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第61話 帰り道
二十八チーム中、俺達菊塚店コンビは三位だった。
まあまあ健闘したほうだと思う。
「……これさ、どうする?」
最寄り駅まで帰ってきたところで店長とは別れた。ふたりで歩きながら俺は店長から受け取った賞品を史人さんに見せる。
三位の賞品は、ハピロンくんのチャームがふたつ。スマホや鞄に着けられそうな、掌より少し小さいくらいのフェルトでできたぬいぐるみだ。ハピロンくんはクジラがモチーフということだが、ぬいぐるみにするとイルカっぽい。尾びれで立ち、胸びれでトレンチを持っている。頭にはコック帽。
「前々から思ってたけど、ハピロンくんって裸族だよね」
ふたつのうちのひとつを手にした史人さんが、ハピロンくんを目の前にぶら下げながら言った。
「しかも帽子は被ってるっていう、軽い変態」
「……クジラなんだからいいじゃん。裸でも」
「じゃあ潔く帽子もなしでよくね?」
「それじゃただのクジラじゃん」
そうだった。この人、頭はいいのにお馬鹿だった。やれやれ、と首を振る俺の前で史人さんはなおもハピロンくんを眺めていたが、ややあってポケットをごそごそし始めた。
「スマホに着けよう。千冬、俺のに着けて」
「俺が着けるの?」
「そ。で、千冬のスマホにも俺が着けたい。だめ?」
「……いい、よ」
この人の、だめ? はやっぱり破壊力がありすぎる。そろそろとスマホを取り出そうとしたところで、あ、と史人さんが顔を強張らせた。
「なに?」
「ごめん。俺、無神経なことしてた」
「なにが?」
「いや」
唇を軽く噛んでから、史人さんは自分のスマホに下がっていた革製のストラップを外す。片手でスマホをいじるとき、手首に通すと落下しなくて便利な、あのタイプだ。
「これ、実弥にもらったやつだった。外すの忘れてた」
「……そ、か。あ、いや、まあ、物に罪ないし」
「だめ。そういうのは。ごめん」
低い声で言い、史人さんはそのストラップをポケットにねじ込む。
こんなときどんな顔をしたらいんだろう。やっぱりちゃんと訊いておくべきだろうか。
「実弥さんは、彼女じゃなかった、んだよね?」
「……うん。違う。父親の手前、彼女のふりしてもらってた。でももうやめてもらった」
「そ、か……」
史人さんが苦しげに眉を顰める。この人のこの顔が俺はつらい。だから急かすことはできない。
黙って言葉を待つと、ややあって史人さんの唇が動いた。
「実弥にはひどいことした。謝って済むことじゃないけど……もう続けらんないと思ったから、ちゃんと話をしに行ってきた。そしたら、実弥に言われた」
「なんて……?」
「『勝手に幸せにでもなんでもなれば。あたしはもう知らないから』って」
あの人は本当に史人さんが好きだったんだな、と思う。じゃないとその台詞は出てこないと思うから。
いきなりDMを送ってきたり、校門前で待ち伏せされたり、正直、好きとまでは言えないけど、それだけ全力でこの人を好きだったんだってのはすごく、わかる。
「殴られた?」
「いや、殴ってもくんなかった。代わりに実弥の双子の姉の水香にビンタされた」
あの人は水香さんっていうのか。初めて名前を知ったけど、きりっとしたあの人らしい名前だと思った。実弥さんの代わりに史人さんを殴っちゃうとこも、すごく、ぽいなあと思う。
歩きながら物思いにふけっていると、俺ね、と史人さんが不意に声のトーンを上げた。
「兄貴に会いに行ってきたんだ。先週」
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