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第一章【6】リンゴ

――翌朝。 「ほら、食え。食ったらまた……してやるから」  ぼんやりとしているユリにライモが差し出してきたのは真っ赤な大きなリンゴだった。受け取ったそれはずしり手のひらに沈んできて、ひと口齧ってみると瑞々しい果汁が乾いた身体に染み渡っていく。 (食べたら、また……抱いてもらえる……)  ユリはそう思い、その巨大な球体に歯を立てた。  昨日ライモと身体を繋げてから、ユリの思考は完全に生殖行動のみに占められている。  エルフとオークだとか、エルフ王の孫たる誇りだとか、そんなものは頭から完全に抜け、ただただ目の前にいるライモと繋がりたくて仕方がない。  結局昨晩はユリが寝落ちて、一旦は休憩となったらしいが、目を覚ましても変わらず発情は続いており、ユリはもうライモが欲しくなっている。昨日よりはまだ落ち着いてはいるが。 「ユリ」  突然名を呼ばれ、ユリは驚いてライモを見た。名を呼ばれたのは初めてだ。 「毛、食ってるぞ」  ライモの指摘にユリは口元を探り、口に巻き込まれた自身の髪を払う。長い髪は乱れまくっていたが大して気にもしていなかった。服だってライモの大きいシャツを一枚肩に引っ掛けているだけだ。  ライモは戸棚から何かを取り出し、寝床に座るユリの隣に腰を下ろすと、ユリの長い髪を手櫛で撫でとかし始めた。  ライモの太い指が頭皮を撫でていく。なぜか胸の奥がホコホコしてムズムズしてきた。性的に気持ちいいとは別の心地よさだ。  ライモが「ほら」と小さく囁くと髪はすっきりと束ねられていた。さらにライモはユリが齧るリンゴを指さした。 「それ、食えてんのか?」  今リンゴを食べているのが見えているはずなのに、なぜそんなことを聞くのか意味が分からない。返事に困っていると、ライモはテーブルにあった小刀を手にして、ユリからリンゴを取り上げた。 「切ってやるよ」  どうやらユリの食事が遅すぎて、見兼ねたようだ。  ライモがリンゴに刃を入れる様を、ユリは横から覗き込んだ。ライモの大きな手に握られたリンゴはとても小さく見えた。 「皮も剥いて」  なんだか甘えてもいいような気がして、ユリはライモの肩に頭を乗せてお願いしてみた。 「ワガママなヤツだな」  ライモが微かに肩を揺らし笑う。  慣れた手つきでリンゴ剥くその指先。ユリはライモの爪が短くなっていることに気付いた。昨日までは太く長い爪があったはずた。尻や太ももを掴まれた時、爪が当たる感触があったから確かだ。  するとライモは小さく切ったリンゴのカケラを摘み「ほら」とユリに差し出してきた。ユリは手で受け取らず「あー」と口を開けた。 「お前なぁ」  ライモは笑いながらリンゴをユリの口に入れてくれた。ユリはライモの肩に頭を預けながらシャクシャクとリンゴを食べた。 「私の名前、知っていたのだな……」  ふと、ユリは尋ねてみた。  ライモは少し驚いた顔をしてユリを見たが、視線をリンゴを切る手に戻して静かに応えた。 「……ユリ様って呼ばれてたからな」  ライモが自分の名前を知っていたことが嬉しい。無意識に頬が緩んでしまう。 「ライモ?」  ユリもライモの名を読んでみると、またもやライモは驚いたように銀色の目を見張り、緑ががった浅黒い肌が少しだけ赤く染まった。 「そ、そうだ。それが俺の名だ」  大きな身体で気恥ずかしそうにするライモが面白くて、「ふふ」と笑いを漏れでてしまった。 「もうお腹いっぱい」 「ちょっとしか食ってねぇじゃねぇか」 「そんな大きいリンゴ、全部は食べられないよ」  ライモがユリの食べ残した半分のリンゴをポイっと口に入れて二回咀嚼し飲み込む。豪快な食べっぷりを見つつ、ユリはライモの太ももに手を置いた。 「ねぇ、ライモ……」  リンゴで腹は満たされた。ライモを見つめ、約束通りの性交をねだる。 「ん、食ったばっかりだから、ゆっくりな……」  ライモは子供をあやすようにユリの頭を撫でつつ、胡座をかいた。そしてズボンの前をくつろげると、既に半分勃ち上がっている状態の中心部を取り出した。  昨日はずっと後ろから貫かれていて見えていなかったライモのソレ。巨大であるとは感じていたが、目の当たりにすると想像以上だ。さらにその周りにはフサフサとした陰毛。その茂みは腹まで続き、がっしりと筋肉の張った胸にもフサフサと毛が生えている。  対してユリのモノは、勃起しても貧相でヒョロリとしている。さらにこれまたライモとは違い、胸毛どころか股にも毛はなく、そんな貧相な中心部が丸見えになっている。  オークであるライモの身体はエルフと比べると圧倒的に筋肉質だ。ユリはΩとはいえ軍人としてのプライドもあり鍛えているつもりだった。しかしライモの隆起した胸筋や腹筋を見ると、自分の身体など子供のように思えてくる。 「見なくていい」  ユリが興味津々でライモの股間を見つめていると、大きな手がソレを隠した。 「なんで?」 「だって、嫌だろ?」 「見られるの、嫌?」 「じゃなくて、ユリが見たくないだろ?」 「なんで?」 「気持ち悪ぃだろ?」 「なんで?」  いまいち会話が噛み合わないのは、自分の頭がぼんやりしているからだろうか。ユリはそう思ったがそれ以上考えるのも面倒になった。それはライモも同じだったようで、ライモは切り替えるようにユリに手を差し伸ばした。 「ここに腰、おろせるか?」  その指示にユリはこくりと頷いて、ライモに抱き着くように跨った。

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