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#17: アンドレとの口移しチョコの屈辱: 激昂したジュリアンの暴力と、絶対的な奴隷・所有宣言

ペンドルトンの屋敷の傍らを流れるハドソン川を、北へ、緑深きハドソン・バレーのさらに奥にその豪奢な屋敷はあった。 資産家メイフィールド邸——。 あのお茶会での凄惨な出来事を誰にも打ち明けることができず、アニーは薄暗い自室で一人、ためらいと罪悪感に押しつぶされそうになりながら便箋に向かっていた。 『……親愛なる足長おじさん。僕は取り返しのつかない過ちを犯してしまいました。僕の不注意のせいで、ペンドルトン家の大切な方を傷つけ、怪我をさせてしまったのです。己の愚かさが恐ろしくてたまりません……』 唯一の救いである「足長おじさん」にようやくこうして胸の苦しみを吐き出したものの、本当にこの手紙を出していいものか、ペンを握る手はひどく迷っていた。 ——と、その時だった。 「アニー、どうしたんだい。ずっと部屋に引きこもって」 長期にわたるロンドン出張から帰還した養父・メイフィールドは、息子のただならぬ様子に眉をひそめていた。お茶会の日からこっち、アニーはまともに食事も喉を通らず、何かに怯えるように息を潜めて憔悴しきっていたのだ。 アニーは重い扉を開けた。 「……なんでもありません、お父様」 「なんでもないはずがないだろう。……何か、ペンドルトン家で嫌なことでもあったのか?」 優しく、けれど逃げ場のない父親の問いかけに、限界まで張り詰めていたアニーの心の糸がプツリと音を立てて切れた。 「お父様……お許し下さい……っ!」 アニーは膝から崩れ落ち、たまらず床にへたり込んだ。そして血の気を失った唇を震わせ、途切れ途切れの呼吸を繰り返しながら、あの日、自分のミスでジュリアに大怪我を負わせてしまったのだと、とうとう打ち明けたのだった。 ◇ ——同じ頃。ペンドルトン邸の広間には、昨夜の火事の煤けた臭いがまだ濃く残っていた。 ツェー(Tseh)は広間の床に両膝をつかされ、ガタガタと震えている。彼女の前に立つペンドルトン夫人は氷のような目でその姿を見下ろし、傍らでは顔色の悪いジュリアンが椅子に深く腰を沈めていた。 「ツェー。昨夜の馬小屋の火事について、すべて話してもらいましょうか」 夫人の冷たい声に、ツェーは震えながらか細く否定した。 「……私は、何も……」 「嘘をつくな」 ジュリアンが低く、凍てつく声で切り捨てた。 「お前がランプを持ってあの場所にいたのを、私は確かに見ている。お前が動転して逃げようとしていたのもな」 追い詰められたツェーの顔から血の気が引いた。 夫人は扇をゆっくりと閉じ、淡々と告げた。 「馬小屋は全壊したわ。馬たちも……すべて焼け死んだ」 ジュリアンの瞳が大きく見開かれた。 「全滅した……?」 「ええ。お前は煙に巻かれて気を失っていたから知らなかったでしょうけれど、火はあっという間に燃え広がって、馬小屋は跡形もなく焼け落ちたわ。逃げ遅れた馬たちも全員焼け死んだのよ」 夫人は冷ややかに続けた。 「この大損害の原因は、ツェー。お前がランプを倒したのでしょう?」 ツェーはとうとう耐えきれなくなり、嗚咽を漏らしながら白状した。 「……私が、ランプを……でも、わざとじゃないんです……!」 夫人は満足げに笑い、ツェーを冷たく見下ろした。 「ならば罰を受けなさい」 ツェーは慌てて夫人の足元に這い寄り、必死に縋りついた。 「何でもします……! どんなことでもしますから、どうかお許しを……!」 「そう……何でもするの?」 夫人は不敵に微笑み、テーブルの上に置かれたチョコレートを扇で指し示した。 「ならば、手始めに……手を使わずに、あのチョコレートをアンドレに食べさせなさい」 ツェーの顔が強張った。 「……手を使わないで、ですか?」 夫人は意地の悪い笑みを浮かべて答えた。 「そう。手を使わないで、よ」 広間が凍りついた。 アンドレがにたりと下卑た笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいてくる。その口元には不衛生な濃い髭が生え、黄ばんだ歯とよだれで汚れ、口臭が漂っていた。 ツェーの顔が青ざめ、身体が小刻みに震え始めた。 「……無理です……そんなの……絶対に無理……!」 その時、ルーシャが駆け寄り、夫人の前で平伏した。 「僕が代わりますから……ツェーは許してください!」 夫人はルーシャを冷ややかな目で値踏みする。 「ほう? お前がか。よかろう。やってみせろ」 夫人の言葉に促され、ルーシャは震える足でアンドレの前に立った。目を固く瞑り、覚悟を決めた表情で唇を少し開いたその刹那—— アンドレはルーシャの顎を乱暴に掴み、無理やり舌をねじ込んできた。 「んっ……っ!」 ルーシャの細い身体が激しく震える。アンドレは遠慮なくルーシャの口内をねっとりと蹂躙する。甘いチョコレートと唾液が混じり合い、淫らな水音が広間に響く。 その惨めで淫らな姿を、ジュリアンは血走った目でじっと見つめていた。 「……やめろ! 汚らわしい、やめるんだ、アンドレ」 掠れた、しかし底知れぬ怒りに満ちた声が響いた。 次の瞬間、ジュリアンは椅子を蹴り飛ばし、獣のような勢いでアンドレに躍りかかった。 理性の限界を超えたジュリアンの拳が、アンドレの顔面に叩き込まれる。アンドレは鼻骨を砕かれ、断末魔のような叫び声を上げて床に転がった。ジュリアンはなおも馬乗りになり、拳を振り上げる。 「……何をしているの、ジュリアン」 夫人の冷ややかな声が、広間の空気を凍らせた。ジュリアンは肩を荒く上下させ、怒りに震える目で母を振り返る。 「……お母様、なぜこんな真似をさせるのですか! こんな汚らわしい獣をアボットに触れさせるなんて……正気の沙汰ではない!」 夫人は扇を優雅に揺らし、まるで駄々をこねる子供をあしらうようにため息をついた。 「ジュリアン。あなた、少しお熱があるようね。あなたは自分の立場を忘れたの?」 「……っ」 「オメガは支配されるためにいる。そしてアンドレのような下賤な者は、彼らを調教するための道具。私が教えているのは、この屋敷の『秩序』よ」 夫人はジュリアンのそばに歩み寄り、冷酷な瞳で彼を射抜いた。 「どうしてそんなに動揺しているの? ……あなたの目は、いつだってルーシャに向いているわね。その執着、そんなに気に入ったなら好きにしなさい」 夫人はそれだけ言い捨てると、優雅な足取りで広間を去った。残されたのは、血溜まりの中でうめくアンドレと、震えるルーシャ、そして母親の冷笑に激しく腹を立て、苛立ちを隠せないジュリアン—— ジュリアンは荒い息を吐きながら立ち上がると、這いつくばるルーシャの顎を乱暴に掴み上げた。 「……アボット、いや、マディ!」 ジュリアンは力任せにルーシャを引きずり起こした。 「今日からお前は、私の奴隷だ。ツェーが犯した罪を免れるにはそれしかない。わかったな!」 この狂った秩序の中で、ジュリアンが望んだ唯一の純潔——それは、皮肉にも彼自身を締め上げていく運命の幕開けだった…… つづく — ペンドルトン邸での夕食会。アニーの背後に立つジュリアンがねっとりと赤ワインを注ぐ。 逃げ場のない甘い罠がアニーを絡め取っていく……! 「あら、アニー様。随分とお顔が赤いわね。大丈夫? すっかり酔ってしまったみたい」 次回 #18: アニーを絡め取るジュリアンの罠: 毒牙にかかる夕食会と、メイド服のルーシャによる給仕 「今夜は私の部屋で、ゆっくりお休みください」 お楽しみに!

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