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#18: アニーを絡め取るジュリアンの罠: 毒牙にかかる夕食会と、メイド服のルーシャによる給仕
ペンドルトン邸の応接室は、まるで冷たい水を張ったように静まり返っていた。
「……お怪我の具合は、その後いかがでしょうか」
革張りのソファに浅く腰掛けた資産家メイフィールドが、心なしか腰を浮かせながらペンドルトン夫人に尋ねた。そのすぐ隣で、アニーは膝の上で両手を強く握りしめ、ただうつむいたままだった。
あのお茶会の悪夢が、まだアニーの頭から離れない。ジュリアンに握らされた黒檀のステッキ——、それがジュリアの顔を打ち据えてしまった……。その恐怖と罪悪感で、アニーの鼓動は今も乱れたままだった。
「ええ、お医者様が毎日熱心に診てくださっていますわ」
夫人は優雅に扇を揺らしながら、冷ややかな微笑みを浮かべた。ジュリアの怪我がアニーの手によるものであることには、あえて触れようとはしない。しかしその沈黙の重圧が、かえってアニーを締め付けた。
「本日はご挨拶とお見舞いのためだけに伺いましたので、私どもはこれで……」
メイフィールドが立ち上がろうとした瞬間、夫人は扇をパチリと閉じた。
「まあ、せっかくお越しくださったのですもの。これから夕食の準備をさせますわ。どうぞ召し上がっていらして」
「ですが、私はこの後、どうしても外せない会合がありまして……」
メイフィールドが困ったように眉を寄せたその時、応接室の扉が静かに開いた。
長男のジュリアンが、静かに部屋に入ってくる。
「おや、メイフィールド様。それほどお急ぎでしたら、どうぞお先に。……ですが、アニー様」
ジュリアンはゆっくりとアニーに向き直った。琥珀色の瞳が、獲物を狙うようにアニーを捉える。
「貴方はお残りになって、ご一緒に夕食をいかがですか? 夕刻になりましたら、責任を持って馬車でお送りいたします」
その声音は穏やかだった。しかし瞳の奥に宿る熱は、決して穏やかではなかった。
「ああ、そうだな、アニー。そうさせて頂きなさい」
メイフィールドはほっとしたように顔を輝かせると、アニーの様子を顧みることもなく、慌ただしく部屋を後にしてしまった。
取り残されたアニーの背筋を、冷たい汗が一筋、ゆっくりと伝った。
◇
「後はジュリアン、お前に任せるわ。くれぐれもアニー様には……粗相のないように。……わたしは少し気分が優れません。先に休ませて頂くわ」
夫人はそう言い残し、ディナーを前にして自室へと引き上げてしまった。
結果、薄暗い食堂の長い食卓についたのは、ジュリアン、ジュリア、そしてアニーの三人だけとなった。
「よく来てくださったわね、アニー様」
ジュリアが皮肉たっぷりに唇を歪めた。彼女の額から頬にかけて巻かれた白い包帯が、痛々しくも艶めかしく照明に浮かび上がる。
「見て? この顔。お医者様には『一生残る傷になるかもしれない』と言われたの……どう責任を取ってくださるのかしら?」
「あ……っ、う……」
アニーは息を詰まらせ、ジュリアの顔から必死に目を逸らした。喉がからからに渇き、言葉が出てこない。
「ジュリア、食事の席だ。客人を責めすぎるな」
ジュリアンが低く、艶のある声で制した。その瞬間、アニーのすぐ横に影が落ちた。
「……っ!」
危うく声を上げそうになった。
スープの皿を静かに置いたのは、黒いメイド服に身を包んだルーシャだった。フリルをたっぷりあしらわれたその衣装は、彼女の細い腰と胸の膨らみを強調し、陶器のように白い肌に真紅の唇が妖しく映えている。かつての親友は、今や完璧な人形としてジュリアンの手によって彩られていた。
ルーシャは一度もアニーと目を合わせようとせず、無表情のまま下がっていく。しかしその指先が、小さく震えているのをアニーは見逃さなかった。
「さあ、アニー様。我が家自慢の赤ワインです。どうぞ、存分に味わってください」
ジュリアンの声が耳元で響いた。彼は自然な動作でアニーの椅子の背後に立ち、長い指でグラスを軽く傾けながら、血のような赤い液体を注いでいく。
その時、ジュリアンの胸がアニーの肩にわずかに触れた。熱を帯びた体温と、かすかなコロンの香りが、アニーの背筋を甘く痺れさせる。
「…………」
アニーは震える指でグラスを掴み、唇に運んだ。味など全くわからなかった。ただ、背後に立つジュリアンの視線が、自分の首筋から耳の後ろ、鎖骨のあたりまでねっとりと這い回っているのがはっきりと感じられた。
まるで、獲物をじっくりと味わうような——
「顔色が優れませんね、アニー様」
ジュリアンが低い声で囁いた。息が耳にかかるほどの距離。
「今夜はゆっくりしていってくださいね」
琥珀色の瞳が、暗い照明の中で妖しく輝いていた。その視線は、逃げ場のない甘い檻のようにアニーを捕らえて離さない。
「ところで、アニー様」
ジュリアンが優雅にグラスを傾けながら、ふっと目を細めた。唇の端に、獲物を弄ぶような笑みが浮かんでいる。
「我が家のこの給仕に、何か見覚えでもおありですか? お茶会の時から気になっていたのですが……まるで昔馴染みのようですが……」
「ひっ……!?」
アニーの心臓が激しく跳ねた。ジュリアンは全てを知っていて、その上で、愉しげに遊んでいるのだ。
「お兄様、どういうこと? ……私の知らないところで、何かあったの?」
会話の流れの違和感を、ジュリアは見逃さない。
「いや、私の勘違いさ。ただ、アニー様が随分と熱い目で我が家のメイドをご覧になっていたのでね」
ジュリアンはあっさりとはぐらかし、優雅に笑った。そして、アニーのグラスに再びワインを注ぎながら、耳元で低く囁く。
「さあ、遠慮なく。私の敬意を、存分に受け取ってください」
その声音は甘く、しかし絶対的な支配感を孕んでいた。アニーは拒めず、促されるままにグラスを傾けた。
グラスが空になれば、再び血のような赤ワインが注がれる。気づけば、アニーの頭は激しく揺れ、視界が歪み始めていた。
頬が熱く火照り、呼吸が浅く荒くなっていく。
「う……ふっ、あ……」
「あら、アニー様。随分とお顔が赤いわね。大丈夫? すっかり酔ってしまったみたい」
ジュリアが冷ややかに笑いながら覗き込んでくる。
「は、はい……すみません、少し、お酒が……そろそろ、おいとまを……」
アニーはふらつく身体を必死に立たせようとした。しかしその肩を、ジュリアンの大きな手が容赦なく押し戻した。
「とんでもない。そんな足元もおぼつかない状態でお帰しするわけにはいきませんよ」
ジュリアンの声は優しいのに、耳の奥に絡みつくように甘く響いた。
「今夜はここに泊まっていきなさい。……私の部屋で、ゆっくりお休みください」
「え……!? い、いえ、そんな……帰らなければ……!」
血の気が引く思いで拒もうとした瞬間、ジュリアンは極上の、そして最も残酷な微笑みを浮かべて告げた。
「心配いりません。メイフィールド家にはすでに使いを出してありますよ。『アニー様は大変お疲れのご様子なので、今夜は我が家でお預かりします』と」
「あ……」
アニーの唇から、絶望と震えを帯びた吐息が漏れた。
最初から、帰すつもりなどなかった。
ジュリアンの琥珀色の瞳が、妖しく輝いている。その視線はまるで、逃げられない獲物をじっくりと味わうように、アニーの全身を舐め回していた。
つづく
—
ジュリアは、「責任を取って」と強引にアニーを押し倒す。
ドレスの裾を割り、アニーの手を自らの股間へと導いたそこに隠されていたのは、熱く脈打つ『雄の証』だった!
「男だったら……嫌?」
次回
#19: ジュリアの股間の秘密: ベッドでの強引な誘惑と、ジュリアンによるアニーへの性的尋問
「でも、もう手遅れよ。わたしの秘密を知ってしまったんだから……」
お楽しみに!
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