生男子にそれを言うのはどうかって感じだが、俺も同意見だ。心配というよりは楽しく過ごしたので離れがたい気持ちのほうが大きい。  七星が乗るバスは遠回りだが帰れるわけで、俺が一緒に帰ってやればいいのだが。 「ごめんな。金森先輩がどうしてもこれで行こうっていうから」  そう言ってしまったのは、俺が金森とも離れがたかったからだろう。金森を悪者にしてしまった。 「えっ。だいくんそれ酷くない?」 (はい、すみません。俺、酷いです)  心の中では謝る。 「大丈夫。駅までそんなに遠くないし。今日誘ってくれてありがとうございました。楽しかったです」  改めて丁寧に礼を言う七星に「ななちゃ〜ん」と抱きつこうとする金森を押し退け、俺がぎゅっとする。 「俺も楽しかった。七星が来てくれて良かったよ」 「だいくんだけずるいっ」 (誰がさせるかっ)  どっちに対する嫉妬なのか。たぶん、どっちもだ。  金森がヘルメットを被り、俺にも被せる。 「じゃあ、また新学期にな」 「うん」  金森が先にかっこよくバイクに跨った後に、ぎこちなく乗る俺。  バイクが走り出す。  俺たちを見送る七星に手を振りたかったが。 (や、ムリだろ!) * *  ずっと、ぎゅっと目を瞑って金森にしがみついていた。  どこを走っているのかさっぱりわからなかったが、当然家に向かっていると思うだろう。 「だいくん、ついたよ〜」  バイクを停めて金森が降りる気配がする。サイドスタンドを立てる音がしてから俺はゆっくりと目を開けた。  ツーリングを楽しむまでにはまだ程遠い。 「……」  俺は黙って辺りに目を走らせる。金森に手伝って貰ってバイクから降りる。  そして。 「海〜〜〜」  俺は目の前に広がる景色に向かっていきなり叫んだ。 「だいくん、そんなに喜んじゃって」  うふふと金森が笑う。 「喜んでない! なんで海なんかに来てんだー!」 「えへへ、だいくんともうちょっと二人でいたいなぁ〜なんて思って」  わざとらしくもじもじしている。 「う……っ」  それは確かに嬉しい言葉だ。 「だからってなんで、冬に海なんかに。どおりで朝より走行距離長いと思ったよ。一時間くらい走ってるだろ」 「だねー」  俺たちの高校も少し歩けば海がある。しかし、ここは違う。もう少し上り方面のような気がする。  ぴゅーと風が吹き、 「寒っ」  と自分の身体を抱いた。  周りに人はいない。  元旦の朝に初日の出を見に来る人間は大勢いるだろう。しかし、こんな中途半端な時間というか、もう夕方に近いような時間に海に来る人間はそうそういないのではないか。 「ねぇ、せっかくだから、砂浜歩かない?」  珍しく遠慮がちに言うので「海なんか」と言ってしまったことにちょっと悪かったなという気持ちが湧いた。 「仕方ないな」 「よっ、だいくん、男前!」    ころっと表情が変わったので、殴ってやろうかと俺は手をぐーにした。  

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