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#12: お茶会での惨劇: メイド服姿でのアニーとの再会、ルーシャを庇いステッキで打たれるジュリア

【キャラ設定③】https://fujossy.jp/fanarts/8206 メイフィールド家を招いての茶会当日、屋敷は朝から喧騒の渦中にあった。 そんな慌ただしい空気の中、ツェー(Tseh)が一向に姿を見せないことに気づいたジュリアンとジュリアは、使用人部屋の扉を押し開けた。 そこには高熱にうなされ、荒い息を繰り返すツェーの姿があった。額にはびっしょりと汗が浮かび、身体は小刻みに震えている。 「今日という大事な日に、自己管理すらできないとはな。まったく使えんな」 ジュリアンが冷酷に吐き捨てる。ツェーは青ざめた顔で必死に身体を起こそうとした。 「も、申し訳ありません……今すぐ、動きますから……っ」 「無理に決まってるわ! お兄様、これ絶対にあの貞操帯のせいよ!」 ジュリアが苛立った様子でツェーのスカートを乱暴にまくり上げた。すると、細い腰に深く食い込む金属の貞操帯が露わになる。ツェーは羞恥と痛みで唇を噛み、涙をこぼした。 ジュリアンは冷めた目で床へ視線を落とすと、ポケットから鍵を取り出し、無造作に足元へ投げ捨てた。 「拾え。さっさと外せ。……だが、その様子では今日の給仕は無理だな。お前はお払い箱だ」 「ひっ……! そ、それだけは……!」 ツェーの顔から血の気が完全に引いた。 そのやり取りを、部屋の外の廊下でルーシャはすべて聞いていた。 「……お待ちください。ツェーの代わりに、僕が今日のお茶会の給仕を務めます」 ルーシャは意を決して部屋に入った。 ジュリアンはしばらくルーシャを値踏みするように見つめていたが、やがて不気味な笑みを浮かべた。 「いいだろう。お前がその穴を埋めろ」 ジュリアは目を輝かせ、ルーシャの腕を掴んで自室へと引きずっていった。 「マディ、あなたを完璧なメイドに仕立ててあげるわ」 フリルのたっぷりついた黒いメイド服を着せられ、ルーシャは姿見の前に立たされた。 そして昨日よりもさらに念入りなメイクが施された。肌を陶器のように白く整え、長い睫毛を強調し、ジュリア自身の手で真紅のリップがねっとりと塗り込まれる。最後にたっぷりのグロスで唇を艶やかに仕上げられた。 鏡の中に映っていたのは、息を呑むほど妖艶で可憐な美少女メイドだった。 「本当に……可愛い。まるで、お人形みたい」 ジュリアが恍惚とした表情で呟いた。 しかし支度に夢中になりすぎたせいで、すでに開宴の時間を過ぎようとしていた。 「マディ、あなたはもう先に行ってテラスで給仕していなさい。私は後から行くから」 ◇ 午後。ペンドルトン館の豪奢なテラスでは、優雅なお茶会がすでに始まっていた。 席にはペンドルトン夫人と長男のジュリアン。そして客として招かれたのは、資産家メイフィールド家の子息、アニーだった。 アニーは極度の緊張状態にあった。孤児院出身という後ろ暗い過去を隠し、名家の子息として完璧に振る舞わなければならないというプレッシャー。さらには、先ほどから給仕をしている美しいメイドの視線が、なぜかひどく心臓をざわつかせていた。 その——給仕を務める美しいメイド、ルーシャの姿は、招待された名家の子息たちの視線を一身に集めていた。フリルのメイド服に包まれた細い身体と、完璧な美少女の顔立ちは、明らかに場違いなほど目を引いていた。招待客の一人が、ジュリアンに声をかける。 「あの子は素晴らしい。いくら出せば譲ってくれる?」 ジュリアンが言葉に詰まり、訝しげに黙り込むと、ペンドルトン夫人が扇で口元を隠し、客の耳元で法外な金額を囁いた。 客が絶句して言葉を失うのを見て、夫人はわざとらしくため息をつく。 「あら、残念。あちらのメイドでしたらもう少しお安くできますわよ……」 自分に値札が貼られ、誰かの愛玩物として蹂躙される未来を悟ったルーシャは、恐怖とドレスの下で食い込む貞操帯の痛みに耐えながら、ただ無言で給仕を続けた。 その時—— アニーの袖が飾台に引っかかり、ペンドルトン夫人お気に入りの高価なアンティークの花瓶が床に落下した。 ——ガシャァァン!! 大音響とともに花瓶が粉々に砕け散る。 ペンドルトン夫人が顔を真っ赤にして立ち上がり、ヒステリックに叫んだ。 「誰が私の宝物を……!」 アニーの顔から血の気が引いた。破滅の恐怖に全身を震わせる。 その瞬間、ルーシャは考えるより先に身体が動いていた。ルーシャは破片の上に両膝をつき、深く頭を下げて叫んだ。 「申し訳ありません! すべて僕の不注意です!」 その声と「僕」という一人称を聞いた瞬間、アニーの瞳が見開かれた。 (……僕……?) 記憶の中の声と重なる。完璧な化粧の下にある輪郭、必死に自分をかばうその姿—— アニーの呼吸が乱れた。 (ルーシャ……? まさか……ルーシャなのか……!?) そのわずかな動揺を、ジュリアンの冷めた琥珀色の瞳は見逃さなかった。 (……怪しいな、この二人……。なにかあるのか?) ジュリアンは静かに近づき、怒り狂うペンドルトン夫人を片手で制すると、アニーの前に立った。そして慇懃に微笑みながら、残酷な提案をした。 「メイフィールド様。この無礼なメイドに、どうか貴方自身の手で罰をお与えください」 ジュリアンは黒檀のステッキをアニーの目の前に差し出した。 「さあ、遠慮はいりません。強く打ちなさい。……それとも、貴方はこのメイドをかばう理由でもお持ちですか?」 逃げ場のない問い詰めだった。もしステッキを振るうことを拒めば、自分とこのメイドが知り合いであること——孤児院での過去を晒すことになる…… アニーはガタガタと震える手でステッキを受け取った。 (ごめん……ルーシャ……!) 心の中で血の涙を流しながら、アニーは固く目を閉じ、ステッキを高く振り上げた。 ルーシャは顔を上げ、振り下ろされるステッキを静かに見つめた。その瞳には諦めも恨みもなかった。ただ、アニーを守れたという、静かな光だけが宿っていた。 風を切る音がした、その瞬間—— 「私の人形に何をするのよ!!」 甲高い叫び声とともに、テラスの扉が乱暴に開け放たれた。ジュリアが血走った目で飛び込んできて、床に平伏するルーシャに覆い被さるように抱きついた。 鈍い音が響いた。 アニーが全力で振り下ろしたステッキは、ルーシャではなく、ルーシャをかばったジュリアの細い背中に、容赦なく叩きつけられていた。 「……っ、あ……!」 ジュリアは激痛に顔を歪めながらも、ルーシャを絶対に離すまいと強く抱きしめた。震える腕の中でルーシャを守るその姿は、まるで狂ったように執着に満ちていた。 ジュリアンは目を見開き、アニーは恐怖でその場にへたり込んだ。 テラスは一瞬にして騒然となった。 つづく — 昏睡の底で幼き日の忌まわしい記憶をたゆたうジュリア。 オメガとして生まれた絶望が、彼に「完璧な少女」の仮面を被らせていた。 「認めない。絶対に認めない。僕がオメガだなんて」 次回 #13: 昏倒したジュリアの過去: オメガとしての劣等感と、偽りの女を演じる歪んだ理由 「どうして、あなたは自分の運命を受け入れているの、あなたには、仮面はいらないの……?」 お楽しみに!

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