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『告白まで……3、2、1』

 金森は黙っていた。  俺も何も話さず、さらさらとした砂を踏んでいく自分の足を見ていた。  ふと顔を上げると少し先にバイクが街灯に照らされて光って見える。この辺りが波打ち際ではしゃいでいた場所なのだと分かる。 (ああ、もう終わりか……)  同じ景色が続き、永遠に手を繋いで歩いていけるような気がした。別にもう二度と会えないわけじゃないのに、なんだか残念に思えた。  降りてきた階段に近づいていく。  その手前で金森が立ち止まった。 「だいくん、ちょっとここで待ってて」  階段の横に大きな石が幾つか並んでいる。てっぺんがゴツゴツしたものや平らなもの。金森はその平らな石を指差した。 「えっ? なんで?」  と言っている間に金森の姿はすでにない。階段を上がっていく音がした。  空はだいぶ暗くなっていて、海を見ても空との境目が分からなくなっている。一人で座って待っていると寒さがよけいに身に染みた。  しばらくして今度は階段を降りてくる音がする。  階段部分のでっぱりの陰に座っている俺にはその姿は見えない。 「お待たせ〜」  両手に何かを持っている。金森は片方を俺に渡して隣の石に座った。  それは温かい缶で金森の手が離れて冷えてきた手を温めた。どうやら金森は自販機を探しにいっていたらしい。  俺は暗い中で目を凝らして缶を見つめる。 「なんで、コーンスープ!」   金森のチョイスに驚く。 「だって、だいくん、コーヒー飲めないでしょ」  言ったことはなかったが、バレていた。金森は当然コーヒーだろう。 「お茶とかココアとかあるだろー」  買ってもらっておいて不平を言うかって感じだが。 「あ、そうだね! でも温まりそうだし、ちょうど小腹が空いてきたところじゃない?」  確かに金森の言うとおりだ。ちょっと腹が空いてきた。  コーンスープをありがたくいただくことにする。缶を開け、コーンスープを啜る。 (美味しい……)  身体も温まってくるようだ。文句を言った手前、口にはしない。  隣からもプルトップを開ける音がして、飲んでいる気配がする。階段の陰は街灯の灯りが当たらず、隣もちょっと見えにくい。 「帰りにご飯でも食べてく?」 「いいけど」  そう答えておいて。 (ん? じゃあなんで今ここに?)  という疑問が湧いてくる。 「じゃあ、ここで休まないでそのまま行けば良かったんじゃないか」 「まぁ……そうなんだけどね」  声が低くなった。金森から漂う雰囲気がまた変化した。  胸が変にさざめいて、俺はしきりに缶に口をつけ、ついに飲み切ってしまった。 「さっきさ、オレ、彼女いたことないって言っただろ?」 「あ、うん」 (なんだ? 今さら)  こんなことを話したくてわざわざ飲み物まで買ってここに座らせたのだろうか。 「その時だいくんならきっと、こう思ったんじゃないかな。彼女でもない女とセックスしたのかーって」  ピンポンッと頭の中で音が鳴る。 「正解」  棒読み。 「オレのこと軽蔑する?」 「しますね」  再び棒読み。  あはっと自嘲気味な笑いが隣から聞こえてくる。見えてはいないが、眉尻を下げた顔が頭に浮かんだ。 「じゃあさ、オレのこと嫌い?」 (は?)  なんでこんな質問をするのか分からない。しかし、この聞き方にはカチンとくる。 『好き?』ではなく『嫌い?』だ。 (じゃあ、何か? 俺は嫌いなヤツとでもセックスするような見境のない人間とでも思ってるのか?)  俺はぐっと拳を握った。 「あのさー」 「あ、待って。やっぱり答えないでくれ」   別に答えるつもりはなかったのだが。 「は? さっきからなんなんだよ、あんた」  デートみたいな少し甘い雰囲気になっていた最後がこれかと怒りを感じる。 (もう、殴って帰るかっ)  立ち上がりそうになった俺の両腕を強く掴んで引き止める。  今まで俺の顔は見ずに海のほうに顔を向けていたが、今は違う。俺の顔を見つめている。 「ごめん。自分の気持ちを言わずに、先にきみの気持ちを聞こうとするなんてフェアじゃないよな」  金森の気持ち。  いったい何を言おうとしているのか、俺は浮かし掛けた腰をまた石の上に戻した。   数秒の沈黙の(のち)、彼は口を開いた。 「ーーオレ、だいくんが好きだ」

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