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第33話 コンテスト
「ハピロン高校生ホールスタッフ接客コンテスト?」
その次のバイトの日、いつも通りシフトに入っていた史人さんと俺は並んではもっていた。もちろん、いらっしゃいませ、とか、ありがとうございました、みたいな挨拶の練習で声をはもらせていたわけじゃない。
「仲いいねえ。君達。おんなじタイミングでおんなじ反応」
出勤早々俺達を呼び出した店長がくつくつと丸い肩を震わせる。だが、こちらとしては笑えなかった。
店長の話をかいつまんで言うと、毎年ハピロンでは、接客スキルの向上目的で、全国のチェーン店からそれぞれ高校生バイト二名を選んでコンビを組ませ、どの店の接客が一番素晴らしかったか競うらしい。優勝賞品はハピロンのサービス券一年分。
まあ……土日には賄いも出ているので、正直、あんまり魅力は感じない。
「やってみない? 芹那くんと四宮くんなら、いい線行くと思うんだよね~。ふたりとも落ち着いたいい接客するから。それに、息もぴったりだしね」
……なんだろう。こんなふうに言われるとちょっと、うれしい。
「俺はいいですよ。先輩と一緒なら楽しそうだし」
ちらっとこちらを流し見られ、ね、というように小首を傾げられる。こんな顔をされるとこちらも頷かざるを得ない。
仕方ない。しぶしぶ、頷いてやる。
「俺も、いい、です」
「おお、よかったよかった。そしたら、詳細はここに書いてあるから、当日よろしくね。応援、僕も行くから。なに、普通の接客してくれたら大丈夫だから、気負わずにやってね。最下位でも時給下げたりしないから安心して」
給料下げたりしないって……。なんだその地味にプレッシャーな一言は。
げっそりしながら俺は店長に押し付けられたプリントを見る。大会予定日は十二月十日土曜日。午前十時から。
「これ、俺達関東だからまだいいけど、北海道とか九州とかだったらどうすんだろ」
「交通費出るっぽいよ。一番下に書いてある」
「え、どこ?」
「ここ」
史人さんがすっと俺の顔に顔を寄せ、俺が持つプリントに長い指を添わせる。そうされてどきっとした。
仕事中にこんな心臓ばくばくさせてる場合じゃないのに。
「遠方だったら、ふたりで旅行できたのにね」
「あ、うん」
追加でこそっと囁かれてますますどぎまぎする。その俺から史人さんはすっと顔を離し、フロアへと向かう。いらっしゃいませ、と乱れのない声で挨拶をする背中を俺はちろっと睨む。
なんだよ、涼しい顔しちゃって。
「千冬」
「どわっ」
すっと伸びた背中をいらっと半分、うっとり半分に目で追っていた俺の傍らからいきなり声がして、変な声が出てしまった。声の主を確かめると、東が硬い表情で立っていた。
「おはよう」
「お、おはよう」
バイトに入って思ったけど、昼からのバイトでも出勤したときの挨拶は、おはようございます、だ。変なの、と始めのうちは思ったものだが、今はもう慣れた。
ただ……今日の「おはよう」は初期のころの俺の「おはようございます」と並ぶくらい、相当ぎこちなかったと思う。
「千冬、休憩のとき、ちょっと話せる?」
それは東も同じだったのか、見下ろしてくる顔が強張っている。
「あ、うん。俺もちゃんと話さないとって思ってた」
正直なことを言うなら、話せることなんてそれほどない。どう言い繕ったって、俺が東の告白を拒んだのは事実で、答えも覆らない。けど、あんな状態のままにしておくわけにはいかないとは思っていた。告白されてあの返し方はさすがにひどすぎる。
こいつは俺をめちゃくちゃ心配してくれてたんだから。
「この間は、ごめん。東」
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