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第二章【3】キスの仕方(1)
ユリの中でキスとは、想い合っている二人が互いの唇を合わせることであり、それ以上のことは知らなかった。
家臣から忠誠の証として手の甲にキスされることはあるが、もちろん手を舐める者などいない。ユリは恋人同士のキスもそういうものだと思っていたが、違う可能性を感じ始めた。
「ユリが、その……これまでキスした相手は皆唇を合わせるだけだったのか?」
「わ、私はライモとしかキスしてない……」
「えっ! ……じゃあ、発情期でも相手をするヤツとはキスはしなかったのか?」
「私は……この前のが初めての発情期だ……」
ユリの言葉にライモは大きく目を見開き、口をポカンと開けたまま固まった。
「なんだよ、ライモ。経験が無いとダメなのか?」
ユリは不安になり小首をかしげライモに問いただした。ライモは硬直を解くが、「マジか……」と呟き両手で顔を覆い俯いた。
「なっ、何?! 本当に良くないのか? だってさ、あまりそういうこと自体に興味も湧かなかったし!」
ユリは大人になっても色恋に全く興味もなく112年生きてきた。周囲もユリがやがて東のエルフ王の番として召されると知っていたので、当然口説く者もいなかった。
ユリはライモが自分に興味を無くしてしまったのではと不安に駆られ、しゃがみ込み、顔を隠しうつむくライモを下から覗き込んだ。
「なぁ、ライモ? 経験が無い私ではダメなのか?」
するとライモの大きな鼻からフシューッと巨大な溜め息が噴き出してきた。そしてライモは両手から顔を覗かせ、銀色の瞳でユリを見た。
「スゲェ……嬉しい……」
そのギラギラとした眼光に、ユリはまたドキッとしていると、ライモの両腕がユリを抱き寄せ、ライモはユリの腹にうずくまるように頭を押しつけてきた。
「今までの発情期はどんなヤツがユリを抱いていたんだろうとか、想像しちまって。あのアルマスとかいうヤツとしてたんかな、とか思ったら嫌で嫌で……気がおかしくなりそうだった……」
自分の身体にしがみつき、甘えるライモ。ユリはその銀色の短髪を撫でた。
「ライモ……怒ってすまなかった。私がキスを知らないだけなのだな」
ライモがゆっくり身体を起こしユリを見てきた。
「お、教えてよ……オークのキス。発情期中にどんなキスしてたのか……」
ユリの言葉にライモの喉がゴクッと鳴った。
ライモは再びユリを横抱きにして膝へ乗せた。
「本当に嫌じゃないか?」
「なぜ?」
「気持ち悪いって思わなかったかなって……」
「いや、それは思わなかった」
「俺、臭くないか?」
ライモの思わぬ質問にユリは「アハハ」と声を上げて笑った。
「全然臭くないよ。ライモはいい匂いがするんだ。森みたいな、夏の生い茂ったモミの木の葉みたいな……いい匂いなんだ」
ユリはライモの首元に顔を寄せて大きく息を吸った。するとライモもユリの耳元に鼻を寄せ、囁いてきた。
「ユリもいい匂いがするよ。発情期中は凄く甘い匂いがしてたんだ。今も微かに甘くて、春の野薔薇みたいで、凄く好きだ……」
ライモの低い声が至近距離でユリの鼓膜を揺らす。
想いを伝え合うとこんなにも大胆に愛を囁くことを許されるのだ。その事実にユリは感動していた。
「ユリ……」
ライモがユリの髪と尖った耳を撫でながら、唇を寄せてきた。
唇が唇に触れる。
ただ押しつけただけのユリと違い、ライモはユリの唇を啄むように唇で挟み動かしてきた。先ほどよりより互いの唇の柔らかさを感じた。
そして、ライモの舌がユリの唇に触れる。来ると分かっていたのに、ユリの身体は勝手にビクリと震えてしまい、ライモはそれに気付いたからか一度舌を引いた。しかし、ユリが拒絶の言葉を吐かなかったので再び舐め始め、さらに唇の合間から内側へと侵入してきた。
「……んっ!」
キスで舌を使うとは、唇の表面を舐めるだけではないのだ。驚き硬直するユリはつい歯を食いしばってしまった。
「ユリ……口、開けられるか?」
ライモは唇を合わせたまま語りかけてきて、ユリは素直に従い口を開いた。
舌と舌が触れる。
「んっ……はぁ……」
呼吸の合間に声が漏れてしまい、その甘えた声にユリ自身が驚いた。
ライモが舌を絡ませてきて、ユリもライモを真似て舌を出してみた。
粘膜と粘膜が触れ合う感触は恐ろしく気持ち良かった。
(こ、これは……口で性交してるみたいじゃないかっ!)
それを悟った瞬間、ユリの股間がズクリと震えた。
「あ……も、だめっ……!」
ユリはライモの胸を押し、その唇から逃げた。全身が心臓になったように脈打ち、全身が熱い。
「やっぱ、気持ち悪いか?」
「い、いや……私には刺激が強いと言うか……、これ以上したらっ……」
これ以上続けたら、あらぬところがあらぬ方向へ兆してしまいそうだ。と言うか、既にそうなり始めている。
動揺したユリがライモの膝の上で身を捩らせた時、尻の下にコブのようなものがあることに気付いた。腰をずらしてそこに視線を落とすと、ライモの股間が盛り上がっていた。
「あ……すまん……」
疑問に思ったと同時にライモが謝罪してきて、ユリはそれが何なのか理解した。
「っ……!」
「調子にのっちまったな」
ライモが謝りながらユリを下ろそうとしたが、ユリはライモにしがみついた。
「……ユリ?」
「キ、キスでこんな気持ちになっても……いいものなのか?」
「こんな気持ちって?」
その質問にユリが答える前に、ライモの視線がユリの股に止まった。そこは控えめながら服を押し上げていて、ユリは咄嗟に両手で隠したが、その仕草はむしろ昂ぶってしまったことを証明してしまった。
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