50 / 95
#50: 外されたチョーカーと放課後の密室: 狂い出すアニーの本能と、ジミーが目撃した残酷な情事
冬の寒さが少しずつ和らぎ始めた聖ファーガスン学院に、ジュリアの存在は急速に広がっていった。
かつてペンドルトン館で高慢で残酷な「お姫様」として君臨していた面影は、今や完全に消えていた。短く切った髪を軽やかに揺らし、快活で人懐っこい男子生徒として、ジュリアは学園に巧みに溶け込んでいた。
「生徒会が人手不足だって聞いたぜ。俺も手伝うよ、ジミー!」
持ち前の積極性と明るさで、ジュリアはあっという間に生徒会長であるジミーを味方につけてしまった。
まんまと生徒会メンバーに潜り込んだ彼は、放課後の生徒会室で、ルーシャの肩を馴れ馴れしくポンと叩いた。
「やぁルーシャ、過去には色々あったけど……もうお互い大人になったんだし、これからは仲良くやろうぜ」
屈託のない笑顔でウインクしてみせるジュリア。
しかしルーシャの身体はビクリと強張り、笑顔を返すことができなかった。あの地下ダンジョンで受けた狂気と屈辱の記憶が、未だに鮮明に脳裏に焼き付いている。爽やかに微笑むジュリアの姿は、ルーシャにとってかえって得体の知れない恐怖と不気味さを呼び起こした。
一方、アニーに対してもジュリアは変わらず、何食わぬ顔で肩を寄せ、「よろしく頼むぜ、アニー」と親しげに笑いかけていた。
◇
その日の夜。
静まり返った男子寮のアニーの私室で、アニーはベッドの中で何度も寝返りを打ち、なかなか寝付けずにいた。
(ジュリア様……)
目を閉じると、昼間に見た爽やかな笑顔ではなく、ペンドルトン館での濃密な夜の記憶が、熱を伴って鮮明に蘇ってきた。(19話参照)
甘くむせ返る薔薇の香水。豪奢なレースとフリルに囲まれたベッド。抗う間もなく両手首を押さえつけられ、薄い下着越しに押し付けられた、熱く硬く張り詰めた雄の証。
耳元で妖しく囁かれた、あの言葉——。
『男だったら……嫌?』
「ぁ……っ、はぁ……」
アニーは弾かれたように目を見開き、荒い息を繰り返した。シーツを強く握りしめる指が小刻みに震えている。
本当なら恐怖するべき記憶のはずだった。しかしあの夜の強烈な支配と、耳元で囁かれた甘い声が、ジュリアンに植え付けられた歪んだ被虐の性癖と絡み合い、アニーのオメガの本能を激しくかき乱していた。
「だめ……こんなの、だめなのに……/////」
震える指がゆっくりと自分の首元に伸びた。
カチリ……。
黒革のチョーカーが外され、冷たい床に落ちる小さな金属音が響いた。
その瞬間、抑え込んでいた熱が一気に爆発した。下腹の奥がじゅわりと甘く溶け、熱い蜜が溢れ出す。
「あぁ……ジュリア様……っ」
アニーは潤んだ瞳を虚ろにさせ、自らの衣服を乱暴に捲り上げた。震える指が下着越しに熱く脈打つ自身を掴み、ゆっくりと扱き始める。
「あっ……んっ……ジュリア様……/////」
シーツに顔を埋めながら、アニーはあの夜の記憶を反芻した。高慢だった「お姫様」の顔と、今日見た快活な青年の笑顔がドロドロに溶け合い、頭の中を支配していく。
暗い私室に、アニーの甘く掠れた喘ぎと、シーツの擦れる淫らな音だけが響き続けた。
もはや後戻りできないところまで、オメガの発情はアニーを追い詰めていた。
◇
キーン、コーン、カーン、コーン――。
一日の終わりを告げる重々しいチャイムの音が、冷たい冬の空気に溶けていく。生徒たちのざわめきが次第に遠ざかると、石造りの古い校舎はゆっくりと深い静寂の底へと沈んでいく——放課後の生徒会室。
アニーは一人、山積みの書類に向き合っていた。
重い扉が開き、ジュリアが気だるげに現れた。中を見回し、誰もいないことに気づくと、肩をすくめてアニーを見る。
「あれ、誰もいないのか? ずいぶんと静かだな」
「……聞いてませんでしたか? 今日は姉妹校との交流会ですよ。主要メンバーはみんな、朝からそっちへ駆り出されていて」
アニーの淡々とした返事に、ジュリアは「へぇ、そうなんだ」と短く応じる。
カチ、カチ、カチ……。
二人の間には、壁掛け時計が秒針を刻む音だけがやけに大きく響いていた。
静寂が、二人の心をざわつかせていく。
アニーは書類を整理する手を止め、たまらずジュリアに歩み寄った。
「……ジュリア様」
「おいおい、『様』はやめろよ。今はただの同級生だぜ?」
ジュリアは笑って流そうとしたが、アニーは引かなかった。
「……本当に、あの時のジュリア様なんですか」
アニーの声は熱を帯び、震えていた。
「忘れたなんて……言わないでください」
切実で縋るような瞳に見つめられ、ジュリアの指がピタリと止まった。
「……覚えてるよ。それがどうしたんだよ」
冷たく突き放そうとしたジュリアだったが、脳裏にはあの夜の記憶が鮮烈に蘇っていた。女のドレスを着たまま、アニーをベッドに押し倒した脆くも狂おしい夜の感触が、身体の奥を熱く疼かせる。
その時、ジュリアの視線がアニーの首元に落ちた。黒革のチョーカーが目に入る。
「お前も……そんなものを着けてるのか」
ジュリア自身も、首元に同じチョーカーを巻いていた。同じオメガとしての枷。
その言葉を聞いた瞬間、アニーの瞳に歪んだ炎が灯った。
カチリ……。
静かな生徒会室に、小さな金属音が響く。
アニーは自らの手でチョーカーを外し、挑発するように床へと落とした。
抑えていた甘く濃厚なオメガのフェロモンが、一気に室内に広がっていく。
「なっ……お前、何を……!」
ジュリアが目を見開く中、アニーは潤んだ瞳で彼を見上げ、震える声で囁いた。
「僕を……支配してください。あの夜みたいに」
その言葉は、ジュリアの奥底に眠っていた支配欲と、抑えきれない劣等感を同時に激しく揺さぶった。
ジュリアの琥珀色の瞳が、危険な光を帯びる。
「……お前が、望んだんだからな」
◇
理性の最後の糸が、音を立てて切れた。
ジュリアは獣のような勢いでアニーに飛びかかり、長机の上に乱暴に押し倒した。
「あ”……////」
アニーの甘く掠れた喘ぎが部屋に響く。ジュリアはすぐにその細い身体を組み敷き、首筋に顔を埋めて貪るように吸い付いた。舌を這わせ、歯を立て、濃厚なオメガの香りを深く吸い込みながら、腰を押しつける。
「あ” ……っ、ジュリア様……あぁ……////」
アニーの声が甘く溶けていく。制服のシャツがはだけ、露わになった白い胸にジュリアの熱い掌が這い上がり、容赦なく揉みしだく。
硬く尖った乳首を指で摘まれ、ねっとりとこね回されるたび、アニーの腰がびくびくと淫らに跳ねた。
「らメェ……////」
かつての主従関係が完全に逆転した今、アニーは自ら脚を開き、ジュリアの身体に絡みつくように腰をくねらせる。
二人の熱い吐息が絡み合い、机の上で制服が乱れ、甘く湿った音が室内に満ちていく。
ジュリアの手がアニーのベルトに伸び、下着の中に滑り込んだ瞬間——
——ガチャリ。
「わりぃ、書類の束を忘れちゃってさ!」
扉が勢いよく開き、ジミーが陽気な声で入ってきた。
しかしその声は、途中で凍りついた。
長机の上に押し倒され、制服を乱され、首筋を激しく吸われながら蕩けきったアニーの姿。しかもアニーは拒絶するどころか、潤んだ瞳でジュリアを見つめ、熱っぽく息を乱している。
「……え?」
ジミーが愛したアニーが、自分には決して許さなかった甘い表情を、見知らぬ転校生の腕の中で浮かべている。その事実に、ジミーの胸が真っ白に焼けついた。
手から書類の束がバサリと床に落ちる。
「アニー……」
言葉にならない絶望の呟きを漏らし、ジミーは顔を激しく歪めると、踵を返して逃げるように廊下へ走り去った。
開け放たれた扉の向こうに消えていく足音を聞きながら、ジュリアはアニーを机の上に組み敷いたまま、冷酷で愉悦に満ちた笑みを深く刻んだ。
唇をアニーの耳元に寄せ、低く淫らに囁く。
「……見られたぞ。」
アニーは涙を浮かべながらも、恍惚とした表情で小さく頷いた。
つづく
—
暴走したジュリアを処置したのは本家の密命を受けた『お目付け役』のツェーだった。
「……私の方で『たっぷり』処置 しておきましたから、ご心配なく」
次回
#51: 暴走の代償と二重のチョーカー: 骨抜きにされたジュリアと、狂気に堕ちる生徒会長
「お前、今度またチョーカーを外して好き勝手な真似をしたら、本家の更生プログラムに逆戻りだぞ」
お楽しみに!
ともだちにシェアしよう!

