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第48話 なんで俺、年下なんだろう。

 国道沿い、人通りはなくて、車道を無数のライトが通り過ぎていくその場所で、一気に怒鳴って肩を上下させる。  エンジン音が響いていたけど、俺の声は史人さんに届いていたと思う。史人さんの顔がはっきりと引きつったから。  それでも俺は叫ぶのを止めない。 「あんた、昔からそういうとこあるよな! 思わせぶりなことばっかり言って! そういうとこ、ほんとむかついてた! はっきり言ってくれないくせに、どんどん距離詰めてきて! こっちの感情ぐちゃぐちゃにしてきて! 苛つくし、腹立つし……だけどさあ!」  悪いのは史人さん。それは間違いない。実弥さんの気持ちも、俺の気持ちもかき回したから。  ただ、俺は思っている。  史人さんだけが悪いんじゃないって。 「一番むかつくのは、俺なんだよ! ガキの俺! なんも相談してもらえない俺。友達って言葉理由にして、ちゃんとしなかった俺が一番……一番、むかつく……!」  兄ちゃんに話を聞いてから、ずっと思っていた。  もしも同い年なら、兄ちゃんみたいに史人さんの異変にもすぐ気付けたんじゃないかって。従妹なら、実弥さんみたいに飛んでいけたんじゃないかって。  でも俺は年下で、友達の弟ってだけだった。その結果、俺はなんにもできずに後から人伝てに史人さんの苦境を聞くだけの存在になってしまった。  しかもねちっこい俺は、そんな自分の立場に納得ができなくて、史人さんに向かって憤懣をぶつけてさえいる。  笑わせてみなさいって言われたのに。こんなの絶対史人さんを困らせるのに。  けど……俺だってこのままじゃ嫌なんだ。  兄ちゃんみたいに、実弥さんみたいに、ちゃんと全部知りたいんだ。  ちゃんと知って、苦しいときはそばに走っていって。  ちゃんと、支えたいんだ。俺が支えたいんだよ、史人さん!  史人さんの顔が靄の中に沈んでいく。あれ、と目元を拭って気付いた。  涙が、出ていた。放っておくと際限なく出ちゃう涙を、俺は拳を作って必死で抑える。 「ねえ、史人さん。なんで、好きをやめちゃおうとすんの? そのまんまじゃだめなの? わかんないよ。俺、わかんない。ガキだからわかんない。教えてよ。どう言ったら史人さんは楽になんの? 教えてよ!」  哀願する声が震える。その俺の目の前で史人さんは黙っている。癇癪を起こした俺は、怒鳴り続ける。 「もう! 教えてってば! 俺、嫌なの! 史人さんがそんな……」 「教えたら、きっと困るよ。千冬は」  低い声に俺の声が呑まれる。轟音とともにトラックが通り過ぎていく。その風にさらっと史人さんの金茶の髪が頼りなく揺れた。 「俺、お前のこと、困らせたくないんだよ。傷つけたくも、ない」  くっと唇が噛まれる。くしゃり、と前髪を長い指が掴む。ヘッドライトによって顔の半分が陰に沈むその顔を俺は見上げる。 「ごめん。ほんと、最低でごめん。けど、この距離でいさせて。そうじゃないと、俺……」  苦しそうなその顔を見ていたら、自分がめちゃくちゃわがままを言っている気になってきた。俺はただ、自分が信頼されなかった、そのことに苛立っているだけなんじゃないかって思えたから。ただ、やっぱり……納得なんてできなかった。だって。 「勝手じゃん、それ」

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