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第二章【5】冬ごもり
季節はすっかり冬へと入った。
冬になるとオークは巣篭もりし、あまり外には出なくなるという。雪はそれほど多くは積もらない地域なので、晴れた日には鹿狩りに行ったりするらしいが。
「ひと冬も家に籠もって、オークは何をしてるんだ?」
ユリは寝床でライモの腕に頭を預けたまま疑問を口にした。
「んー……布を織ったり、獣の皮を鞣したり、あとはまあ、その……ゴロゴロしてるかなぁ……」
なんだか誤魔化したような言い方。ユリは目の前にあるライモの胸毛を指先でもて遊びながら「ふーん」と冷たく返事をした。
オークの村が冬籠もり中なので、ライモはほとんどこの小屋で寝泊まりしていた。必然的にユリもライモの元へ通う頻度は増し、毎晩、城の自室からこの小屋へ転移魔術でやってきては、朝また城へ戻っている。
城を抜け出す頻度は増えたが、その分昼間に城で過ごすことも出来るので、エルフの仲間から怪しまれる確率はかなり減ったと予想している。
(ライモも今までの冬は、オークの女のひとと……こういうことしてたんだろうな……)
オークはエルフに比べて性欲旺盛。それも格段にだ。
ユリが怖がっていないと知ったライモは、実に積極的になった。ユリはライモにほぼ毎夜裸にされ、全身を撫で回され、舌を這わされている。それによって興奮してしまうユリの身体は何度も精を吐き出し、それもまたライモに舐められ……。ユリの中では羞恥心と快感と喜びがごちゃ混ぜになって、もはや中毒状態だ。
だからなのか、ライモが他の者に同じようなことをしていると考えると、猛烈な怒りが湧いてきてしまう。
「ライモの村には、Ωは何人いるんだ? 発情期はどれくらいの間隔?」
ユリはその一糸纏わぬ身体を起こし、仰向けになっているライモを睨んだ。
「ユリ……」
ライモは困ったように眉を下げ、ユリの腰から背中を撫で上げる。
「次の発情期が2年後だってこと、そんなに気にするなよ」
「でもライモ、あからさまにガッカリしてたっ!」
「してないって」
ガハハと笑うライモをユリは不満を込めて睨んだ。
「そりゃ驚いたけどさ、むしろ俺はホッとしたんだぜ? 今はユリに発情期がきたら、前みたいに俺の所で過ごせるのかわからないだろ?」
まあ、確かにその通りなのだ。発情期になれば魔術は使えなくなる。もし城で発情期に入ってしまえば、一人で耐えなくてはいけなくなるし、この小屋で発情期に入ってしまえば、またユリは行方不明状態になり仲間たちが騒ぎ出す。
「次の発情期までに二人で暮らせる場所を探そう」
ライモが「な?」と呼びかけながらユリの頬を撫で、ユリはこくりと頷いた。
「村はユリの助言で別の場所に引っ越し出来たし、もう俺はいつでも旅立てるぞ」
ライモが身を起こし、真剣な眼差しで告げてきた。夢物語ではない具体的な話に鼓動が早くなるのを感じる。しかし。
「……この首輪は、エルフ王の魔術でつけられていて、王でないと外せないんだ……」
ユリは自身の首に嵌められた銀の首輪に触れた。
「ライモにうなじを噛んでもらえないと、番になれないし……」
発情期のΩはαにうなじを噛まれると番となる。そして、そのα以外とは性交できなくなり、匂いで他のαを惹きつけることもなくなる。さらに番同士であれば妊娠する率も確実に上がるらしい。
「オークとエルフでは子が出来るのかも分からないんだ。そもそもエルフは妊娠しにくいし……。でも、番になれば、もしかしたら!」
「ユリ……」
向かい合って座ったライモが、大きな手でユリの頬を優しく撫でてきた。
「もちろんユリが俺の子を産んでくれたらスゲェ嬉しいけど、俺はユリと一緒にいたいってのが一番の気持ちだ」
「ライモ……」
「だから、二人で旅に出て棲家を探しながらその首輪の術を解く方法も探せばよくないか?」
確かにそうだと思った。
エヴァリーナにお願いしたって首輪を外してくれるはずもない。もたもたとしていたら東のエルフ王エルネスティに嫁ぐ日も来てしまいそうだ。ライモの寿命だってあと50年。すぐにでも歩み出すべきだとユリは確信した。
「そうする! 一緒に行く!」
ユリが賛同するとライモは目を輝かせ、ユリを抱き寄せた。
「じゃあ、準備を整えて春になったら旅立とう!」
「うん!」
ユリも手を回し、ライモの大きな身体に抱きついた。
素肌に感じるライモの体毛や、その下の分厚い筋肉と高い体温。そして森のような匂い。
「ああ、春が楽しみだなぁ」
「俺もだ」
「ずっとずっとライモと一緒にいられるなんて、きっととっても幸せだ」
「ああ、俺もそう思う」
どちらともなく合わせられる唇と唇。
「こっちも、春までに入れられるようになりたい……」
ユリはキスの合間にそう呟き、自身の尻の谷間を撫でると、ライモの指がユリの手を追いかけてきた。
「さっき俺の指を2本咥え込んだんだ。あとちょっとだよ」
ライモの指に撫でられ、甘い刺激にユリの蕾は再び潤みだす。
「さっきの、気持ちよかったか? スゲェ濡れてた」
「んっ、ラ…イモっ」
「ああ、また濡れてきた。ユリは素直だな」
口づけを交わし、身体を寄せ合い、二人は温かな冬を噛み締めていた。
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