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#37: 逃れられない支配: アニーへの冷酷な脅迫と、気高きルーシャに絡みつく執着

キーン、コーン、カーン、コーン――。 放課後を告げる無機質なチャイムの音が、重苦しい聖ファーガスン学院の廊下に響き渡る。解放感に沸き立つ生徒たちの足音が遠ざかり、校舎が静けさを取り戻し始めた頃、アニーは逃れられない運命のようにその扉の前へ立たされていた。 生徒会長であるジミーから熱烈な恋心を打ち明けられ、あろうことか「恋の仲介役」を快諾したジュリアン。彼がアニーを呼び出したのは、特別寮の最上階にある、あまりにも豪奢な一室だった。 「……というわけだ。お前は今日から、我が従兄弟殿の熱烈な求愛を受け入れるんだよ、アニー」 聖ファーガスン学院の特別寮。最上階に位置する豪奢な一室で、ジュリアンは革張りのソファにゆったりと腰を沈め、冷酷な琥珀色の瞳でアニーを見下ろしていた。 「な……っ、何を言ってるんだよ、ジュリアン……! そんなこと、できるわけがない! 僕は男だし、ジミー様も男で……それに、あの方は由緒正しいマクブライド家の……」 「だからこそ面白いんじゃないか」 ジュリアンは低く愉しげに笑うと、ステッキの先端でアニーの細い顎を冷たく持ち上げた。 「ジミーはお前みたいな大人しくて地味な一般生に、本気で恋焦がれている。この俺に、男同士の恋の悩みを打ち明けてくるほどにな。……お前はただ、あいつの隣で愛想よく微笑んでいればいいんだよ」 「そんな……! ジミー様を騙すような真似はできません! 男同士なんて……!」 アニーが涙を浮かべて激しく首を振ると、ジュリアンは小さく鼻で笑った。 「……男同士は無理だって!? 白々しい!」 ジュリアンの瞳が冷たく細められる。 「アボット(ルーシャ)とは、毎夜のようにベッドを共にしていたくせに。男同士で感じて、喘いで、たっぷり愛し合っていたんだろ? 今さら純情ぶるんじゃない!」 アニーが涙を浮かべて激しく首を振ると、ジュリアンの表情から笑みが完全に消えた。 「……断るなら、それでも構わないぞ」 声は氷のように冷たく、絶対的な響きを帯びていた。 「ただしその場合、お前の『秘密』を学園中にばら撒くことになるがな。……気高く美しいメイフィールド家の御曹司が、実は孤児院から買われた下賤なオメガであること。あそこでお前が男のルームメイトと毎夜、どんな淫らな真似をして鳴いていたか……その詳細をすべて、学園の掲示板にでも貼り出してやろうか?」 「あっ……!」 アニーの顔から一瞬で血の気が引いた。 もしそんなことが明るみに出れば、メイフィールド家に泥を塗り、自分の人生は完全に終わる。完全に退路を断たれたアニーは、膝から崩れ落ち、その場にへたり込んでしまった。 「賢い選択を期待しているよ、アニー」 ジュリアンの低く甘い囁きが、アニーの耳朶をねっとりと溶かすように絡みついた。 床に這いつくばり、声を殺して震えるアニーを冷ややかに見下ろした後、ジュリアンは満足げに踵を返した。 (さて……コイツの(しつけ)は済んだ。次は——) 彼の脳裏に浮かぶのは、決して自分に屈しない、あの気高い瞳だ。 (愛しいマディ……今度はお前の番だ) ◇ その日の夕刻。 放課後の人気のない古い回廊で、図書室から出てきたルーシャの足がピタリと止まった。 ステンドグラスから差し込む赤い夕日を背に、長く艶やかな影を落として立っていたのはジュリアンだった。 「やあ。奇遇だな」 ジュリアンはステッキを優雅に回しながら、ゆったりと近づいてくる。その歩み一つ一つが、獲物を追い詰める獣のようだった。 「うまく本家のジャーヴィス様に取り入り、養子の座を手に入れたようだな。これで血は繋がらずとも……我々は立派な『親戚』というわけだ」 口ではそう言いながら、ジュリアンは低く甘く笑った。 「だが、そんなことはどうでもいい。お前は今まで通り、俺の前で跪いていればいいんだよ……マディ」 その言葉を聞いた瞬間、ルーシャの表情がわずかに強張った。 「僕はもう、あなたの館で虐げられていた使用人の『マディ』じゃない。あなたに、服従する義理なんてどこにもありません」 きっぱりと拒絶された瞬間、ジュリアンの琥珀色の瞳の奥で、暗い炎がチリチリと音を立てて燃え上がった。 自分を恐れながらも、決して目を逸らさないその気高さ。 (ああ……やっぱり、お前は最高だ) ジュリアンはステッキを握る手に力を込め、ゆっくりと口角を歪めた。 この生意気で美しい瞳を、涙と快楽でぐちゃぐちゃに溶かしてやりたい——そんな凶暴な欲望が、彼の中で黒く渦巻き始める。 「……そうか。なら、せいぜい今の平穏を、味わっておくんだな」 ジュリアンは底知れぬ冷たい笑みを浮かべ、ルーシャの横を通り過ぎた。 その刹那、アルファの重く甘いフェロモンがルーシャの首筋にねっとりと絡みつき、喉の奥まで甘く犯すように染み込んでいった。 つづく — ジュリアンの脅迫により、偽りの恋人としてロンドンの街をデートするジミーとアニー。 「そういうのは……だめです。僕たちは男同士なんですよ? 人前で手を繋ぐなんて……おかしいです……っ」 次回 #38: 偽りのデートと残酷な拒絶: 振り払われた手と、傷ついた純粋な恋心の歪み 「……男同士の、何がいけないんだよ!?」 お楽しみに!

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