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第三章【18】番*
ユリの同意を得て、ライモはユリの首輪に手をかけた。それは革に細かな草花を彫刻した首輪で、ライモが東に来てからユリに贈ったものだった。オークの村の長老ババ様から貰った金貨2枚で、この首輪と自分の斧を買ったのだ。
エルネスティから貰った白いレースの首輪もよく似合っていたが、別の男から贈られたモノをユリが身につけていることが、ライモにはどうしても不愉快だった。『2年くらいしかつけないのに、もったいないよ』とユリは笑ったが、ライモが贈った首輪を嬉しそうに着けてくれていた。
革のベルトに手をかけて、ゆっくりと外す。金の絹糸のように滑らかな髪を掻き分け晒される白く細いうなじ。
「あぁ……ユリ……」
「ぁん……」
上気し薄紅色に染まるその柔らかな肌に、ライモは舌を這わせた。強いΩの香りに、ユリの蕾に入れたままの肉塊がムクムクと膨張する。
「あっ……んっ……ライモ……っ!」
ユリの口から漏れる喘ぎは、さらに甘く濡れていく。
「ユリ……俺のものになれ……」
ライモはそう囁くと、その柔らかなうなじに牙を立てた。
1本しかないが巨大すぎる下顎の牙は使わないように避け、上顎の2本とその他の歯で噛んでいく。それでもエルフの華奢な首筋にはオークの口は大きく、加減しなければとライモは考えていた。
「ああぁぁ……っ!!!」
ユリが悲鳴に近い声を上げ、やはり痛いのかと歯を引こうとした瞬間、ユリから甘い香りがさらに噴き出した。それは香りの爆発だった。
「うっ……!」
全身を包み込み、身体の中まで埋め尽くされるようなユリの存在感。口に広がるユリの血の味。そしてユリの蕾はライモを咥え込んだままビクビクと震えている。あまりの快楽の渦にライモの思考が飛んでいった。
「はあぁんっ! ライモっ! ライモっ!!」
ユリは明らかに強い快楽を感じ、さらに興奮していた。
ユリの全てが自分のものになっていく。
肉体も心も過去も未来も全てだ。
ライモはユリのうなじを噛んだまま、激しく腰を揺すった。
噛みっぱなし、入れっぱなしで、ライモはユリの中に何度も子種を吐き出した。時が経つのも忘れ、ユリの全てを自分のものにするべく。
「ユリ……」
何度目かも分からない射精を終えた時、ライモはやっとユリのうなじから口を離した。
その途端、白い首から鮮血があふれ出した。
「ユ、ユリっ!!!」
ユリのうなじには巨大な牙の穴が二つ空き、そこからドクドクと血が流れ出てくる。
「ああぁぁっ!! ユリっ! ユリっ!!」
「ん……ら……も……」
ライモが叫び呼びかけるが、ユリは真っ白に血の気を失い、朦朧としている。
「だ、誰か呼んでくるっ!!」
慌てて身体を引き剥がし見れば、ユリの尻はライモの大量の精液にまみれていた。
「クソッ!! 俺はなんてことをっ!!」
うつ伏せのままヘッドに横たわるユリの下半身に上掛けをバサリと掛け、ライモは慌てふためきながら家を飛び出し、転がるように全速力で走った。
全裸で。
「誰かーーー!!」
「なっ?!! ライモ殿っ?!」
エルネスティ後宮内の広い庭を走り、一番近くの宮殿に駆け込んだライモ。その宮殿の前に偶然いたのはイラだった。
「裸で何をしてるんですっ?! えっ、血?!」
一糸纏わぬ姿で、しかも血まみれで現れたライモにイラは怒りと驚きを込めて叫んだ。だがライモにはそんなことを気にしている余裕もない。
「た、助けてくれっ!! ユリがっ!!」
「ユリがどうした?!」
するとちょうど近くにいたらしいエルネスティが顔を出した。その奥にはエルネスティの3人の妻の姿も見える。
「あらあら、なんてご立派な……」
「ちょっとキーア。どこ見てるのよ」
「何かあったのかしら?」
金髪と白髪と赤毛の3人の妻が騒ぎ見つめる中、エルネスティは自身のコートを脱ぎながら駆け寄り、そのコートでライモの股間を隠すように促してきた。ライモはそれを受け取りながらも叫んだ。
「ユリを強く噛んじまったっ! 血が止まらないっ!」
エルネスティは大きく目を見張ったが、すぐに冷静な眼差しに戻し、動揺しているライモの肩に手を置いた。
「私が治癒を。寝室に入ってもいいかい?」
エルネスティはこんな時でも律儀だ。もちろんユリの緊急自体にそんなことは気にしてはいられない。ライモはすぐにうなずいた。
その瞬間、ライモはエルネスティの転移魔術で寝室へと戻っていた。
「ユリっ! 大丈夫かっ?」
「ん……」
ユリは朦朧としているが、ライモの呼びかけに微かに反応した。
「ああ、これは深いね……」
エルネスティはユリのうなじを確認すると同時に、手のひらから白い光を出し治癒を開始した。
「ユリ……っ」
ライモは側でその様子を見ているしかなかった。
ユリの白いうなじに開いた巨大な歯形は穴と言ってもいい状態だ。
なぜこんなことをしてしまったのだろう。初めは加減していたのに、いつの間にか夢中になってしまった。
「完全に治療してしまうと、番契約が無効になってしまうかもしれない。止血だけして、あとは私の気を分けよう」
エルネスティがそう説明している間にも、ユリの顔には血色が戻り始め、そしてその目がうっすらと開いた。
「ら……イモ……」
「ユリっ!!」
「……れ? エ……スティ、さま、なん、れ……?」
ろれつが回らないユリがぼんやりと辺りを見渡す。ライモは必死にユリの手を掴んだ。
「ユリっ、すまんっ! 俺、噛みすぎちまって!!」
「やあ、ユリ。君が魅力的過ぎて、ライモが加減出来なかったみたいだね。気分はどうだい?」
焦るライモと対照的にのほほんと尋ねるエルネスティ。そして当のユリはライモの手を握り返し、うっとりとした表情を浮かべた。
「す、ごく……イイ……です……」
「おやおや、見せつけてくれるね」
緊張感の全く無いユリと、それを笑うエルネスティ。その様子にようやくライモは安心し、ヘロヘロとその場に腰を下ろした。
「エルネスティ、本当にありがとうっ! あんたには2回も命を助けられた」
ライモがそう心から礼を述べると、エルネスティは「大袈裟だよ」と笑った。
「ライモが牙を1本失っていて良かったのかもね」
「ああ。こんなことになるなら、4本とも抜いちまえば良かったんだ……」
エルネスティは半分冗談のつもりだったのかもしれないが、ライモは心の底からそう思った。ユリの命を危険に晒すくらいなら、あの魔道具屋の婆さんに4本ともくれてやった方が良かったのだ。
「そんなの、ダメだっ!」
すると突然、大人しかったユリが叫んで、ライモとエルネスティは吹き出した。
「もう大丈夫そうだね。私はこれで退散するよ。滋養に良さそうなスープを運ばせよう」
エルネスティはそう言って立ち上がると、ライモの耳元で囁いた。
「出血が酷かったからね。あとは優しく抱くんだよ」
「こ、こんな状態なのに抱けるかよっ」
「何を言ってる? 発情期のΩを抱かないなんて、その方が可哀想だ」
「うっ……」と言葉を詰まらせるライモの肩をエルネスティは強く2回叩き、「じゃ、ごゆっくり」と笑い寝室を出て行った。
それからライモはユリの身体に付いた血を丁寧に拭き、シーツも変え、エルネスティの指示で運ばれてきたスープをユリに飲ませた。
「ライモ……私は、ライモの番になれたかな……?」
発情と貧血でとろりと微睡んでいるユリがライモの腕に抱かれたまま聞いてきた。
「ああ、しっかり噛んだから、きっともうユリは俺の番だ」
噛み過ぎてしまったことを深く反省しつつ、ライモはユリを抱き締め、その頬にキスをする。そのキスをユリはくすぐったそうに「ふふふ」と笑う。
ロマンティックな夜にしようと思っていたのに散々だ。ライモは全てをぶち壊してしまった自分自身を殴ってやりたいし、ユリにも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。なのに。
「今、すごく……すごく、幸せだ。こんなに幸せでいいのかな? ってくらい幸せだ……」
なのにユリはうっとりと微睡みそう呟く。そんなユリにライモは救われる思いがした。
「ああ、俺も、俺も幸せだ……」
ライモも心からそう思い答えた。
「きっともうすぐ……来てくれるよね」
ライモの答えにも満足したかのように、ユリはさらにそう囁き、自身の下腹を撫でていた。
つづく
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