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第四章【19】あの泉*
夕方になりユリとライモは帰ることにした。
「これからはちょくちょく来なさいね」
「ま、気が向いたらな」
ライモは母親に素っ気なく答えた。
オークにとって10 年はとても長い時間のはずだ。しかし、ライモとその親兄弟はまるで毎日会っていたかのように距離を縮めている。ユリにはそれはなんだかとても微笑ましく、羨ましくもあった。
「ユリちゃんもまた来てね」
タルが手を振り言ってくれ、ユリも笑顔で「はい」と応えた。他の村人たちにも見送られ、ユリとライモはオークの村をあとにした。
外に出ると辺りは夕陽で赤く染まっていた。
「ここから東まで戻れるか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「ん」
ライモの問にユリはすぐそう答えた。だが。
(なんか、ライモ、怒ってる?)
なんとなくだが、ライモからピリピリとした気配を感じる。口調も微かに素っ気ない気がした。
思い当たるのはさっきライモの注意に逆らってティモに抱きついたことだ。ライモと血が繋がった、しかもまだ14歳の子供なら特段問題ないと思ったのだが。
「なあ……どうせならあの泉にも寄ってかねぇか?」
ふとライモが思い立ったように提案してきた。
『あの泉』とはもちろん、きっと、『あの泉』だ。
「うん! 行こう!」
ユリはすぐさま返事をすると、ライモの手を握り転移魔術を発動させた。
西のエルフ領内にある小さな泉。
そこは10年前にユリがライモに拾われた時と全く変わらない姿で存在していた。
「わぁ、良かった。ちゃんとあって!」
「ああ、全然変わってねぇな」
ユリはほとりの石に膝をつき、水に手を差し入れた。ひんやりと冷たく、清らかな泉だ。日が沈みかけ辺りの森は風もなくより一層静かだった。
「なあ……水浴びしてこうぜ」
ライモが静かに言った。振り向きライモに目線を合わせると、その銀色の瞳には情欲めいた熱さがあった。
ユリは視線をキラキラ光る水面に戻し、一瞬言葉を詰まらせたがすぐに「……うん」と言った。
こんな場所で裸になるなんて誰かに見られたら、とも思うが、こんな時間にこんな森の奥までやってくる者などいないだろう。
ライモとの思い出の場所で、ライモと二人きり。そう思ったらユリも身体が熱くなるのを感じた。
「たくさん歩いて汗かいたからちょうどいいな……」
ちょっと恥ずかしくてユリは言い訳がましいことを言ってみた。
「ああ、そうだな」
ライモは静かに同意し、ユリの服に手をかけた。
自分で脱ごうと思ってたのに脱がされるのだと分かり、ユリの心臓が途端に跳ね出す。太い指が器用にユリの服に着いた紐を解き、ゆっくりと一枚一枚服が剥ぎ取られていく。
茜色の陽に照らされた肌にライモの視線が這うのを感じた。するとライモが堪えきれなかったかのようにユリの唇に口づけてきた。
「んっ……!」
『水浴び』と言う名目はどこへやら、ライモは服を着たままで全裸にしたユリを掻き抱き、舌を絡める激しいキスをしてくる。
「んっ……ラッ……」
呼吸の合間に名を呼ぼうとしたが、それすら塞がれ唇を貪られた。やがてライモの唇が唇から離れ、ユリの首筋を舐め始めた時、ユリは思い切って尋ねた。
「ラ、イモ……お、怒ってる?」
ユリの問いかけにライモは顔を上げ、驚いたように目を見開きユリを見つめてくる。
「あ、違った? 勘違いならいいんだ。ごめん」
情事に水を指してしまったことになり、ユリは気まずくなり焦った。ライモはユリから少し目をそらし、「いや……」と呟く。そして頭をガシガシと掻き、乱暴に服を脱ぎ捨てると泉に飛び込んだ。バシャーン! と大きな水しぶきが立つ。
「ライモ?!」
ライモは一度深く泉に沈み込み、立ち泳ぎで水面から顔を出すとバシャバシャと顔を擦った。
「すまん! 八つ当たりしてた。無自覚だったけど」
なんだか妙にスッキリした顔を向けてくるライモにユリは「なんだそれ」と笑った。
ライモが両手を広げて『来い』と示してくる。ユリは迷わずその胸に飛び込んだ。昼間の熱がこもった空気と違い、泉の中はヒヤッと刺すような冷たさだ。その中でもライモの身体は温かい。
ライモはユリを抱いたまま足がつく場所まで泳ぐ。
「やっぱり怒ってたのか? 私がティモに抱きついたからか?」
ユリはライモの首にしがみつきながら尋ねた。
「んー……それは……」
「違うのか?」
ライモはしどろもどろで、自分が何に怒っていたのか考えている様子だ。
「ユリはもう……やきもちを焼いてくれねぇんだな、って思って……」
「え?」
「俺に子供がいるって知った時は泣いて怒ってくれたのに、もう平気そうだから。いや、いいんだぞ! ユリが悲しまない方がいいんだから!」
ユリはクスクスと笑い、ライモを見た。
「だってティモ、ライモにそっくりなんだもん。嫉妬より可愛いって思いの方が大きくなっちゃって」
ライモが何を言おうか迷っているような顔をしている。
「村の人たちにも、ライモの家族にも、会えてよかった。あの人たちの中でライモが育って、ライモが出来てきたんだって思うと、全部が愛おしいって思ったんだ。それから……」
ユリは少し言葉を詰まらせた。言うか言わまいか悩むがそのまま話を続ける。
「私たちにはこのまま子供が出来ないかもしれないし、だからって言うわけじゃないけど……私もライモの子を可愛がりたいんだ。だからこれからもっとオークの村にも行きたい。私もライモの家族に入れてほしい!」
ライモは何かを堪えるように口を固く結び、ユリの腰に回した腕に力を込めてきた。
「ユリはもう俺の家族だろう。とっくに一番の家族だ」
力いっぱい宣言されて、ユリは思わず笑顔になった。笑顔になったのに涙も溢れてくる。ユリはなんだか泣き顔を見られるのが照れくさくて、ライモに抱きついて顔を隠した。
「うん、そうだな! ライモは私の一番の家族だ」
陽が沈み森は濃紺に包まれ、木々の隙間からは青い月の光が差し込んで泉を照らしていた。
「ん……はぁ……」
ライモが腰を揺する度に、水面に映ったもう一つの月もゆらゆらと揺れる。
向かいあって抱き合い、水中で身体を繋いだ。『こんな所で……』と思うと羞恥心は増すばかりだが、浅い部分を焦らすように擽るライモの中心部にもどかしさも感じる。下半身で繋がり揺らしながら唇もついばむように触れ合わせる。甘く囁き合うような交わりだった。
「ぁんっ……ら、ライモ……もっと奥っ……」
ユリはたまらずライモにねだった。ライモはニヤリと上の牙を見せ笑い、ユリの腰を抱くと泉の淵にある大きな石に寝かせた。
「ユリは太陽の下でも、月の下でも綺麗だな」
水から上げられたユリの肌をライモが撫で回し、大きく脚を広げさせると、再びユリの蕾へと巨塊をねじ込んでくる。
「ああぁぁんっ!!」
「ああ……スゲェ……」
もうよく知っている馴染み深い快感。それはビリビリと電流が走るような快感だ。
「あっ、あっ、ライモっ……もうっ……!」
ライモはユリが馴染むのを待ち、腰を揺らさなかったが、待ちきれなかったユリは自ら腰をくねらせ、あっという間に白蜜を吐き出した。
「ああ、ユリ……出ちゃったな。良かったか?」
ライモが子供をあやすような口調で聞いてくる。ユリは恥ずかしくて顔をそらしながらもコクンと頷いた。
「じゃあ、もっと良くしてやるよ。ほらっ!」
「ひゃああぁぁんっ!」
ライモは宣言と同時にユリの秘所をその凶器で抉った。
「ユリっ!」
「あぁっ! ら、ライモ……っ!」
互いに想いをぶつけ合い、激しく抜き差しを繰り返す。ライモの巨根が激しく出入りする度に、ユリの濡れた蕾はグチュグチュと音を立てる。
「ああっ、ユ、リっ……!!」
ライモが苦しげに息を詰め、ぐりんっとユリの最奥へと肉棒を突き入れた。そしてライモは男らしい眉を寄せて身を微かに震わせた。
「ぁんっ!」
蕾の奥にライモが子種を叩きつける。それは長い時間、ドクドクとユリの腹の中で脈打ち、大量の精液が中に放たれていく。
全身がライモに染まるような、そんな感覚。ユリはこの感覚が大好きだ。
二人の荒い呼吸が混じり合う。
ユリはライモの顔に手を伸ばし、巨大な牙のある左の頬を撫でた。
「ここで……ライモに拾われて、良かった……」
10年前に突然訪れた発情期に戸惑い、この泉に身を隠していたユリ。あの時からライモはいつも全力でユリを守ってくれた。
「ああ。ちゃんと見つけられて良かった」
ライモがユリの手を取りフフッと笑った。
月に照らされたライモの顔は優しくて、でも男らしくて、その顔は世界で一番ユリが好きな顔だった。
それから数カ月後。
ユリは発情期でもないのにあっさりと妊娠した。
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