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『もう好きって言ってもいいんだ』

「俺も……考えてた」  俺も今まで隠していた心の内を曝け出すことにした。 「あんたに何度も触れられて、それが嫌じゃなくて……でも、自分ではまだ認めたくなかったんだ。俺が好きなのは小学校の時のかっこいいあんたで、こんなチャラい男じゃないって」  ふふっと喉奥で軽く笑ったのが聞こえたが、口を挟むことはしなかった。俺は自分のこれまでの気持ちをちゃんと伝えたくて、考えながらゆっくりと話す。 「そんな虚勢もそう長くは続かなかったけど。……あんたに最後までされた時、俺はもう認めるしかなかった。今のあんた、金森明が好きなんだって」  寒さに晒されて唇が乾いている。何度か舌で唇を湿らせる。 「身体から始まる『好き』なんて、なんか爛れてるようでヤだった。でもいくら流されたといっても、嫌いな相手に最後までやらせるわけない。好きだから……。それにそうなってみて思うことは、あんたが『ボクのこと詳しすぎる、好きじゃない?』って何度かからかったように、本当はそんなふうになってしまったあんたのこともずっと意識していたのかもしれないってこと!」  はぁ……と一つ息を吐くと、隣でも同じように溜息をついている気配がした。 「大告白、ありがとう!」  ちゅっと頬にキスをされる。 「キス、好きすぎじゃない?」  恥ずかしい大告白の後の照れもあって、ふざけた調子で言った。 「好きだよ。だいくんだから。オレ、他のコの時は」  俺はヤツの口を手で塞いだ。 「もう、いいよ。他のヤツとの話なんて。もやもやするだけだから」 「だいくん、もしかして嫉妬してくれてるの? なーんて」  嬉しそうな声が聞こえる。なんだか負けたような気がして悔しいけど。 「するよ!」 「え?」   金森は、俺が「するわけない!」って答えるとでも思ったのかもしれない。少し驚いているようだ。 「あんたが俺に初めて触れた時から、ずっとしてた。流れがスマートでずいぶん慣れてんだな、とか、ヘッドボードの棚からゴムやローションが出てくるなんて、このベッドでしたんだな、とか思ってもやもやしっぱなしだった! ーーあんたは、俺が今のあんたをどう思ってるか分からないって言うけどなー!!」  ごほっごほっ。勢い余って咳き込む。だんだん自分の声が大きくなっていることに気づいた。いくら人気(ひとけ)がないとはいえ、まったくいないわけじゃないだろう。自分たちには見えないこの上の道路を歩いている人がいるかもしれない。ケンカしていると思われて人でも呼ばれたら大ごとだ。 「俺だってあんたがどう思っているのか分からなかったよ。前に俺一度聞いたよな? 『俺のこと好きなのか』って、その時自分でなんて言ったか覚えてるか?」  俺はだいぶ音量を落とした。 「え? なんだっけ?」 「ほら、その程度だ。『どうかな?』ってかる〜く言ったんだ」 「あ、うん。でもその後気に入ってるから、もしかしたら好きになるかも、ってつけ加えた」  どうだ? 覚えててすごいだろー的なノリだ。 「なんだ、覚えてるのか。それでその後俺に構ってはくるが、ずーっと今日に至るまでなんの言葉もなし。それなのに時々恋人みたいな態度取られるし。俺はずーっと悩みっぱなしだ。でも自分からは言えなかった。こんなに好きにさせられて、あんたのほうはあの時と一ミリたりとも気持ちが変わってなかったら、もう立ち直れないと思ったんだ」  俺はぐすっと鼻を啜った。話している間に自分の中でいろいろ盛り上がっちゃって涙が出てきた。 「だいくん、オレのこと、ほんっと好きなんだね!」 「だから、そうだって言って……っ!」  皆まで言わせず唇を塞がれた。さっきよりも激しくてちょっと長めの。  金森は唇を離すなり言った。 「どうしよう! だいくんのこと今すぐ抱きたくなっちゃった!」 「へっ?!」  俺はまったく色気もないような素っ頓狂な声を上げた。 * *  金森は本当はその辺りにあるホテルにでも入りたかったくらい切羽詰っていたらしい。でも慣れていない俺のためにバイクを走らせた。  確かに俺はラブホなんか入ったこともない。男同士が入れるのか、入れたとしても、やっぱり俺には難易度が高い。  俺はこれからのことを考えるとどこかふわふわした感じで、バイクに乗っていても来た時の怖さはまったく感じられなかった。まったく違う気持ちで金森の背にしがみついていた。  バイクは金森邸の裏門に入っていく。金森はバイクを裏庭の木々に隠すように置き、俺の手をぎゅっと握って自分の部屋の前に走る。何度か使ったことのある外階段を前に、俺は小声で言った。 「こんな、三が日のうちからおじゃましちゃっていいのか?」 「いいのいいの、今日はホテルで会社の年賀会があるから、みんな出払ってる。それにいたところで誰もオレのことなんて気にしない」 『あんたは行かなくていいのか?』  そう言おうとしたが、金森の家庭環境を考えるとそれは愚問だろう。俺は黙って金森に手を引かれながら階段を上がった。    金森は今までになく性急だった。  部屋に入るとすぐにキスをされ、されながら上着を脱がされた。ベッドまでの道のりに二人分の服が点々と脱ぎ捨てられていく。  ベッドに放り込まれ、ぎゅっと抱きしめられる。 「好きだ」  キスの合間に、愛撫しながら、されながら、お互いしきりにそう口にする。  今まで言えなかった、心に溜めていた分もすべて相手の心に注ぎ込むように。 (もう……好きって言ってもいいんだ) 「好き」といいながら、受け入れる熱は最初の時よりもずっと熱くて、気持ちよくて、幸せで。  俺は我慢できずに泣き出した。

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